
松下幸之助、稲盛和夫、大谷翔平も学んでいた。多く...
7/18(金)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/17
会議で新しいプロジェクト案を提案したとき、全員が「異論なし」と賛成してくれた経験はありませんか?その瞬間、あなたは「この案は完璧だ」と自信を深めたかもしれません。しかし、実はここに大きなワナが潜んでいることをご存じでしょうか。
そのワナこそが「満場一致のパラドックス」と呼ばれる現象です。今回はビジネスマンにぜひ知っていただきたいこの考え方について、具体例を交えながら解説し、職場で有効に活かすための視点を提案します。
例えば会議で全会一致で決まったにも関わらず、満足度が低かったり、後から不満が出たりしたことを経験したことはないでしょうか?
「満場一致のパラドックス」とは、「全員が同じ意見を持つときほど、その結論の信頼性はむしろ低下する」という逆説的な現象です。つまり、意見が一致しすぎているときこそ、本来は「この結論、大丈夫だろうか?」と疑ってみるべきなのです。
このパラドックスは統計学や心理学、組織論などさまざまな分野で指摘されています。なぜなら、人は本来多様な経験や価値観を持ち、完全に意見が一致することは極めて稀だからです。
有名な例として、犯罪の目撃情報の話があります。たとえば犯罪現場の目撃者10人に「容疑者5人の中で誰が犯人だと思うか?」と尋ねたとします。本来、人の記憶は曖昧なものです。心理学の研究によれば、こうした状況では目撃者のうち半数ほどが「間違った人物」を指名することが知られています。
それにも関わらず、10人全員が同じ人物を指差したとしたらどうでしょう。「これで間違いない」と安心するのは危険です。このような一致が起きている場合、背後に何かおかしな力が働いている可能性が高いのです。
実際の犯罪捜査において、目撃者の証言があまりにも一致しているときには、捜査の進め方や聞き取り方に問題はないか疑うべきとされています。
満場一致のパラドックスには、次のような要因が潜んでいます。
上司や有力者の意見が圧倒的に強い場合、「自分の意見を言うと損をするかも」「波風を立てたくない」と考え、同調してしまうことがあります。日本では特に見られやすい現象です。
例えば、ある会議で部長が「この方針で進めます。反対意見があれば、言って下さい。」と発言したが、誰一人異論を唱えず、満場一致で決定。ところが、裏では「本当にこれでいいのか」と不安の声がささやかれていた。このような経験が、あなたの職場にもないでしょうか?
人はバイアスや先入観に影響されやすいものです。たとえば、先ほどの犯罪捜査の例において、容疑者の中に「いかにも怪しそうな格好をした人」がいれば、目撃者の判断も偏りやすくなります。ビジネスでも、「前例がないから」「他社もやっているから」といったバイアスで意見が集約されてしまうことがあります。
会議の参加者が特定の部門や属性に偏っている場合、多様な視点が失われ、自然に意見が一致してしまうことがあります。たとえば、現場を知らない管理部門だけで新サービスの導入を決定した場合、現場からの異論が反映されないまま話が進んでしまいます。
「何か意見はありますか?」と漠然と問いかけるだけの会議では、意見が出にくく、表面的な満場一致になりがちです。また、結論を先に提示してしまうと、反論しづらい雰囲気が生まれます。
満場一致が見られたときこそ、「本当に異論はなかったのか?」「議論の進め方やメンバー構成に問題はなかったか?」と立ち止まることが大切です。流れ作業で合意を取るのではなく、あえて結論を再確認するプロセスが欠かせません。
かつてカトリック協会において、聖人候補の欠点や証拠の疑わしさを指摘するために設定された役割を「悪魔の代弁者」と呼んでいました。
議論を活性化させるために、あえて反対意見や疑問を投げかける役割「悪魔の代弁者」を用意しましょう。この役割の人がいることで、他のメンバーも「実は自分も同じ疑問を感じていた」と発言しやすくなります。
「異論を言っても評価が下がらない」「自由に発言できる」環境を作ることが、満場一致の回避には不可欠です。組織文化として異なる意見を歓迎していきましょう。
異なる部門や立場のメンバーを積極的に会議に巻き込みましょう。現場と経営、若手とベテラン、女性と男性――多様な視点が集まることで、自然と意見のバラつきが生まれ、健全な議論が促進されます。
「全員が賛成したから大丈夫」という幻想に安住してはいけません。むしろ、反対意見や懸念など、多様な考えを元に議論が出来る組織こそ成長の可能性が高いのです。異論を恐れず、勇気を持って声を上げることが、あなた自身と組織を守る方法です。
勇気を持って異なる意見を出すことが、あなたの職場に新しい価値と真の安全性をもたらす第一歩になるはずです。