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2026

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    知っているようで知らない「給食」の裏側を。給食現場のプロたちがゲーム開発者になった日

    知っているようで知らない「給食」の裏側を。給食現場のプロたちがゲーム開発者になった日

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    給食を「体験」に変える。未経験の社員二人が挑んだ、異例のアプリ開発「給食マスター」の裏側

     私たちは「給食」という存在を、どれほど正しく理解しているだろうか。

     子どもの頃、誰もが毎日のように当たり前に口にしてきた給食。しかし、その一食が提供されるまでに、どれほど多くの工程と判断、そしてプロの技術が積み重なっているかを詳しく説明できる人は、決して多くはないはずだ。

     「知っているつもりで、実は知らない」

     けれど給食は、私たちのすぐ身近で日々の生活を静かに支え続けている。

     大量調理ならではの厳しい制約、鉄壁の衛生基準、そして限られた時間内での完璧な段取り。これらすべてを成立させながら、毎日欠かさず食事を届ける給食の現場は、極めて高度な「仕事の集合体」といえる。

     そんな知られざる世界を、言葉による説明ではなく「体験」として届けることはできないか。その問いから生まれたのが、給食センターの運営を疑似体験できるアプリゲーム「給食マスター」だ。

     驚くべきは、このプロジェクトの核となったのがゲーム開発の専門家ではないという点だ。本業ではそれぞれ営業、厨房レイアウト設計を担う、二人の現場プロフェッショナルが中心となり、この前例のない挑戦を支えたという。

     二人は「給食に関するゲームを作る」という社長直轄プロジェクトの社内公募に自ら名乗りを上げた。ゲームの構想・企画段階から、開発のディレクション、テストプレイに至るまで、未経験の領域を走り抜けたのである。

    『業界がのぞき見える』アプリという発想

    記事内画像

    ▲九州支店 営業 松永光祐 記事内画像

    ▲設計部 渡邊良矢

     「給食マスター」を一言で表すなら何か。九州支店で営業職を務める松永光祐氏は、こう語る。

     「知っているようで知らない、給食の仕組みをのぞけるアプリです」

     営業として日々現場と向き合う中で、松永氏は給食という仕事の専門性が高く、外部へその本質を伝える難しさを痛感していたという。

     「でも、体験してもらえたら一瞬で伝わることも多い。だから説明ではなく体験にしたかったんです」  当初は採用活動への活用も想定されていたが、プロジェクトが進むにつれ、年齢や立場を問わず「純粋なゲームとして楽しめること」が最優先の目標となっていった。

    「ちゃんと遊べる」ことへのこだわり

     設計部で学校給食施設の厨房レイアウトを手がける渡邊良矢氏は、「給食マスター」を次のように定義する。

     「普通に遊べる、厨房シミュレーションゲームです」

     ここで言う「普通」とは、決して無難という意味ではない。

     「広告のためのゲームではなく、まずちゃんと面白いことが前提でした」

     最適なレイアウトを考え、設備を配置し、スタッフの動線を効率化する。その思考プロセスは、渡邊氏が日々の業務で行っている設計そのものだ。

     「だからこそ、中途半端なものにはしたくなかったんです」

     本職の設計士としてのプライドが、ゲームのクオリティを押し上げたといえる。

    専門性と第三者視点のあいだで

     渡邊氏の重要な役割の一つは、厨房レイアウトや機器のディテールに関する監修だった。

     「業界の人が見て、『給食でこれはおかしい』と思われないこと。そこは一番意識していました」

     一方で、あまりに現実を忠実に再現しすぎると、ゲームとしてのテンポや分かりやすさが損なわれてしまう。そのバランスを調整する役割を担ったのが、営業の松永氏だった。

     「業界人としての視点と、ゲーム好きとしての第三者視点。その両方を意識して意見を出していました」  現場のリアリティと、ゲームとしての面白さ。この相反する要素を、二人の異なる視点が繋ぎ止めた。

    転機となった仕様変更と「異世界」という選択

     開発の過程で、大きな決断が下される場面があった。

     長時間にわたる議論の末、ゲームシステムに「ローグライト要素」を採用。プレイを繰り返す中でプレイヤー自身が上達し、成長を実感できる仕組みへと舵を切った。

     さらに、現実の厳格な制約とエンターテインメント性を両立させるため、世界観をあえて「異世界」に設定するという大胆な手法が取られた。

     「リアルとゲームのバランスを取るためでした」

     この柔軟な発想転換によって、給食の本質的な魅力を保ちながら、ゲームとしての自由度を大きく広げることに成功したのだ。

    「満足度」をスコアにするという答え

     ゲームの成否を分ける評価軸について議論した末、二人が選んだのは「満足度」だった。

     「どれだけ早く作れたかではなく、どれだけ満足してもらえたか。給食の仕事の本質に近いと思いました」  単なる効率追求だけでは測れない価値。給食という仕事の根底にある「食べる人への想い」が、ゲームのルールという形で昇華された瞬間だった。

    体験として、知ってもらうために

     「給食マスター」は、単なる一企業のアプリゲームの枠を超えている。これは、給食機器メーカーが自らの専門領域を、現代の言語である「ゲーム」として再構築した挑戦の記録だ。

     学生にとっては業界を知る入口になり、現場で働く人々にとっては自身の仕事を語るための新しい共通言語になる。そして何より、私たちが当たり前だと思っていた給食という仕事を、新たな視点で「体験」し直すきっかけをくれる。

    給食の仕事を、体験してみる

     「給食マスター」は、給食センターの運営を疑似体験できるスマートフォン向けアプリゲームです。

     文章では伝えきれない、現場の段取り・判断・工夫の積み重ねを、ぜひ体験として味わってみてください。

    ▶ アプリダウンロードはこちら
    App Store
    Google Play

    最後に、このゲームをプレイする人へ

    松永光祐氏
     「一つのゲームとして楽しんでほしい。それが業界への興味か、中西製作所への興味に繋がれば一番うれしい」

    渡邊良矢氏
     「自分の好きなことが思いがけず仕事に役立ちそうになったときは、ぜひ迷わずに突き進んでみてください」

     中西製作所の 「いただきます」の未来をつくる。 への挑戦は、ゲームという新しいフィールドでも、着実に形を成し始めている。

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