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2026

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    ご挨拶~執筆にあたって~

    ご挨拶~執筆にあたって~

     このたび越村義雄会長よりご紹介をいただき、「原石からダイヤへ」の執筆機会をいただくことになりました。

     「原石からダイヤへ」——このテーマには、私の半生と重なるものを感じております。人は誰しも、最初は磨かれていない原石です。どんなに過酷な環境や試練に遭おうとも、自らを鼓舞し磨き続けることで、必ず眩(まばゆ)い光を放つダイヤモンドになれます。私の半生もまた、泥と汗にまみれながら、愚直に自分を磨き続けてきた歴史そのものでした。

     私は3歳の時、父親を交通事故で突然亡くしました。それまで奉公人がいて馬や車があった裕福な家が一変し、一気に極貧の生活となりました。友達が幼稚園に通い始めても、我が家にはそのお金がありません。友達の後をついて幼稚園まで行き、中に入れずトボトボと一人で帰ってきた日の寂しさは、今でも鮮明に覚えています。

     しかし、母はどれほど貧しくても暗い顔一つ見せませんでした。着ている服に穴が開いていれば、綺麗に洗って丁寧に縫い当てをしてくれました。「着ているものはツギハギでも、綺麗にしてあるんだから胸を張っていきなさい。ボロを着ていても心は錦だよ」。その言葉にどれほど救われたかわかりません。

     母からは、商売や人生の根本となる大切な教えをいくつも授かりました。法事に出席した母が、滅多に食べられないマグロのお刺身を二切れ、持ち帰ってきてくれたことがありました。4人家族だった我が家ですが、母は二切れの刺身を半分に切り、それをさらにさいの目に細かく分けて全員に渡してくれました。「分ければ余るんだよ」。奪い合えば足りなくなりますが、分かち合えば心も満たされます。この母の言葉は、私の経営哲学の原点となっています。

     また、貧しい中で「自分の小遣いは自分で稼ごう」と、田んぼでイナゴを捕まえて売ったり、ウサギを飼育して大学の実験用に販売したりもしました。自分の足で野山を駆け回り、工夫してお金を得る喜び。遊びの延長ではありましたが、「どうすれば相手に喜ばれるか」「価値を生み出せるか」というビジネスの原体験は、この少年時代に培われました。

     中学校を卒業すると、パイロットを目指して航空自衛隊に入隊しました。そこで待っていたのは想像を絶する過酷な訓練の日々でした。しかし、極限の環境下に置かれたことで、不可能が可能になっていきました。厳しい訓練で肉体が強固に鍛えられたのは言うまでもありませんが、感覚が研ぎ澄まされたことで、凄まじい記憶力を身につけました。この強靱な体力と驚異的な記憶力は、その後の私の人生において最大の武器となっていきます。

     結果としてパイロットの夢は絶たれてしまいましたが、「倒れるなら前へ倒れろ」「どんな困難からも逃げずに挑め」という自衛隊で叩き込まれた精神があったからこそ、私は絶望することなく、次の道へと即座に切り替えることができました。

     波乱万丈の半生を経て、築地に「すしざんまい」を開業し、今日に至るまで私が一貫して大切にし続けている考え方が3つあります。

     第一に、「お客様の喜びを自分の喜びとすること」です。商売の基本はどこまでいっても「人」です。どうすればお客様に感動していただけるか、どうすれば美味しいお寿司をお値打ち感を感じながら喜んで食べていただけるか。その「おもてなしの心」こそが、最大の原動力です。自分が儲けることではなく、目の前の人に喜んでもらうことを第一に考えるからこそ、人はついてきてくれます。

     第二に、「困難こそが自分を磨く砥石(といし)であると捉えること」です。事業をやっていれば、予期せぬ試練や逆境は必ず訪れます。私にとっても、パイロットの夢の挫折、事業の清算、そして近年のコロナ禍など、幾度もの大きな試練がありました。しかし、私はそれらから一度も逃げたり呪ったりしたことはありません。「この試練は自分をさらに強く、輝かせるための砥石だ」と受け止め、正面から立ち向かってきました。

     第三に、「絶対にあきらめない精神とスピード感」です。「できない理由」を探すのではなく、「どうすればできるか」を常に考え抜きます。そして「これだ」と決めたら、誰よりも早く行動に移します。ソマリア沖の海賊問題の解決に協力し、現地の漁業支援を行った際も、「現場へ行き、直接対話し、仕組みを作る」という即座の行動があったからこそ実現できました。あきらめない執念とスピードこそが、不可能な局面を打開するのです。

     人間、生まれたときは誰もが原石です。生まれや環境、過去の挫折など関係ありません。大切なのは、「自分は必ず輝く」という強い信念を持ち、目の前の試練から逃げずに自分を磨き続けることです。苦労や失敗は、あなたという原石を削り、美しく光らせるための貴重なプロセスに過ぎません。

     本稿を読んでくださった皆様が、ご自身の置かれた場所での挑戦を恐れず、自分だけの眩いダイヤモンドとして輝かれることを心より願っております。

    #木村清#すしざんまい#喜代村#創業者#マグロ大王#フロンティアスピリッツ

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