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2026

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    「飲食業」を「産業」へ、一アルバイトから頂点へ。吉野家・河村会長が語る「覚悟」と「美意識」の経営

    「飲食業」を「産業」へ、一アルバイトから頂点へ。吉野家・河村会長が語る「覚悟」と「美意識」の経営

     かつては大学を2回中退し、社会から取り残される焦燥感の中にいた。しかし、吉野家での正社員採用を機に、「一生懸命やる人生」へと急速に舵を切る。飲食業界を「産業」へと昇華させるための挑戦、そして恩師から受け継いだ『ゴッドファーザー』級の悲壮な覚悟とは――吉野家ホールディングス会長・河村 泰貴(かわむらやすたか)氏の原点と、揺るぎない経営哲学に迫る。

    空白の10年を経て決意した「一生懸命やる人生」のスタート

    幼少期は大阪で野球に明け暮れ、大学時代には挫折も経験されたそうですね。

     私の原点は大阪の瓜破(うりわり)という町にあります。母子家庭で決して裕福ではありませんでしたが、少年野球に熱中し、将来は掛布雅之さんのような選手になりたいと、夢中で白球を追いかけていました。

     しかし、小学校6年生での転校や、中学での強豪バスケットボール部での挫折を経て、10代後半から20代前半にかけては、正直に言って 「何に対しても一生懸命やることを辞めていた」もったいない10年間 を過ごしました。大阪の大学に行くことだけをゴールにしてしまい、入学した瞬間に目標を失い、結局大学は2回中退しています。

     転機は24歳の時でした。アルバイトを続けていた吉野家で、正社員として採用されたのです。周りの友人が社会人として活躍する中で取り残される孤立感を感じていた私は、 「一生懸命やらない人生はもう終わりにする」 と心に決めました。入社式で、高卒や大卒の新卒生たちを前に、「自分はこの子たちの6倍頑張って、やっと同じスタートラインに立てるんだ」と、自身を鼓舞したことを今でも鮮明に覚えています。

    「我以外皆我師」──苦手な相手こそ、最高の学びの場になる

    現場からキャリアを積み上げる中で、大切にされてきた考え方はありますか。

     店長として現場に立っていた頃、人間関係で悩んだ時期がありました。飲食業は常に人手不足で、『自分と合わない』『苦手だ』と感じるスタッフとも、真剣に向き合わなければなりません。しかし、ある時気づいたのです。「なぜ自分はこの人を苦痛に感じるのか」を突き詰めていくと、相手の言い方や態度から 「人はこういう態度を取られたら嫌な気持ちになる」という反面教師としての学び を得ているのだ、と。

     その時に心に落ちたのが、宮本武蔵の言葉として知られる 「我以外皆我師(われいがいみなわがし)」 です。自分以外は、どんな人でも物事でも、自分に何かを教えてくれる師匠であるという考え方です。

     他責にした瞬間、学びは止まります。せっかく嫌な思いをしたのなら、何かを学ばなければもったいない。そう思えるようになってから、対人コミュニケーションが全く苦ではなくなりました。この謙虚に学ぶ姿勢は、社長となった今でも私の根幹にあります。

    悲壮な覚悟の裏にあった『ゴッドファーザー』の教え

    グループのトップに就任する際、先代の安部(修仁)さんとの間で映画『ゴッドファーザー』になぞらえたやり取りがあったと伺いました。

     2009年の暮れ、当時の安部修仁社長から「戻ってこい(社長を継げ)」と打診され始めたのですが、実は2年半もお断りし続けていました。自分に務まるはずがない、逃げ出したいという恐怖があったからです。

     その時、安部が私に説いたのが、映画『ゴッドファーザー』で先代のヴィトーが跡継ぎのマイケルにバトンを渡す際の話でした。 「バトンを渡したら、お前の言葉は俺の言葉だ。もう全部お前がやるんだ」 という覚悟を求めていたのでしょう。

     私は改めて映画を三部作すべて見直しました。しかし、マイケルが最後には孤独の中で死んでいく結末を見て、余計にビビってしまった(笑)。結局、最後は「ここで断るのは自信がないから逃げているだけではないか」と自問自答し、 「個人の幸せは捨て、会社のために朽ち果てる覚悟」 を決めてお引き受けしました。安部にその決意を伝えたら、「お前、『3』まで見なくていいんだよ、『1』だけでいいんだよ」と笑われましたけれど、それほどの悲壮な決意が必要だと思ったのです。

    飲食業を「産業」へ。本当の意味での差別化と再定義

    経営者として、これからの飲食業界をどう変えていきたいとお考えですか。

     私は、今の日本の飲食業はまだ「産業」と呼べるレベルには達していないと考えています。飲食業界はハッピーライフ率が低いとも言われることがあります。誰もが管理職を目指せるというのは我々の業界の魅力のひとつですが、役員や管理職にならなくとも、経済的不自由なく暮らしていけるだけの報酬が得られるようにしていかなければなりません。私は10年以上前から「飲食業の再定義」を掲げています。すべての従業員に正当な経済的機会を与えられる状態にして初めて、真の産業と言えます。

     また、戦略的な差別化についても、本当の意味で他が真似できない要素は3つしかないと結論づけています。

    1. 種苗などの知財(特許)
    2. 調理器具などの機械パテント
    3. 商標(ブランド)

     美味しさや接客は重要ですが、それだけではすぐに同質化します。吉野家がラーメン事業を次の柱に据えたのも、製麺ノウハウや畜肉の仕入れ加工技術など、これまで培ってきたマーチャンダイジングを活かせることと、グローバルで勝負できるリスク耐性と収益性があるからです。

    「かっこ悪いリーダー」にだけはなりたくない

    河村会長にとっての理想のリーダー像とは何でしょうか。

     一言で言えば、 「かっこいいリーダー」でありたい。それは見た目ではなく、「有言実行」を貫くこと です。

     私はアルバイトから社長まですべての役職を経験しました。だからこそ、一社員だったときに「こんなリーダーは嫌だ」「挨拶も返してくれないリーダーは格好悪い」と感じた自分に、絶対に嘘をつきたくない。

     優秀なリーダーほど、100点満点の完成度を一人で求めがちですが、私は 「仲間の共感度」 を重視します。80点の完成度で4割の人しか共感しない策よりも、60点の案でも8割の人が共感してくれる方が、アウトプットは最大化されます。

     自分が現場にいた頃に抱いた「理想のリーダー像」を裏切らず、些細な約束を守り、誰に対しても偉ぶらずに「おはよう」と声をかける。そんな、現場の視座を忘れない経営をこれからも続けていきたいと考えています。

    #吉野家#河村泰貴#取締役会長#うまい、やすい、はやい#牛丼は、吉野家。#トップインタビュー

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