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2026

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    仕事における「鳥の目」の実践――東急不動産への出向で学んだ「固定観念からの脱却」

    #15仕事における「鳥の目」の実践――東急不動産への出向で学んだ「固定観念からの脱却」

    原石からダイヤへ

     以前お話しした「虫の目、鳥の目、魚の目」という三つの視点。その中でも、全体を俯瞰する「鳥の目」が欠けていると、街づくりはうまくいきません。

     例えば開発を、「虫の目」だけで見てしまうと、どうしても「囲い込み」の発想になります。例えば「自分のビルにいらっしゃったお客様を外に出さないようにして、ビルの中で消費してもらおう」と考えてしまう。しかし、「鳥の目」で空から街全体を見渡し、お客様の利便性を高めることが大切です。街に来る人が増え、回遊性が高まれば、結果として自分のビルにも立ち寄ってくれるお客様は増えるのです。

     象徴的だったのが、武蔵小杉の開発での事例です。

     武蔵小杉には東急の駅があり、隣接して他社の商業施設などが建っています。「虫の目」だけの発想であれば、ライバルにお客様が流れないよう、境界線に塀を作って遮断していたかもしれません。実際、当初の計画では壁があり、スムーズに行き来できる状態ではありませんでした。

     そこで私は、すぐに壁を取り払って、通路をつなげるように指示を出しました。壁を取り払って他社の商業施設も駅と直結になれば、他社も喜びますし、何よりお客様にとって便利になるのです。

     商業施設同士、お互いの強みを活かし、共存共栄を図る。お客様にとって選択肢が増えることが、街全体の魅力が増すことにつながります。これこそが「鳥の目」で見た街づくりのあるべき姿だと確信しています。

     こうした「鳥の目」で見ることでの「固定観念からの脱却」は、組織文化の面においても東急不動産への出向時代に学びました。

     東急は、女性総合職の採用を開始したのが1988年であり、当時はまだ、女性社員は補助的な業務を担当するのが一般的な時代でした。しかし東急不動産に出向して驚いたのは、社長が出席するような重要な経営会議の場で、職種区分にとらわれず内容を熟知した女性担当者が堂々と予算の説明を行い、厳しい質問にも的確に答えていたことです。

     性別や学歴に関係なく、能力のある人間には等しくチャンスを与え、フラットに評価する。私は、こうした女性社員の活躍にカルチャーショックを受け、非常に大きな刺激となりました。後に私が、本社に復職、ニューメディア課長に就任したとき、男性・女性に関わらず優秀な社員に活躍してもらう土台となりました。

     人材育成についても、出向先で大きな気づきがありました。

     東急ハーベスト浜名湖の開発時、建設予定地の境界にいびつに入り組んだ他人の土地(畑)がありました。そのまま設計すると、建物の形状に影響し、コストがかかり景観も悪くなります。そこで私は部下に「現地に合わせて公図(図面)の地図訂正を行い平らな境界にするよう、地権者と同意を取り交わし、行政協議を進めること」を指示しました。

     部下は当初、「そんなややこしいこと、できません」と難色を示しました。しかし私は「絶対にできるからやってみろ」と強く勧めました。結果として、地主さんとの交渉はまとまり、まっすぐな土地の境界線となり、大きなコスト削減にもつながりました。

     後年、その元部下がこう話してくれました。

     「あの時、自分が『できません』と投げ出したら、野本マネージャーが自分でササッとやってしまいそうだった。それでは自分の存在価値がないと思い、歯を食いしばってやりました。結果が出た時は、本当に自分の自信になりました」と。

     上司が手を出せば早い仕事でも、ぐっと堪えて部下に任せ、成功体験を積ませる。これもまた、目先の効率(虫の目)にとらわれず、組織の未来を育てるという「鳥の目」の実践だったのだと思います。

     もともと、東急不動産への出向期間は3年の約束でした。途中、東急に戻ってこいという話も出ましたが、結果として3年間みっちり東急不動産で働きました。

     本社復帰後はリゾート事業かビル事業の課長だろうと予想していましたが、辞令を見て驚きました。そこに記してあったのは、当時新設されたばかりの「ニューメディア課」。全く未知の領域でしたが、出向時代に鍛えた「諦めない志」と「柔軟な視点」を胸に、私は新たな職場へと向かったのです。

     
    Photo by Shinkenchiku-sha

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