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竜巻の正体とリスクを知る──日本の実際の被害と避難の心得
ビジョナリー編集部 2025/09/10
みなさんは「竜巻」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。日本ではあまり身近な災害ではないとお考えの方も多いかもしれません。しかし実は、竜巻は日本全国どこでも発生する可能性があり、時には家屋や車が一瞬で壊されるほどの甚大な被害をもたらしてきました。
本記事では、竜巻の発生メカニズムや発生しやすい時期・場所、具体的な被害事例、そして命を守るためのポイントまで、最新の知見と実例を交えて徹底解説いたします。これを読めば、いざという時に自分や家族を守る判断力が身につくはずです。
竜巻とは?──「突風」の正体を知る
竜巻は、発達した積乱雲に伴って発生する“激しい渦巻き状の突風”です。多くの場合、雲の底から地面に向かって伸びる漏斗(ろうと)状の雲が目印となります。
その規模は、直径数十メートルから数キロメートルと幅広く、移動距離も数キロから時には十数キロメートルに及ぶことも。竜巻の中心部では、風速が毎秒70メートル、時には100メートル近くに達することもあり、これは台風を遥かに超える猛烈な風です。
ポイント:竜巻の主な特徴
- 局所的かつ短時間で甚大な被害をもたらす
- 風で物体を巻き上げ、飛来物による二次被害も多発
- その移動速度は時速100キロメートルに達することもある
竜巻が発生するような積乱雲では、「ダウンバースト」や「ガストフロント」といった突風も起こります。これらも発達した積乱雲によって発生し、竜巻同様に被害をもたらすため、合わせて警戒が必要です。
竜巻はどのように発生するのか?
竜巻発生の舞台は、必ずと言っていいほど「発達した積乱雲」の下です。では、なぜこの雲の下で激しい渦巻きが生じるのでしょうか。そのカギとなるのが、「大気の不安定さ」と「強い上昇気流」、そして「回転する空気の流れ」です。
- 大気の不安定さ:上空に冷たい空気、地上に暖かい空気があると、上下の温度差で空気が一気に上昇します。
- 上昇気流:積乱雲の中で暖かい空気が急激に上昇し、雲をどんどん発達させます。
- 回転する空気の流れ:風向や風速が高度によって異なる場所では、空気の「ヨコ方向の渦」が生まれやすく、これが上昇気流に巻き上げられて“竜巻”として地上に現れるのです。
このような気象条件は、台風や低気圧、寒冷前線が接近する際にしばしば見られます。特に日本では、台風シーズンの9〜10月に竜巻の発生件数が多くなっていますが、年間を通して発生する可能性があります。実際、気象庁の統計では、平均で年約20件(海上竜巻を除く)もの竜巻が発生しています。
竜巻が発生しやすい時期・場所とは?
時期
竜巻は1年を通じて発生していますが、特に発生件数が多いのは7月から11月、ピークは9月です。これは、台風や前線の影響で大気が不安定になりやすいからです。
場所
日本の竜巻は、北海道から沖縄まで全国で発生しています。沿岸部はもちろん、内陸部でも発生例が多く、どこに住んでいても油断は禁物です。特に台風に伴う竜巻は、宮崎・高知・愛知などの太平洋沿岸や関東平野で多発していますが、冬季には日本海沿岸でも発生が確認されています。
つまり、「自分の地域は大丈夫」とは決して言い切れません。
竜巻の前兆──どんなサインに注意すべきか?
