
X理論・Y理論とは何か?──人を動かすマネジメン...
8/7(木)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/08/07
「チームで仕事をしていると、なぜか自分の力を出し切れない気がする…」
「チームの1人1人は優秀なのに思ったような成果が出ていない…」
そんな経験、ありませんか?
こうした現象は、ビジネスの現場だけでなく、世界中のさまざまな組織で観察されています。その正体こそが「リンゲルマン効果」です。この記事では、ビジネスマンが知っておくべきリンゲルマン効果の正体と、成果を最大化するための対策について、具体例を交えながら解説します。
リンゲルマン効果は、フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンが20世紀初頭に提唱した心理現象です。彼が行った有名な「綱引き実験」では、以下のような結果が示されました。
つまり、人数が増えるほど1人あたりが発揮する力は減っていくのです。
リンゲルマン効果は「社会的手抜き」や「フリーライダー現象(利益のただ乗り)」とも呼ばれます。人は集団になると責任感が分散し、「自分が全力を出さなくても、誰かがやってくれるだろう」と考えがちです。厄介なのは、意識的にサボるのではなく、本人も自覚のないまま起こるという点です。
たとえば、10人で進めるプロジェクト。最初はモチベーションが高くても、徐々に「自分が多少手を抜いても、全体には影響しないだろう」と考えるメンバーが現れます。最終的には「最低限やれば十分」となり、プロジェクト全体のクオリティが下がる――これがリンゲルマン効果の典型的なパターンです。
「誰かがカバーしてくれるだろう」と周囲に甘える人が増えると、真面目に取り組む人の負担が増し、モチベーションが低下します。最悪の場合、優秀な人材が離職し、組織の生産性はさらに悪化します。
リモートワークや複数部署を横断するプロジェクトなど、コミュニケーションが薄くなりがちな現場は要注意。誰が何をしているか見えにくくなると、「自分の頑張りが評価されない」と感じやすくなり、やる気が削がれてしまいます。
目標や役割が曖昧な組織では、「自分が責任を持つ部分」が見えづらくなります。「どうせ誰かがやってくれるだろう」といった他人任せの意識が、無意識のうちに広がっていくのです。
「周囲があまり頑張っていないから、自分も力を抜こう」といった、集団の雰囲気に流される心理です。日本の職場では特に、同調圧力が強く働きやすいと言われています。
自分の貢献が正当に評価されていないと感じると、「どうせ認められないなら頑張る意味がない」と考えてしまいます。この状態が続くと、やる気や創意工夫がどんどん失われていきます。
組織が大きくなるほど、個人の責任や役割が曖昧になりがちです。そこで、チームを可能な限り少人数に細分化し、一人ひとりの担当や成果を明確にしましょう。
こうすることで「自分がやらなければ回らない」という当事者意識が高まり、手抜きが起こりにくくなります。
自分の仕事がきちんと見られている、正当に評価されている――この実感が、モチベーション維持には不可欠です。
こうした取り組みで、「自分の頑張りが組織に伝わっている」という安心感を生み出せます。
上司と部下が定期的に1対1で話す「1on1ミーティング」は、リンゲルマン効果対策に有効です。
1on1を通じて「あなたを見ている」「あなたの頑張りを応援している」というメッセージを伝えましょう。
人は「誰かが自分を見てくれている」「応援してもらえている」と感じると、無意識にパフォーマンスが上がります。
こうした小さな積み重ねが、チーム全体の活力を底上げします。
同じタイプの人ばかりのチームだと、同調行動が強まりやすくなります。 異なるバックグラウンドやスキルを持つメンバーを集め、自由に意見を交換できる雰囲気づくりが大切です。
コミュニケーションが活性化すれば、自然と「自分ごと」として仕事に向き合えるようになります。
リンゲルマン効果は、どんな職場やチームにも起こりうる無意識の手抜き現象です。
こうした対策によって、組織の力を最大限に引き出すことが可能です。
「誰かがやるだろう」から「自分がやる!」へ。
一人ひとりの意識が変われば、チームも会社も、驚くほどの成長を遂げるはずです。