「すべて」を未来の力に変える——りそなショックか...
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「かっこよさ」から「圧倒的な品質」へ——VAIO 糸岡 健 社長が語る、独立からの復活劇とノジマ チームとの連携で描く未来
ビジョナリー編集部 2026/08/24
1997 年の誕生以来、「かっこいいパソコン」の代名詞として世界を驚かせてきた VAIO。
2014 年にソニーから独立し、わずか 240 名での再スタートを切った同社は、いかにして再び顧客の信頼を勝ち取り、「日経コンピュータ顧客満足度調査2025-2026」の「クライアントパソコン部門」で 1 位を獲得するまでに至ったのか。長年 VAIO の歩みを見つめ続け、新体制のトップとして牽引する糸岡 健 社長に、ものづくりにおける「安曇野 FINISH」への並々ならぬこだわりや、ノジマチームと共に描く未来像、そして自身の経営哲学について話を伺った。
ゼロからのリスタート。「かっこよさ」に「品質」を掛け合わせる
ブランド立ち上げから関わる中で、一貫して変わらない想いと、2014 年の独立時に直面した課題について教えてください。
1997 年のノート PC 誕生時から一貫して変わらないのは、「かっこよさ」や、お客様に「いいね」と喜んでいただき、感動していただくこと です。VAIO というブランドを見た時に、「かっこいい」「使ってみたい」と想起していただくイメージは、今後も変わらず続けていきたいと考えています。
しかし、2014 年にソニーという大企業から独立し、240 名の小さな企業体として再スタートを切った際、ただ「かっこいい」というイメージにぶら下がっているだけでは復活できないと痛感しました。過去のイメージとして「デザインは良いけれど壊れやすい」と捉えられていた部分に真摯に向き合い、長く使い続けて喜んでいただくためには「品質」が絶対に欠かせないと考えました。そこで、グローバルに展開していたビジネスを日本に絞り込み、VAIOというブランドや商品の本質がどこにあるべきなのかを徹底的に見直した のです。
この一連の改革を経てたどり着いたのが、「カッコイイ」、「カシコイ」、「ホンモノ」という商品理念です。ブランドの原点であるデザイン性の高さを表す「カッコイイ」。ビジネスパーソンの頼れる相棒としての機能性を意味する「カシコイ」。そして、徹底的な品質追求によって支えられた信頼性そのものを指す「ホンモノ」。これは独立以来、品質に向き合い続けてきた一つの結果であり、今の VAIO ブランドを支える重要な理念となっています。
そして心血を注いで品質向上に取り組んだ結果、2025年『日経コンピュータ 顧客満足度調査 2025-2026』のクライアントパソコン部門の調査で初めて 1 位を獲得することができました。
人の目と手が守る「安曇野 FINISH」と、モノづくりへの誇り
安曇野での徹底した品質チェック「安曇野 FINISH」は、御社の大きな特長ですね。 2014 年の独立以来、すべてのモデルを必ず安曇野の専任技術者が一品一品、人の目と手を使って最終チェックしています 。これが「安曇野 FINISH」です。もちろん現在の製造ラインではロボットや AI、カメラなどを駆使して徹底的に品質検査を行っています。しかし、最後の最後、出荷直前に専任の技術者が見ると、微細な汚れや段差など、機械では気づかないような部分を見つけ出すことができるのです。
パソコンは AI が使うものではなく、人が使うものです。だからこそ、人が使うものは人の手で最終チェックし続ける というこだわりに重きを置いています。
ありがたいことに、東京から時間をかけて、多くのお客様が安曇野の工場見学にわざわざ訪れてくださいます。私や設計のトップが直接ご案内し、モノづくりの現場をお伝えすることで、我々が日本の工場で何を行っているのかを深く理解していただくよう努めています。
私自身、職人がこだわって作ったものを長く大切に使い続けることが大好きです。VAIOのパソコンは他社製品に比べて少し価格が高いかもしれません。しかし、そこには明確な理由があります。お客様に少しでも良いと思っていただき、長く使っていただくための工夫が詰まっているからです。
「少々高くても、日本で作られた良いモノを使いたい」とお客様に認知していただき、それがひいては海外にも伝わっていく。 そのような良いサイクルを作り続けることで、日本のモノづくりや社会そのものを元気にしていきたいと考えています。
ノジマチームとのシナジー。リアル店舗で提供する「特別な体験」
ノジマチームの一員となり、今後はどのような成長を遂げていきたいとお考えですか。
我々にとって最も大きな変化は、製品を販買する「現場」を持つ企業と一緒になれたこと です。これまで VAIO の売上の 9 割近くは法人ビジネスであり、個人のお客様の声を直接聞く機会が限られていました。しかし、ノジマチームに合流したことで、現場から直接お客様の声を拾い上げ、商品開発に生かせる環境が整いました。
現在、ノジマの店舗内に VAIO の「ショップ イン ショップ」を 7 店舗(2026年8月時点において)展開しています。ノジマはメーカーからの派遣販売員を置かず、自社の社員がお客様に合った商品を提案するコンサルティングセールスを強みとしています。我々もその姿勢に共感しており、 VAIO が合うお客様にはお勧めいただき、そうでない方には無理に勧めないというニュートラルな販売方針が合致しています。
さらに、店舗には 「VAIO マイスター制度」の厳しいテストに合格したノジマの社員が配置されています 。VAIO の歴史や技術的な詳細まで熟知したスタッフが、コアなファンのお客様からのディープな質問にも的確に答えてくれます。
今後、AI や E コマースがさらに進化していく中で、わざわざ店舗に足を運んでくださるお客様には「特別な体験」を提供できなければなりません。お客様とリアルな接点を持ち、世界観やモノづくりの思いを伝える場を広げていけることは、我々にとって非常に大きな強み になると確信しています。
ミクロとマクロを行き来する。道元禅師の言葉に学ぶ経営哲学
経営者として、また一人のビジネスパーソンとして、判断の基準にしている考え方はありますか。
道元禅師の 「尽十方世界はこれ一顆の明珠なり(じんじっぽうせかいはこれいっかのみょうじゅなり)」 という言葉を大切にしています。「尽十方世界」とは無限に広がる宇宙のような大きな世界を指し、「一顆の明珠」とは一粒の光る玉を意味します。
私はこの言葉を、宇宙のような広大な広がりと、一粒の玉のようなミクロな世界は実は一つに繋がっている と解釈しています。大きな世界を見渡している時でも、目の前にある一つひとつの小さな物事の価値を理解し、大切にしなければなりません。逆に、目の前のミクロな仕事に取り組んでいる時でも、その背後には広大な世界が広がっていることを意識しながらこなしていく必要があります。マクロな視点とミクロな視点を常に行き来しながら、物事を判断していく。なかなか完璧にはできませんが、この言葉を思い出しながら、常に反省し、自分自身の判断基準として心に留めるようにしています。


