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周りと同じ行動をとる理由——ビジネスマンが知っておきたいハーディング効果
ビジョナリー編集部 2025/08/08
「気づいたら周囲と同じ判断をしていた」「なぜか人気の店に並んでしまう」——そのような経験はありませんか?
ビジネスの現場でも、会議で多数派に流されたり、他社がやっているから自社も同じ戦略を選んだりと、「周りに流される」ことは少なくありません。
この現象の背景にあるのが、「ハーディング効果」と言います。
今回は、ビジネスマンが知っておくべきハーディング効果の具体例と、その効果に惑わされず最適な選択をするためのヒントをお届けします。
ハーディング効果とは?
ハーディング効果とは、「多くの人と同じ行動をとることで安心感を得ようとする心理現象」を指します。「herd(群れ)」が語源で、動物が群れで行動するように、人間も周囲と同じ選択をすることで無意識に不安を和らげているのです。
自分の考えや判断があっても、「みんながやっているから」「周りと違うのは不安」と感じ、集団の流れに従ってしまう。この心理は、私たちの生活のあらゆる場面で見られます。
ハーディング効果の例
- 行列のできる飲食店
「人が並んでいる=おいしいに違いない」と思い込み、列に加わってしまう。 - ヒット商品やブランドの選択
口コミやSNSで「周りが使っている」アイテムを自分も選んでしまう。 - 会議での意思決定
本当は別の意見があるのに、多数派の意見に賛成してしまう。 - 投資のバブル現象
例えばリーマン・ショックの原因となったサブプライムローン問題では、周囲の投資家がサブプライムローンの関連商品を買うのを見て、他の投資家も「周りが買っているなら大丈夫」と追随した結果、非合理的な投資が膨らみ大きな損失を招きました。 - 就職活動
口コミや周りの動向に合わせて、多くの人が受けているところに人が集まりやすい
「自分自身」からも起こるハーディング効果
実は、ハーディング効果は「他人」の行動からだけでなく、「自分の過去の選択」からも発生します。これを「セルフハーディング効果」と呼びます。
- 「前に頼んだメニューが美味しかったから、また同じものを注文する」
- 「ビジネスで、過去に成功した手法に繰り返し頼る」
- 「いつも買っているメーカーの製品だから、今回もそれを選ぶ」
というように、「過去の自分の判断」が選択の基準となり、結果として同じ行動を繰り返すのです。
なぜビジネスでハーディング効果が問題になるのか?
非合理な選択や、成長の壁を生むリスク
ハーディング効果は安心感をもたらしますが、必ずしも最適な選択につながるわけではありません。集団の流れに身を任せることで、
- 非合理的な意思決定
- 新しいアイデアやイノベーションの妨げ
- 競争力の低下
などの弊害が生まれるのです。
特にビジネスの場では、「他社もやっているから」「慣例だから」といった理由で意思決定すると、本来とるべき独自戦略や新たな市場の開拓を逃してしまう危険性があります。
実験でも証明された同調の力
心理学者ソロモン・アッシュによる「アッシュの同調実験」では、グループの中で明らかに間違っている多数派の答えに、被験者の約75%が同調するという結果が出ています。
合理的に考えれば明らかに違うと分かっていても、「自分だけ違う意見を言うのは不安」「集団から浮きたくない」という心理が働き、間違った選択をしてしまうのです。
ハーディング効果に振り回されないための視点
1. 「なぜその選択なのか」自問する
まず何よりも大切なのは、「自分がなぜその選択をしようとしているのか」を一度立ち止まって考えることです。
- 「本当に自分の意思で選んでいるのか?」
- 「周囲の雰囲気や流行に流されていないか?」
- 「過去の自分の判断に引っ張られていないか?」
この問いかけだけでも、流されるリスクを大きく減らすことができます。
2. 盲目的な「周りと同じ」から一歩抜け出す
ビジネスマンは、「前例主義」や「業界慣習」にとらわれがちです。しかし、そのやり方が本当に正しいのか、「他業界の手法」や「最新の情報」と比較してみることも必要です。
- 業界の常識を疑う:「なぜこのやり方なのか?」を定期的に見直す
- 他業界の成功事例に学ぶ:異なる分野のイノベーションを積極的に取り入れる
- 固定概念を捨てる:新しい価値観やルールに柔軟に対応する
3. ブルーオーシャンを探しに行く
多くの企業がしのぎを削るレッドオーシャン市場では、競争が激しくなりがちです。そこで、「他社と争わない新しい市場=ブルーオーシャン」を見つけることが、差別化と大きな成長につながります。
- 自社ならではの強みを活かした独自サービス
- 未開拓の顧客層や用途の発掘
- 既存の枠組みにとらわれない商品開発
こうしたチャレンジは、「周りと同じ」から一歩抜け出す強力な武器となります。
4. セルフハーディング効果に注意する
過去の成功体験や習慣に頼りすぎると、より良い選択肢を見落とす危険があります。
- 「いつも同じ商品を選んでしまう」
- 「新メニューや新サービスを試さなくなる」
そんな時は、「今の自分にとって本当にベストか?」と自分自身をアップデートする意識が重要です。
- 定期的な内省:自分の選択パターンを振り返る
- あえて違うものを選ぶ:新しい商品やサービスにチャレンジする
- 最新情報をキャッチアップ:変化する市場や顧客の声を取り入れる
ハーディング効果を「味方」にする使い方も
ハーディング効果は、ネガティブに語られがちですが、マーケティングや商品開発では活用できる武器にもなります。
- 行列や口コミを戦略的に利用:人気や話題性を演出し、消費者の選択を後押しする
- レコメンド機能の有効活用:ECサイトでの過去購買履歴を元に、顧客のセルフハーディング効果を促す
- 「定番」「安心感」を訴求:常連客・ロイヤルカスタマーを生むブランド作り
ただし、ハーディング効果に頼りすぎず、「お客様が本当に求めている最新の情報や価値」を提示し続けることが、ファンを飽きさせず、長く支持される秘訣です。
まとめ
人は、知らず知らずのうちに「周りと同じ」行動を選びがちです。
ハーディング効果の存在を知り、自分の意思と向き合い、「なぜこの選択をするのか?」を意識できる人こそ、変化の激しい時代において抜きん出ることができます。
- 集団心理に流されない「自律した判断」
- 過去の自分に縛られない「柔軟なアップデート」
- 「周りと同じ」にとらわれない「独自の価値創造」
これらを意識して、ぜひ今日からご自身の意思決定を見直してみてください。
ハーディング効果を上手にコントロールできれば、ビジネスでも人生でも「自分だけの道」を切り拓けるはずです。

