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冬のお風呂は意外に危険?ヒートショックが起きる理由と守るべき習慣
ビジョナリー編集部 2025/12/11
冬になると、暖かいリビングから冷えた脱衣所へ移動し、熱いお風呂に入る――そんな日常の動きの中に、実は命に関わる危険が潜んでいます。
その原因が「ヒートショック」。名前を聞いたことはあっても、どんな仕組みで起こるのか、誰が危険なのか、対策まできちんと知っている人は多くありません。
日本では、冬場の浴室や脱衣所での事故は交通事故より多い年もあり、決して特別な家庭だけの話ではありません。
この記事では、ヒートショックが起こるメカニズムから、年代を問わず注意すべき理由、そして今日からできる具体的な予防策まで、わかりやすく解説します。この冬を安心して過ごすために、ぜひ知っておきたい情報です。
ヒートショックとは
「ヒートショック」とは、温度の急激な変化によって体が強い負担を受ける現象を指します。たとえば、暖房の効いた部屋から寒い廊下や脱衣所へ移動し、冷えた体で熱い湯船に浸かる。すると、血管が急に縮んだり拡張したりして血圧が乱高下し、心臓や脳の血管に強いストレスがかかります。
ヒートショックは、めまいや立ちくらみといった軽い症状にとどまらず、時として意識を失ったり、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる重篤な疾患を引き起こすこともあります。
特に冬場の入浴時、温度差が10℃以上ある環境ではヒートショックが起こりやすくなります。実際、浴室や脱衣所での死亡事故は2024年には7,216人に上り、交通事故死2,663人の2倍以上もあり、決して他人事ではありません。※1,※2
高齢者だけじゃない!若い人や子どもも要注意
ヒートショックは、加齢や高血圧、動脈硬化などがあるとリスクは高まりますが、高齢者だけでなく若い人でも条件が重なれば危険にさらされます。
たとえば、
- 疲労や寝不足で自律神経の働きが乱れている
- 過度なダイエットや水分不足で脱水気味
- 糖尿病や不整脈などの持病がある
- 飲酒後や食後すぐに入浴する習慣がある
こうした状態では、血圧の調節機能が低下し、温度差への適応力が落ちています。若い人ほど「自分は大丈夫」と油断しがちですが、実際にヒートショックで失神し、浴槽で溺れかけるケースも報告されています。
ヒートショックの初期症状は、めまいや立ちくらみ、ふらつき、吐き気、頭痛、動悸など、ちょっとした体調不良と見過ごされがちです。しかし、そのまま無理をすると、意識障害や失神に至り、浴槽で溺れる危険も出てきます。
さらに重症化すると、心筋梗塞や脳梗塞、不整脈などの命に関わる病態を引き起こすことがあり、急激な胸痛や激しい頭痛、ろれつが回らない、体の片側が動かないなどの症状が現れた場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
ヒートショックのリスクを高める生活習慣
ヒートショックのリスクは、住まいの環境や日々の生活習慣にも大きく左右されます。
例えば、築年数が古い住宅では断熱性能が低く、居間と浴室・脱衣所の温度差が大きくなりがちです。また、暖房設備のない脱衣所や浴室は、冬場は外気並みに冷え込むこともあります。
さらに、以下のような生活スタイルもリスクを高めます。
- 入浴前後に水分をあまり摂らない
- 熱いお風呂(41℃以上)が好き
- 長風呂(15分以上)が習慣
- 一番風呂にこだわる(浴室が十分に温まっていない)
- 食後や飲酒後にすぐ入浴する
今日からできるヒートショック対策
ヒートショックは、ちょっとした工夫で予防できるリスクです。ぜひ、今日から次のポイントを実践してみてください。
1. 家の中の温度差を小さくする工夫
大切なのは、居間と脱衣所・浴室、トイレなどの温度差を抑えることです。
脱衣所や浴室には小型の暖房器具を設置し、入浴10分前から温めておくことが効果的です。浴室暖房がなくても、シャワーを高い位置から出して浴槽にお湯を張ることで、浴室全体を同時に温められます。
家全体の断熱性を高めるリフォームや、窓に厚手のカーテンをつけるといった工夫も、中長期的な対策としておすすめです。
2. お風呂の入り方を見直す
お湯の温度は38~40℃のぬるめに設定し、長風呂を避け、10~15分程度にとどめましょう。また、入浴前には手足など心臓から遠い部位にかけ湯をして、急激な温度変化を和らげましょう。
浴槽から出るときは急に立ち上がらず、浴槽の縁に腰かけて一息つき、めまいがないか確認してからゆっくり立ち上がるようにしてください。
3. 入浴のタイミングに注意
食後や飲酒後、薬の服用直後は入浴を避けてください。食後は消化のために血流が消化器に集中し、血圧が下がりやすくなります。飲酒は血管を拡張させ体温調節機能を低下させるため、特に危険です。
入浴は食後1時間以上あけ、飲酒する場合は入浴後にしましょう。また、寒い夜よりも、日中や夕方のまだ外気温が高い時間帯に入浴することで、温度差を小さくできます。
4. こまめな水分補給と体調管理
入浴前後にはコップ一杯の水やスポーツドリンクで水分補給をしてください。
脱水状態は血液をドロドロにし、血栓や血圧変動のリスクを高めます。特に高齢者は、のどの渇きを感じにくくなっているので意識的に補給しましょう。
また、規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動、バランスの良い食事で自律神経を整え、血圧の変動に強い体づくりを心がけることも予防に役立ちます。
5. 家族の声かけと日頃の気配り
ヒートショックは、家族のちょっとした気配りで防げるリスクです。入浴前に「今からお風呂に入るよ」と声をかけ合い、長時間浴室から出てこない場合は様子を見に行きましょう。
また、入浴時には手すりや滑りにくいマットの設置、浴室暖房や防水スマホの活用など、物理的な対策も合わせて行うことで、事故のリスクを大きく減らせます。
もしヒートショックが起きてしまったら
万が一、入浴中や部屋の移動中にめまいや立ちくらみ、ふらつきを感じた場合は、無理に動かず、その場でしゃがむか座って安静にしてください。症状が続く場合や悪化する場合は、家族に助けを求め、救急車を呼ぶことをためらわないでください。
家族が浴槽で倒れているのを発見した場合は、まず浴槽のお湯を抜き、鼻や口が水につからないように注意しながら、すぐに119番通報してください。意識や呼吸がない場合は、応急処置(心肺蘇生)を始めつつ、救急隊の到着を待ちましょう。
まとめ
ヒートショックは、冬場の家庭に潜むリスクです。しかし、正しい知識とちょっとした工夫で、その多くは未然に防ぐことができます。
家の中の温度差を減らすこと、お風呂の入り方や入浴タイミング、水分補給など、日々の習慣を見直すこと、家族や大切な人と声をかけ合い、互いに見守ること。
この冬、ヒートショックを起こさないために、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
※1:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450011&tstat=000001028897&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1=000001053058&tclass2=000001053061&tclass3=000001053065&stat_infid=000040316553&result_back=1&tclass4val=0
※2:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001032793&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1val=0


