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2026

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    靴下の“端切れ輪っか”が、なぜ500箇所の福祉現場を救うのか? タビオが廃材に託した、未来を育む「魔法の輪っか」

    靴下の“端切れ輪っか”が、なぜ500箇所の福祉現場を救うのか? タビオが廃材に託した、未来を育む「魔法の輪っか」

    一足の靴下から生まれる「もったいない」の正体

     私たちが毎日何気なく履いている靴下。その一足が完成する裏側で、実は膨大な「余剰物」が生まれていることは、あまり知られていない事実だ。靴下専門店を全国展開するタビオでは、年間2,500万足以上もの靴下を生産しているが、その製造工程では、どうしても避けられない廃材が発生する。

     それが、靴下のつま先を縫い合わせる際に出る、小さな端切れ(はぎれ)の輪っかだ。イカリングのような形状で、もともとは靴下の編地であるため、適度な伸縮性という特性を持っている。一足につき必ず2個出るこの輪っかの数は、年間で約5,000万個。2013年頃まで、同社の商品を作る工場では、これらすべてを産業廃棄物として費用をかけて処分していたという。

     「この膨大な数の廃材を活用できないか――」。そんな現場の切実な思いから、タビオの廃材を通じた社会貢献の物語は始まった。

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    偶然の連絡から始まった、新たな役割

     転機となったのは、ある教育支援団体からの問い合わせだった。「支援学校の子どもたちの教材として、その輪っかを使わせてもらえないか」。

     伸縮性があり柔らかなこの輪っかは、編み込んでいくことでさまざまな形に姿を変えることができるのだ。靴下工場が集積する奈良県広陵町では、この端切れ輪っかを使った作品コンテストが毎年開催されており、秋の作品展には、コースターやマット、可愛らしい動物の人形から、タペストリー、さらには現代アートまで、実に100点以上の作品が並ぶ。つまり、この輪っかは手に取る人の創造力次第で、新たな価値を生み出す「素材」へと昇華するのだ。

     タビオはこの廃材を捨てるのではなく、必要とする場所へ無料で提供することを決断した。2013年頃に始まったこの試みは、当初こそ小さな一歩だったが、「指先を使う作業がリハビリに最適」「集中力を養う教材になる」といった声が口コミで広がり、現在では全国500か所以上の支援学校や福祉施設で活用されている。

     2016年には、こうした環境への配慮と社会貢献が評価され、「消費者志向活動表彰」を受賞。燃やされるはずだった廃材が、人々の健康に貢献し、笑顔を生み出すきっかけとなったのだ。

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    子どもたちが「SDGs」学ぶ機会にも

     タビオの取り組みは、福祉の現場にとどまらず、次世代を担う子どもたちの学びの場にも広がっている。

     2023年には、東京都渋谷区の公立小学校の放課後クラブにて、毎月「SDGs」をテーマにしたワークショップを開催。さらに2025年の大阪・関西万博にも期間限定で出展し、端切れ輪っかを使ってぬいぐるみやコースターを作るワークショップを実施した。

     子どもたちは、目の前の色とりどりの輪っかが、もともとは捨てられるはずだった靴下の一部であることを学ぶ。そして自らの手で、それらを世界に一つだけの作品へと作り変えていく。「いらなくなったものでも、アイデア次第で素敵に変身できる」。机上で学ぶ教科書よりも、実際に手を動かして体験するこの時間は、子どもたちが資源や環境の問題を自分ごととして捉える大きなきっかけとなっていると言えるだろう。

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    足元から世界を温める、持続可能な輪

     タビオが展開するこの活動は、単なる「廃棄物の削減」という枠組みに留まらない。

     廃材を再利用(リユース)することで、焼却時に出る二酸化炭素を抑制し地球を守る。リハビリや教材として提供することで、人々の暮らしを豊かにする。そしてワークショップを通じて、未来を担う子どもたちの心を育てる――靴下から生まれた小さな端切れの輪っかは、いまや企業、福祉施設、学校、そして環境を大切にしたいと願う多くの人々の思いをつなぐ、大きな社会の“輪”となっている。足元から社会を温める同社の挑戦は、これからも続く。

    #タビオ#ESG#端切れ輪っか#持続可能性#環境#ワークショップ#tabio#SDGs

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