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2026

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    事業を生み出し、育む思考力

    #26事業を生み出し、育む思考力

    原石からダイヤへ

     昨今、AIやロボティクスの進展に伴い、企業においても理系人材への期待が高まっています。

     一般に、理系的アプローチとは仮説を立てて検証し、一つの結論を導く思考であり、文系的アプローチとは現象を観察し、そこに解釈を加えながら多様な意味を見いだしていく思考であると言えるでしょう。こうした異なるアプローチを組み合わせることは、企業が価値を創出する上でも不可欠なものです。

     私は、企業の最大の使命は、「世の中に必要なこと(役に立つこと)を事業化し、継続すること」であると思っております。

     事業化とは、付加価値を創出して利益を上げることです。利益は事業の発展と持続を可能にし、企業が長期にわたって社会に役立つための基盤となるのです。

     事業を興すにあたっては、「何のために行うのか」という目的を起点に考えることが重要です。すなわち、あるべき姿から現在を逆算するバックキャスティングの視点です。

     一方で、現実の社会に目を向け、人々が何を求めているのかを観察し、柔軟に解釈を広げていく姿勢も欠かすことができません。

     このように、目的から考える力と、現実から広げる力の双方があってこそ、事業は成立します。

     しかしながら、学生時代での専攻によって自らを理系・文系と規定し、その枠組みに自らを閉じ込めてしまうことは、こうした可能性を狭めることにつながりかねません。

     私が育った野本商店には、もちろん文系・理系といった区別はありません。

     ただひたすらに、「何を売って儲けるのか」「どうすればお客様に喜んでいただけるのか」という目的に向かい、両親は考えていたと思います。ときには私達兄弟もその議論に加わり、子供ながらに真剣に意見を述べたものです。

     また、中学生の頃、幼い頃から可愛がっていただいた常連のお客様が亡くなられたとき、父から「もし自分に何かあれば、あそこの貸家を売れば借金は返せる。いままでの生活に困ることはないよ。」と告げられたことがあります。

     当然、商売をやっていれば、借金もあるということは(金額の多寡は別として)子供ながらなんとなく知っていました。仮定であっても、「父の死」について話しをされたことはその時が初めてであり、子供心に大きな衝撃を受けたことを覚えています。しかし同時にそれは、家族を守るために最悪の事態まで想定し、備えを講じる大黒柱としての覚悟を示すものであり、言葉以上の心強さを感じた経験でもありました。

     これらの経験は、後に私が講演などでも話させていただく「経営者に求められる3つの力」の原点となっています。

    ① 将来のビジョンを示す「構想力」
    ② 正しい判断・決断をする「判断力・決断力」
    ③ リスクに対する対応力「想像力・行動力」

     ①と②については多くの経営者も強調されるところですが、私があえて③を掲げるのは、父の姿勢にも影響を受けていることを、今になって実感するところです。

     企業が継続するためには、順調な時だけでなく、想定外の事態にこそどう向き合うかという力が不可欠であると考えています。

     こうした経験を通じて私が感じているのは、思考の枠に自らを当てはめるのではなく、目的に応じて柔軟に考え続けることの大切さです。

     文系・理系という枠にとらわれることなく、「何のために」、と目的から考え、「なぜ」、と現実を見つめ、「もしも」、と多様な視点を統合していくこと。

     この思考力こそが、先行きの見通しが難しいこの時代において不可欠であり、企業が社会に価値を提供し続けるために求められる本質的な力、人材に求められる姿ではないでしょうか。

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