「平和への羅針盤」はここにある。ノーベル平和賞受...
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「心の平和」を日常に実装する――ノーベル平和賞受賞者世界サミット アジア統括事務所 第2回例会レポート
ビジョナリー編集部 2025/12/18
分断と対立が複雑化する現代において、「ノーベル平和賞受賞者世界サミット アジア統括事務所」の第2回例会が先日開催されました。本例会は、平和を 「遠い理想」としてではなく、「日常の中に息づく、実践としての平和」 として捉え直し、その実現への具体的な行動を、国内外の来賓と共に議論する場となりました。
本サミットは、冷戦終結の立役者であるミハイル・ゴルバチョフ元大統領によって1999年に設立され、アジア統括事務所は2023年に設立されました。例会では、ゴルバチョフ氏の壮大な理念を、いかにアジアの地で具体化していくかというビジョンが共有されました。
伊東玄聖理事長が語る「多様性における統一」と「心の平和」
主催者を代表し登壇した、本部副会長兼アジア統括事務所理事長の伊東玄聖氏は、ゴルバチョフ氏が1990年の受賞スピーチで述べた平和の定義を引用し、挨拶としました。
「平和とは、類似性における統一ではなく、多様性における統一、差異の比較と調和なのです」
「私たちが目指すべきは、力の均衡ではなく、利害の均衡です。他者の犠牲の上に成り立つ優位ではなく、妥協と調和を求める姿勢です」
伊東氏は、現代世界が直面する課題は、政治的な議論だけで解決できるものではなく、「一人ひとりの心のあり方、行動の選択として捉え直すことが求められている」と強調しました。そして、「人と人との出会い、理解、協働、それこそが、分断の時代における『平和の礎』だと私たちは考えています」と述べ、心の平和が世界平和に繋がるという思想を改めて示しました。
2026年に向けた「平和の実践」を支える3つの柱
伊東氏は、この理念を実現するための具体的な活動として、2026年に向けて以下の3つの柱を掲げて活動を拡充していく計画を発表しました。
- 「平和教育」
次世代のリーダー育成に注力。ノーベル平和賞受賞者が監修した平和学カリキュラムの拡大に加え、インドに本部を置くアート・オブ・リビングと提携し、学生が世界各地で活躍できるインターンシップの導入を進めます。
- 「文化と平和の融合」
芸術、ファッション、建築、伝統文化、スポーツなどを通じて、心の豊かさと社会的調和を結びつける活動を展開。ファッションを通じた自己肯定感の向上をベースとした社会貢献プロジェクトへの参画などがその例として挙げられました。
- 「国際的対話の促進」
宗教・学問・経済・政治といった異なる分野をつなぎ、相互理解のための国際フォーラムを開催します。
また、2026年10月には、サミット20回目の節目として第20回ノーベル平和賞受賞者世界サミットが、原点の一つであるバチカン市国で開催される予定であることも報告されました。
地域社会と世界を結ぶメッセージ
例会には、地域社会の代表者や、国内外の有識者らが登壇し、それぞれの立場から平和へのメッセージを寄せました。
【八木原保アジア統括事務所理事】平和なくして経済なし
「原宿の父」として知られる八木原理事は、地域経済の観点から平和の重要性を訴えました。
「平和なくして経済なし」
八木原理事は、長年築き上げてきた原宿・表参道の発展は、平和な社会基盤があってこそ成り立ってきたことを指摘し、東京でのサミット開催への強い期待と、地域コミュニティを通じた平和活動への継続的な貢献を約束しました。
【ロドニ・ペレラ大使(元スリランカ大使)】地上に平和を、そしてそれは私から始まる
ロドニ・ペレラ大使(元スリランカ大使)は、35年の外交官経験から得た知見として、「心からの外交」の重要性を説きました。
「平和とは紛争後の静けさではなく、理解の積極的な存在です。憎しみは憎しみによって終わるのではなく、愛によってのみ終わるという仏陀の教えを私たちは信じます。」
大使は、国連本部近くで耳にした歌を座右の銘としているとして、「地上に平和を、そしてそれは私から始まる」と、平和が個人の心と行動から始まることを強調しました。
最後に
ノーベル平和賞受賞者世界サミットアジア統括事務所の第2回例会は、ゴルバチョフ氏の「多様性における統一」という普遍的な思想を、東京・渋谷の地に根付いた具体的な「実践」へと結びつける重要な機会となりました。アジアからの新しい平和への視点が、2026年のバチカンでのサミットに向け、世界に発信されることが期待されます。


