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2026

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    理論では問題は解決しない——本質的な原因究明から設備費を30%削った思考

    理論では問題は解決しない——本質的な原因究明から設備費を30%削った思考

     10年間に及ぶ欧米での駐在を経て、私は2000年に日本へ帰国しました。その後、工務2部長、そしてエンジニアリング部門長という、東レの全社的な設備戦略を統括するポジションに就くことになります。

     それまでも、世の中の様々なマネジメント手法や経営のハウツー本、あるいは「バスタブカーブ(故障率曲線)」や「イノベーションのジレンマ」といった立派な理論の存在を知っていましたが、私はそうした既成のフレームワークを直接採用することは一切しませんでした。実際の現場において、こうした理論は参考程度にとどめておくべきです。

     なぜなら、世の中の仕事はすべて「応用問題」だからです。あらかじめ用意された公式に当てはめて解けるような問題など、現実のビジネスには存在しません。アメリカ人にはアメリカ人の、フランス人にはフランス人の独自の考え方や背景があるように、目の前で起きるトラブルの背景もその都度全く異なります。教科書をなぞるよりも、固定観念を捨て、その場にある「現実」を徹底的に現状把握・分析し、本質的な原因を究明する。それ以外に解決する術はありません。

     特に装置産業である東レにとって、設備の安定稼働は利益に直結する生命線です。それにもかかわらず、現場ではしばしば「対策先行」という悪癖が顔をのぞかせます。

     それは、工場で設備トラブルが起きた時に、現場で原因が特定できていないにもかかわらず、考えられる対策を次々と打ち出そうとしてしまうのです。私が「なぜ、そんなうわべの手ばかり打っているんだ」と問い詰めると、彼らは工場長や製造部長からの追及を言い出します。

     「何か手を打っていないと、上司から厳しく言われてしまう」「原因究明に手間取っていると、評価が落ちてしまう」といった具合です。

     工場長が「あれは調べたのか」「これは試したのか」と現場を詳しく把握しないままに口を出すことも余計な手間を発生させてしまいますし、それに応じるために現場がお茶を濁すような対策を講じるのは、時間と労力の浪費といえます。人は、「考えられる手をすべて打つのは正しい」とつい錯覚しがちですが、本質原因を突き止めないまま闇雲に動くことは、かえって解決を大幅に遅らせるのです。

     私は現場に対し、「上からのプレッシャーなど気にするな。時間はかかってもいいから、まずは事実を整理し、本質的な原因究明を最優先させろ」と厳しく指導し続けました。原因究明さえ正しくできてしまえば、問題は解決したも同然だからです。

     この「事実の積み重ね」の思想は、設備投資の効率化、つまり設備費の抜本的な削減に取り組んだ際にも大きな成果を上げました。

     設備費を削ろうとすると、多くのリーダーは「これだけ大きくコストを削った」と、書類の上で見栄えの良い派手な大改革をやってしまいがちです。しかし、本当の競争力はそのようなところからは生まれません。私は各地の工場を回り、現場の担当者一人ひとりと直接面談を行いました。「君が今どんな仕事をしていて、どこに無駄があると思うか、全部聞かせてくれ」と、地道にヒアリングを重ねていったのです。

     そうして現場の声を吸い上げ、VA(価値分析)を徹底的に行いました。派手な一撃を狙うのではなく、小さな努力を全員で地道に積み重ねていく。その結果、私たちは本質的な設備競争力を損なうことなく、設備費を30パーセント削減することに成功したのです。

     こうした仕事の進め方を組織に定着させるために活用したのが、以前もお話しした「実行計画書」です。自分の思い込みや上からのプレッシャーに流されることなく、市場環境や自社の強み、そして現場の事実をすべて書き出し、論理的に道筋を繋いでいく。

     評論家のように、ああだこうだと机上の理論を語るだけでは、組織の壁や部門のメンツに阻まれて物事は変わりません。会社として、あるいは社会のためにどうあるべきか。その本質を見据えて、泥臭く事実と向き合い続けることこそが、組織を芯から強くしていくのです。

    #東レ#東レ会長#現場主義#答えはすべて現場にある#企業共創#素材で社会を変える#日覺塾

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