「売れるものを、売れるだけ作る」理想の実現へ。タ...
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「200年の大同窓会」。歴代ヒット商品が勢揃いした紅ミュージアムで、思い出した“あの頃の自分”
ビジョナリー編集部 2026/03/30
伝説の「キスミー」から200年の秘蔵史まで。伊勢半が仕掛けた「化粧品×記憶」の展覧会が呼んだ共感の渦
株式会社伊勢半ホールディングスが運営する紅ミュージアム。ここで昨年、ある特別な企画展が開催され、多くの人々の足を止めました。伊勢半グループ創業200周年を記念した企業史展「愛せよコスメ!リターンズ」です。
会場に並んだのは、時代ごとに驚きとワクワクを提供し続けてきた「キスミー」ブランドを中心とした、戦後80年の歩みを物語る商品や広告の数々。訪れた人々からは、「昔使っていた! 懐かしい!」「祖母や母のドレッサーに置いてあった!」といった歓喜の声が上がり、自らの記憶を慈(いつく)しむような光景が随所で見られたといいます。
約3か月にわたりこの展示を見届けた、紅ミュージアムの松本知里氏と八木原美佳氏の両名から、その舞台裏にある想いを聞きました。
▲株式会社伊勢半ホールディングス コーポレート企画本部 本紅事業部 松本知里氏
▲株式会社伊勢半ホールディングス コーポレート企画本部 本紅事業部 八木原美佳氏
【News Release】伊勢半グループ創業200周年記念企業史展「愛せよコスメ!リターンズ-おかげさまで200周年-」
200年の軌跡が物語る、不変の「美しくありたい」という願い
2025年に創業200周年という記念すべき節目を迎えた伊勢半グループ。今回の企業史展は、その長い歴史を祝福しつつ、いつの時代も変わることのない「美しくありたい」という人々の願いに、同グループがいかに寄り添い続けてきたかを振り返る構成となっていました。
単なる商品の陳列にとどまらず、化粧品が果たしてきた社会的役割や、その背景にある当時の社会情勢なども交えて解説。来場者が「美の変遷」を多角的に学べる場となっていたのが印象的です。
▲会場最大の見どころ!歴代商品286本が並ぶ圧巻の口紅ツリー。
展示室に一歩足を踏み入れると、そこは200周年のバースデーを祝うパーティー会場のような、明るくポップな空間が広がります。
なかでも来場者の目を釘付けにしたのが、大きなバースデーケーキに見立てた9段の「口紅ツリー」です。一世を風靡した「キスミーシャインリップ」をはじめ、戦後に生み出された286本の口紅がずらりと並ぶ光景は圧巻。来場者は、かつて愛用していた一本を探したり、自分の生まれ年の商品を見つけたりと、思い思いの楽しみ方で展示を堪能していたといいます。
ギネス級ヒット「キスミーシャインリップ」がつなぐ、世代を超えた対話
展示を見守ってきたスタッフによれば、来場者の多くは40代から70代の女性たち。友人同士で訪れ、約80年分の商品が並ぶ「商品ヒストリー」を前に、会話を弾ませる姿が目立ったといいます。
▲戦後の伊勢半グループの商品史を、当時の品とともに展示。
「1970年に発売され、年間1,300万本超という驚異的な売上を記録した『キスミーシャインリップ』を、学生時代に愛用していたというお客様が非常に多かったです」と八木原氏は振り返ります。
「展示の中にその姿を見つけると、皆さんパッと表情を明るくし、当時の思い出を語り合っていらっしゃいました。アンケートでも『シャインリップとともに過ごした子ども時代を思い出した』といった、熱量の高いコメントが多く寄せられたのが印象的です」(八木原氏)
一方で、男性の来場者はキスミーのユニークな広告戦略や、6代目・澤田亀之助氏の経営哲学に興味を示すケースが多かったといいます。松本氏は、「メディアでの紹介もあり、会期が進むにつれてどんどん賑わいが増していきました」と語ります。
