観光の恩恵と“負の連鎖” オーバーツーリズム最前...
SHARE
移民制度と勘違い?自治体に抗議殺到した「ホームタウン認定」騒動を解説
ビジョナリー編集部 2025/09/03
日本の自治体とアフリカの「ホームタウン認定」について、
「日本のまちが外国人に明け渡されるのでは?」
「移民が大量にやってくる制度なのでは?」
など、抗議や不安の電話・メールが殺到し、職員が対応に追われる事態となりました。
しかし、この「ホームタウン認定」本来の狙いは、移民政策とは大きく異なります。
ではなぜ、ここまで誤解が広がってしまったのでしょうか?
そもそも「ホームタウン認定」とは
2025年8月、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)において、JICA(国際協力機構)は新たな試みとして国内の4自治体を「ホームタウン」に認定しました。
- 山形県長井市(タンザニアのホームタウン)
- 千葉県木更津市(ナイジェリアのホームタウン)
- 新潟県三条市(ガーナのホームタウン)
- 愛媛県今治市(モザンビークのホームタウン)
これらの自治体は、アフリカ各国との交流や人材育成の「拠点」となることが期待されています。
ホームタウン認定の目的
- 国際交流の深化
- 人材育成と地方創生
- 産業連携・技術協力
「アフリカの発展と日本の地方創生を“ともに”目指す」ことがポイントです。
なぜ「移民政策」と誤解されたのか?
SNSで拡散される“誤報”
「日本のふるさとが明け渡される」「移民を定住させる制度だ」
こうした情報がSNSで爆発的に拡散し、ある投稿は500万回以上も閲覧されました。
誤解の火種はどこから?
一因は、ナイジェリア政府の公式サイトや現地メディアが「日本政府が移住と就労のための特別ビザを発行する」などと伝えたことでした。
こうした情報が日本語でも拡散され、「ホームタウン認定=移民受け入れ」という不安が増幅されました。
現場の困惑
実際、木更津市や長井市では「なぜ移民を受け入れるのか?」という問い合わせが数百件単位で寄せられ、電話もメールも鳴りやみませんでした。
各市長や担当者は「移住・移民の受け入れや特別就労ビザの発給を要請した事実はありません」と、公式Webサイトで繰り返し説明を余儀なくされました。
「ホームタウン認定」は移民政策ではない
JICAや外務省は明確にこう説明しています。
- ホームタウン認定は、研修や視察などの“交流”を後押しするものです。
- 移民の受け入れ促進や特別ビザ発給とは一切関係ありません。
現地報道の誤りについては、JICAが訂正を申し入れている最中です。
地方創生と国際協力
日本の多くの地方都市は、人口減少や高齢化、産業の衰退に直面しています。一方、アフリカは今後大きな経済成長が見込まれ、新しい市場・技術協力のパートナーとして期待されています。例えば、今治市では、モザンビーク産の植物を船舶のバイオ燃料に活用する産業連携の話が進んでいます。三条市では、農業技術の交流を通じてガーナの農業支援と同時に、三条の産業活性化も狙っています。
「人材育成」「産業連携」「国際的な視野の拡大」
これらはすべて、“ともに学び合うパートナーシップ”の中で生まれる成果です。
誤解を防ぐ、これからの情報発信
今回の騒動は、情報が誤って伝わるリスクを改めて浮き彫りにしました。
- 現地メディアやSNS発の“誤報”が、瞬時に国内外で拡散される時代。
- 行政や関係機関は、正しい情報発信と市民への丁寧な説明が不可欠です。
たとえば木更津市では、市長自らホームページ上で「移住・移民の受け入れを要請した事実はありません」とコメントを発信。市民の不安を払拭するため、説明を続けています。
まとめ
「ホームタウン認定」をめぐる今回の混乱は、グローバル化時代の「情報リテラシー」と「地域の未来デザイン」を考える大きなきっかけとなりました。
- 事実と異なる情報に振り回されず、冷静に本質を見極めること
- 国際交流の意義を正しく理解し、“ともに創る”姿勢を持つこと
- 地方と世界を結ぶ新たなチャレンジを、地域住民も主体的に楽しむこと
これが、今私たちに求められている姿勢ではないでしょうか。
ぜひ一度、正しい情報を手に取り、ホームタウン認定の“本当の狙い”を見つめ直してみてください。

