
「注目バイアス」が武器になる理由──情報を“引き...
8/2(土)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/07/31
「ここまで頑張ったのだから、今さらやめるのはもったいない」
そんなふうに感じたことはありませんか?
ビジネスでも日常生活でも、一度投入したお金や時間、労力に引きずられて、なかなか撤退や中止の決断ができない。それは決してあなたの意思が弱いからではありません。実は私たちの誰もが持つ心理のクセが強く影響しているのです。その正体こそが「コンコルド効果」です。
コンコルド効果の名前の由来は、英仏共同で開発された超音速旅客機「コンコルド」にさかのぼります。このプロジェクトは、巨額の開発費が投じられ、途中で「このまま続ければ確実に赤字」と分かっても、関係者たちは「ここまでかけた費用が無駄になるのは惜しい」とプロジェクトを止める決断ができませんでした。
結果、さらに損失が膨らみ、最終的には開発会社の倒産で終焉を迎えました。
このように「将来の損得」ではなく、「過去に投入した回収できないコスト=サンクコスト」を惜しむあまり、合理的な判断ができなくなる。これが「コンコルド効果」です。経済学や行動科学の用語であり、代表的な「認知バイアス(思考のゆがみ)」の一つです。
例えば次のようなケース、あなたも身に覚えがあるのではないでしょうか?
「もったいない」という気持ちは人間らしさの表れですが、ビジネスの現場では時に大きな損失に直結します。
しかし、コンコルド効果を理解し、対処法を身につければ、意思決定の質を飛躍的に高めることができます。
過去の投資は「回収できない」と割り切ることが第一歩です。損切りの痛みは誰しも感じますが、合理的な判断のためには、今後の利益・損失だけで意思決定することが重要です。
人は感情に流されやすいもの。予算や期間、成果の基準をあらかじめ決めておき、そのラインを超えたら自動的に撤退するルールを設けると、冷静な判断がしやすくなります。
自分一人では「もったいない」というバイアスに気付きにくいものです。他部署のメンバーや外部アドバイザーなど、利害関係の薄い人の視点を入れることで、冷静な状況判断が可能になります。
「このまま続けた場合」「今やめた場合」それぞれの将来のキャッシュフローや損益を具体的にシミュレーションしましょう。数字で比較することで、感情に左右されない判断がしやすくなります。
過去の投資を「授業料」と考えれば、「もったいない」という気持ちに引きずられることなく、次のチャレンジに活かせます。「経験を活かして次にどうするか?」にフォーカスしましょう。
「ここまでやったのにもったいない」という思いは、誰しもが持つものです。しかし、その心理に引きずられていては、ビジネスを健全に成長させることはできません。
ポイントは、「過去」ではなく「これからの価値」に目を向けること。
サンクコストを断ち切る勇気と、客観的な判断基準を持つことで、チャンスを逃さない攻めの判断が可能になります。