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2025

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    「ゼクシオ」を育て、松山英樹をサポートした男。ダンロップスポーツマーケティング新社長が語る、ヒットの秘訣と未来への熱い想い(前編)

    「ゼクシオ」を育て、松山英樹をサポートした男。ダンロップスポーツマーケティング新社長が語る、ヒットの秘訣と未来への熱い想い(前編)

    始まりは車のタイヤ。ゴルフボールから始まったスポーツ事業への参入

    なぜタイヤメーカーの住友ゴム工業株式会社(以下、住友ゴム)が、スポーツ事業に参入したのでしょうか。

    私たちのルーツであるイギリスのダンロップ社は、もともとタイヤの会社です。住友ゴムがそのダンロップブランドを使い、日本国内でタイヤビジネスを始めたのがすべてのスタートでした。 ご存じの通り、タイヤはゴムでできていますが、ゴルフボールも基本的にはゴムから作られます。そのため、タイヤ事業で培ったゴムの技術を応用してゴルフボールの製造を始めたことが、私たちのスポーツビジネスの起源です。

    歴史を振り返ると、1909年にダンロップが日本に支店を設立し、タイヤ事業を開始。1930年には、初めてゴルフボールと硬式テニスボールの生産を開始し、そこからゴルフクラブや関連用品へと事業を広げていきました。ゴルフクラブの生産を始めたのは1964年のことです。 まずゴムの技術を活かしたボールから始まり、ゴルフとテニスの業界に参入し、その約30年後にクラブの製造を始めたという流れになります。

    現在は他社でもゴルフボールを製造していますが、住友ゴムが国内で初めて製造したのですか。

    そうなります。創業の地である神戸には、現在も住友ゴムの本社があります。かつては神戸の工場で、タイヤと共にゴルフボールも製造していましたが、1995年の阪神・淡路大震災で被災しました。現在は、国内では兵庫県丹波市市島町にテストセンターとゴルフボール工場を構え、インドネシアにも製造拠点を持っています。

    海外メーカーとの契約が切れて生まれた、本気のゴルフクラブ「ゼクシオ」

    大ヒットブランド「ゼクシオ」誕生の裏側を教えてください。

    私が住友ゴムに入社したのは、バブル経済の真っ只中である1990年です。当時、当社にはタイヤ事業、産業品事業、そしてスポーツ事業という3つの柱がありました。大学時代にゴルフ部に所属していたこともあり、ゴルフ関連の仕事に就きたいという強い思いから住友ゴムへの入社を決め、希望通りスポーツ事業のゴルフ部門に配属されました。

    入社当初、私は現在も世界的なメーカーであるキャロウェイゴルフの担当となりました。当時、住友ゴムが日本国内での独占販売権を持っていたのです。翌1991年に発売された「ビッグバーサ」というモデルが全世界で大ヒットし、まさに「物があれば、いくらでも売れる」という状況でした。月初にすぐ月の売上予算を達成してしまうほどで、「仕事とはこんなに楽なものか」と思っていました。

    しかし、その後、キャロウェイとの契約が終了するという事態に直面します。キャロウェイに代わる何か新しいものを作らなければ、私たちの事業が立ち行かなくなる。その危機感から、全社一丸となって考え抜いた末に生まれたのが、2000年に立ち上げた自社ブランド「XXIO(ゼクシオ)」です。

    「XXIO」という名前は、21世紀の「XXI(ローマ字で21)」と、前進を意味する「GO ON」を組み合わせた造語です。このゼクシオを大ヒット商品へと育て上げることができた要因は、営業力だけでなく、私は「総合力」の結果だと確信しています。

    メーカーとして良いものを作らねば売れません。しかし、物が良いからといって必ず売れるわけでもない。マーケティングの4P(Product, Price, Promotion, Place)で言えば、優れた製品(プロダクト)を、適正な価格(プライス)で、効果的な販促(プロモーション)を行い、力強い営業(プレイス)で届ける。この4つの歯車がすべて噛み合って、初めて大ヒットは生まれます。どれか1つでも欠けては、そこまで到達することはできません。

    もともと、ダンロップのクラブには「ハイブリッド」というモデルや、プロ仕様の「DPシリーズ」などがありました。ただ、それらを伸ばすのは難しい状況でした。そこで、何か新しいものを作れないかと考えたのが、ゼクシオというモデルだったのです。

    キャロウェイとの契約が終了するという状況下で、開発・企画・販売の全部門が「なんとかしなければ」と必死になった。その総合力が、ゼクシオの成功に繋がったのだと考えています。

    #トップインタビュー#家田冨弘#ゼクシオ#ダンロップスポーツマーケティング

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