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10/23(金)

2026年

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    自律的リーダーシップと「大アスクル」の絆

    自律的リーダーシップと「大アスクル」の絆

     延焼面積4万5,000平方メートル、鎮火まで12日間——。テレビのニュース番組で「過去に例がない」と連日報じられた埼玉県三芳町の大型物流センター火災は、巨大な戦艦が密閉空間の中で燃え続けるような、まさに未曾有の危機でした。

     しかし、この絶望的とも言える極限状態において、アスクルという組織は一度もパニックに陥ることなく、極めて有機的に、かつ自律的に動き続けました。

     「守り」を固める精鋭チーム(神7〔かみセブン〕)が埼玉県庁や警察署を回って法的な折衝を進める一方で、別の役員たちはスーツにネクタイを締め、真摯に近隣住民の方々の一軒一軒にお詫びと状況説明に回る。また一方では、お客様への配送を止めるわけにはいかないと、別の社員たちが他の物流センターの夜間稼働の応援に駆けつけ、私自身は次の代替拠点を求めて候補地へと足を運びました。

     これらはすべて、誰かが細かく指示を出して強制した行動ではありません。組織図や役職の壁を超えて、社員一人ひとりが「自律的なリーダー」として、今自分がなすべき役割を察知し、自然発生的に動いていたのです。

     危機に瀕した時こそ、組織の真価が問われます。トップが『自分たちは加害者であり、誠実に地域やお客様へ対応する』という一本の軸さえ示せば、価値観を共有している仲間たちは、自らの判断で正しく動くことができるのです。

     この強い組織風土を支えていた根底には、アスクルの社員が常に立ち返る「11箇条」の行動指針と、創業以来育んできた精神がありました。そして、私が毎週の月曜朝礼などで何年間も絶やすことなく語り続けてきた「すべてはお客様のために」というシンプルで本質的な理念が、社員の身体に深く染み込んでいたからにほかなりません。

     私はよく、自社の組織について「同じ船に乗った開拓者」という表現を使います。

     世の中には、大企業出身者などにありがちですが、「船のここに穴が開いていますよ」「水が漏れています」「パーツが外れています」と不備を指摘するだけの人がいます。しかし、指摘するだけでは船は一歩も前へ進みません。私たちが求めた「この船に乗る仲間」とは、問題点を指摘すると同時に、誰の仕事であるかを問わず、自ら進んで率先してバケツを取り、水を汲み出し、穴を塞ぐことができる人間です。泥船やボロ船であろうとも、自分ごととして共に漕ぎ出し、新たな大海原を切り拓く覚悟を持った者たちなのです。

     上場や事業変革、そして幾多の試練や危機を乗り越えてきた長い経営人生を振り返った時、ふと「経営者になって本当に良かった」と心から思える瞬間があります。

     一つは、それまで世の中に存在しなかったアスクルというビジネスモデルをゼロから創り出し、社会の不可欠なインフラへと育て上げられたことです。近年で言えば、猛威を振るったランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるシステム障害の際にも多くのお客様に大変ご迷惑をおかけしましたが、日本中の多くのお客様にとって、アスクルは日々の業務を止めてはならない重要かつ当たり前のサービスとなりました。存在しなかったものを形にし、社会に貢献し続けることができた喜びは何物にも代えがたいものです。

     そしてもう一つ、経営者として得た最大の財産であり、何よりも嬉しいのは、その道のりを共に走り抜けてきた「仲間たちとの熱い繋がり」にほかなりません。

     人生という限られた時間の中で、会社で働く時間は非常に大きな割合を占めます。アスクルの30年余りの歴史の中で、幾度の試練や修羅場をくぐりながら、共に汗を流し、苦難を乗り越えてきた仲間との絆は、今なお色褪せることがありません。

     ここで言う「仲間」とは、アスクルの社内にいる社員だけを指すのではありません。仕入先のメーカーの皆様、パートナーであるエージェント(販売店)の皆様、そして物流を支えてくださる現場の方々——。アスクルに関わるすべての人々を対等な仲間として包み込む「大アスクル」のコミュニティができたことこそが、私にとって何よりの喜びなのです。

     ここで、象徴的なエピソードがあります。以前、渋谷から六本木に向かう道中で、エージェントである山崎文栄堂さんの新社屋を目にしました。親御さんから継いだ当時は年商1億円ほどの小さな2階建ての文具店さんでしたが、ご子息の代でアスクルのエージェントとして共に挑戦を重ね、ついに夢であった素晴らしい自社ビルに建て替えられたのです。「本当に素敵なビルができて良かった」と我が事のように胸が熱くなりました。私の著書が出た際にも、山崎社長はいち早く読んで感動のメッセージをくださり、自らネット上に熱いレビューを書いてくださるような関係が今も続いています。

     また、アスクルでは「社員家族との繋がり」や「退職したOB・OGとの縁」も一生モノとして大切にしてきました。

     かつて毎年開催していたクリスマスパーティーには、社員やパートナー企業の派遣社員の方々がご家族を連れて集まりました。当時はサンタクロース姿の私に抱っこされていた幼いお子さんが成長し、大学生となって「今度インドで新しいベンチャービジネスを始めるので、今度ぜひアドバイスをください」と連絡をくれたこともあります。親子2代にわたって夢を語り合える関係が生まれるなど、まさに家族のような温かいネットワークが広がっているのです。

     アスクルを卒業していったメンバーたちに対しても、「会社を辞めたから縁が切れる」という考え方は一切ありません。ご夫婦で長野県軽井沢に移住してクラフトビールの醸造所を始めた元社員のもとへ遊びに行ったり、別の会社で社長や役員に就任したという報告を受ければ「お祝いしよう」と集まったりする。社内には「自分が岩田社長の一番弟子だ」と胸を張る人間がたくさんいますが(笑)、それぞれの場所で活躍する姿を見られることほど、経営者冥利に尽きるものはありません。

     こうした強固な絆が結ばれる根底にあるもの——それは、創業以来揺るぐことのない「イコールパートナーシップ(対等な関係)」という私の絶対的な価値観です。買っている側(発注者)が偉くて、売る側(受注者)が下であるといった上下関係や、支配・被支配のヒエラルキーは一切持ち込まない。すべてのステークホルダーが対等な立場として互いをリスペクトし、共に成長を目指す仲間として信頼を寄せ合う。

     「共に船に乗り、共にお客様のための未来を拓く」。この強い確信と価値観の共有、そしてイコールパートナーシップの思想があるからこそ、どんな荒波や試練に見舞われようとも組織は自律的に輝き続け、「大アスクル」の輪は時代や組織の枠組みを超えて、世界中へと広がり続けているのです。

    #岩田彰一郎#アスクル創業者#アスクル#ふんわり頑固#コンシューマー・イズ・キング#はじめに意志ありき#三面鏡経営#岩田ワクチン会

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