▲商品史のほか、昭和の人々の注目を集めたキスミーの広告なども展示。
愛用している化粧品のルーツが、実は江戸時代から続く「紅屋」にあると知り、驚きと発見を口にする人も。この企画展は、伊勢半の「過去」と「現在」をつなぎ、世代を超えた共通の話題を生む場所となっていました。
化粧品販売の常識を覆した「PSPシステム」の衝撃と、選ぶ楽しさ
展示のクライマックスに用意されていたのは、1966年に伊勢半が日本の化粧品業界で初めて導入した「PSPシステム」の再現コーナーでした。
今では当たり前となった「ドラッグストアのフック付きラックから自分で選ぶ」というセルフ販売方式。当時は百貨店での対面販売が主流だった中、このPSP(パーフェクト・セルフ・パッケージ)システムは革新的な試みだったといいます。
▲伊勢半が日本の化粧品業界に初めて導入した「PSPシステム」は、現在のセルフ販売方式の礎となっている。
「お客様に好きなコスメを選んで持ち帰っていただく趣向にしましたが、皆さん本当に楽しそうに悩まれていました」と八木原氏は語ります。特に「ヘビーローテーション」の眉マスカラ(ミニサイズ)が人気だったそう。
「『自ら選ぶ』という体験そのものに喜びを感じている姿を見て、導入当時の人々も同じように『どれにしようかな』とワクワクしていたのではないかと、時を超えた共感を覚えました」(八木原氏)
▲自分で好きな化粧品を選び取る楽しみを体験できる。
このコーナーではスタッフが寄り添い、色選びのアドバイスや開発秘話を語る場面もあったといいます。「私たちのこだわりをお伝えし、お客様からは商品にまつわるエピソードをお聞きする。まさに『伊勢半愛』を分かち合う、実りあるひとときでした」と、松本氏は手応えを語ります。
研究員と作る乳液に、紅の抽出実験。多角的なアプローチで描く未来
さらに、会期中には小学生向けのワークショップ「化粧品会社研究員と作ろう!スキンケア化粧品手づくり体験」も開催されました。
▲「化粧品会社研究員と作ろう!スキンケア化粧品手づくり体験」の様子。
伊勢半グループの現役研究員が講師を務め、乳液作りを通して化粧品の仕組みを学ぶこの企画。夏休みの自由研究として真剣に取り組む子どもたちの姿が印象的だったといいます。この試みは、部署の垣根を越えた社内連携を強める副産物も生みました。
また、紅ミュージアム開館20周年を記念したイベント「紅ミュージアムデー」も同時に盛り上がりを見せました。
▲紅ミュージアムデーのイベントで実施された色素の抽出実験の様子。
紅の原料から色素を抽出するデモンストレーションや、紅染めのトートバッグ作りなど、五感で紅の魅力を体感する1日。松本氏は、「過去の人気コスメを模した手作りのフォトプロップスを用意したり、現在の商品のテスターを並べたりと、創業200周年ならではの『今と昔』を見せる工夫を凝らしました」と語ります。
江戸から続く「紅」の文化を、次の100年へつなぐ使命
大盛況のうちに幕を閉じた企業史展。八木原氏は「社内一丸となって取り組めたことで、次の100年に向けた良いスタートが切れました」と、安堵と決意の混じった表情を見せました。

「一人ひとりのお客様に楽しんでいただけたことは、私たちにとっても大きな財産。これからも個性的で知的好奇心を刺激するような展示を、スタッフ全員で模索していきたい」と松本氏も続けます。
現存する最後の「紅屋」として、江戸時代から続く技と文化を守り、発信し続ける紅ミュージアム。その歩みは、単なる歴史の保存にとどまりません。人々の「美への欲求」を刺激し、時代に合わせて形を変えながら、新たな驚きを提供し続ける——。200年続く伊勢半グループの挑戦は、これからも続きます。