竜巻は突発的に発生するため、事前に察知することが難しい災害です。しかし、発生の“前兆”となる現象もいくつか知られています。
竜巻発生の兆候(代表例)
- 空が急に暗くなり、真っ黒な雲が近づく
- 雷鳴や雷光が見える
- 突然ひんやりした冷たい風が吹く
- 雹(ひょう)や大粒の雨が降る
- 雲の底から地上に伸びる漏斗状の雲が見える
- 「ゴー」という異様な音が聞こえる
- 気圧の変化で耳に違和感が生じる
- 草や土の匂いが強くなる(地面のものが舞い上がるため)
これらのサインを感じたら、速やかに頑丈な建物へ避難することが重要です。
竜巻による被害──実際に日本であった事例
竜巻の恐ろしさは、その破壊力と被害の“局地性”にあります。わずか数分、数百メートルから数キロの範囲に、想像を絶する被害をもたらすケースが後を絶ちません。
住宅・建物への被害
竜巻が直撃すると、屋根が吹き飛び、壁が崩れ、窓ガラスが割れて飛散物が室内に侵入するなどの被害が発生します。構造の弱い建物や仮設建築物は特に危険です。
実例:2012年5月・茨城県つくば市
- 住宅被害1,000棟以上
- 全壊210棟、半壊や一部損壊も多数
- プレハブ小屋や車庫が倒壊
人命・安全への影響
竜巻の強風や飛来物は、屋外・屋内問わず人命を脅かします。
実例:2006年11月・北海道佐呂間町
- 建設会社のプレハブが吹き飛ばされ9人が死亡
実例:2006年9月・宮崎県延岡市
- 大型スーパーの店舗入口や陳列棚が倒壊し、3人が下敷きに
- 全体で140人以上が負傷
竜巻の渦の中心では建物が全壊する一方、少し離れた地域では屋根が一部飛ぶ程度、さらに離れると無傷……このように被害の“ムラ”も竜巻の特徴です。
インフラ・社会生活への打撃
竜巻は停電や断水、道路の寸断、電話の不通など、社会インフラにも大きな影響を及ぼします。
実例:茨城県つくば市の竜巻(2012年)
- 21,000戸以上が停電
- 道路や電話も一時不通
- 電気は1週間、電話は5日後に復旧
竜巻から身を守るためのポイント──事前の備えと「すぐ避難」が生死を分ける
竜巻は予測が難しい災害ですが、いざ発生したときに「何をするべきか」が明暗を分けます。ここでは、身を守るための具体的な対策を整理します。
1. 気象情報を活用する
気象庁は「竜巻注意情報」や「竜巻発生確度ナウキャスト」を発表しています。これらを活用し、日ごろから情報収集の習慣をつけることが重要です。
- 竜巻注意情報:1時間以内に竜巻発生のリスクが高い地域を通知
- 竜巻発生確度ナウキャスト:10km四方ごとに発生確度を10分ごとに更新・表示(確度1・2でリスク表示)
情報は気象庁のホームページや防災アプリでリアルタイムに確認できます。
2. 前兆を感じたら「すぐ避難」
異常気象や前述のサインを感じたら、ためらわずに頑丈な建物に避難してください。避難が早かったことで命が助かった実例も多く報告されています。
3. 屋内・屋外での具体的な行動
屋外の場合
- できるだけ早く頑丈な建物に避難
- 車や物置、プレハブは倒壊・飛ばされるリスクが高いので避ける
- 避難が難しい場合は地面のくぼみに伏せ、両腕で頭を守る
屋内の場合
- 窓やガラスから離れ、雨戸・カーテンを閉める
- 1階や地下の窓のない部屋に移動
- 机やテーブルの下で頭を守る(帽子やヘルメットがあれば着用)
4. 事前の備えが命を守る
- 家族や学校、職場で竜巻について学び、避難訓練を行う
- 避難場所・避難方法をあらかじめ確認
- 窓に飛散防止フィルムを貼るなど物理的な対策も有効
- 防災グッズや備蓄品、ヘルメットを用意
- 加入中の保険が竜巻被害をカバーするか確認
まとめ
竜巻は日本でも日常的に起こりうる、非常に危険な自然災害です。しかし、正しい知識と備え、そして“すぐ避難”の心構えがあれば、被害を最小限に抑えることが可能です。
本日のポイント
- 竜巻は全国どこでも発生しうる
- 台風や前線、低気圧の接近時は特に警戒
- 前兆現象を見逃さず、ためらいなく避難
- 気象情報は常にチェックする習慣を
「自分には関係ない」と思わず、今一度、ご家族や大切な人と防災について話し合ってみてはいかがでしょうか。竜巻は予告なくやってきますが、備えと知識があれば、命を守ることができます。


