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2026

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    「価値共創」で描く次の100年——愛した事業を自らの手で潰す痛み。100年企業ダイセル榊社長が徹底する「忖度禁止」と「後悔しない決断」の裏側

    「価値共創」で描く次の100年——愛した事業を自らの手で潰す痛み。100年企業ダイセル榊社長が徹底する「忖度禁止」と「後悔しない決断」の裏側

     8社のセルロイド会社が統合して誕生し、100年以上の歴史を持つ株式会社ダイセル。化学品から自動車部品まで多角的な事業を展開する同社は今、「作る会社」から「価値を共創する会社」への進化を掲げている。30代での海外拠点長や、多種多様な事業部門のトップを歴任してきた社長は、環境の激変に伴い、かつて自身が愛着を持って育て上げた事業からの撤退という苦渋の決断も下してきた。いかにして変化を恐れず、新たな価値を生み出していくのか。現場の事実を重んじる「CAPD」サイクルや「忖度禁止」の組織づくり、そして祖業であるセルロースが切り拓く循環型社会のビジョンまで、同社の次なる100年への挑戦について榊 康裕社長に話を伺った。

    自社の技術と社会のニーズを掛け合わせる。「価値共創」のDNA

    「作る会社」から「価値を共創する会社」へと進化させる構想を掲げられています。この理念にはどのような思いが込められているのでしょうか。

     基本的には、私たちのあり方を大きく変えるという意識ではありません。もともとダイセルは、8社のセルロイド会社が一つになって誕生した会社です。つまり、異なる会社と協業し、互いを受け入れ合うという遺伝子がDNAとして組み込まれている のです。

     私たちはモノづくりの会社として、良いものを作り、技術の系譜を繋げながら様々な事業へと発展してきました。しかし、世界情勢や環境が変化する中で、自社を強くするだけでは立ち行かなくなっています。他社や他産業と一緒になった方が、社会に貢献できる領域が広がっているのが事実です。

     良いものを作って社会に供給するというのは、プロダクトアウト的な発想です。これからは、よりマーケットインの視点を持ち、社会のニーズや取引先・お客様が抱える課題を吸い上げ、私たちの技術や製品、サービスと掛け合わせてソリューションを提供していく 。この両輪を本気で実践していくことこそが、私たちが目指す「価値共創」の姿なのです。

    飛び地には手を出さない。技術の系譜を活かした事業の選択と集中

    限られた資源の中で3,000億円もの成長投資を行う際、何に懸け、何を捨てるのか、その判断基準を教えてください。

     これまでの経験から言えるのは、自社の強みから離れた「飛び地」的な事業には手を出すべきではない ということです。過去にも、全くの飛び地と呼べる分野に進出して失敗し、撤退を余儀なくされた苦い経験があります。

     そのため、私たちは事業ポートフォリオを「成長牽引」「次世代育成」「(安定収益の)基盤」「変革(構造改革)」の4象限に分け、マネジメントを行っています。この選択において重視しているのは、有望な市場であるという前提のもと、自社の技術的な蓄積とのシナジーがあるかどうか です。

     例えば、私たちはプロセス型の化学プラントの技術と、エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)のような組み立て型の生産技術の両方を持っています。これらの技術力や生産方式を活かせる分野であれば、新しい領域にも挑戦します。一方で、ポートフォリオのマネジメント指標も見直し、成長牽引事業はEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)、基盤事業はROIC(投下資本利益率)、次世代育成事業は売上高成長率と、それぞれの事業特性に合わせたKPI(重要業績評価指標)を設定する ことで、適切な投資と判断を行っています。

    愛着ある事業からの撤退。変化に耐えうる構造改革の決断

    ご自身の経営哲学や意思決定の根底には、どのような原体験があるのでしょうか。

     私はこれまで、原料購買やシンガポールでの海外拠点トップ、さらには化学品や組み立て型のインフレータ事業、防衛事業に至るまで、多種多様な部門を経験してきました。

     その中で特に直面したのが、急激な事業環境の変化です。かつて私が担当し、花形として成長を牽引していた汎用ケミカル(化学品)の事業がありました。しかし、別の事業部から戻ってみると、中国勢の台頭などにより市場環境が一変し、見るも無惨な状況になっていたのです。

     これは非常に辛い現実でした。そこで働く従業員の愛着や努力を知っているだけに、自分が愛した事業を自らの手で撤退・縮小させるのは心が痛みます 。しかし、環境の変化はますます早くなっています。情に流されて決断を先延ばしにすれば、会社全体に影響を及ぼし、後でさらに大きな後悔をすることになります。

     経営者として、環境変化に耐えうる事業構造へとシフトさせることは当然の責務 です。たとえ周囲やOBから批判されたとしても、後になって「あの時決断しておけばよかった」と後悔しないための最善の選択 を心がけています。

    木材を余すことなく活用する。祖業のセルロースが描くビッグドリーム

    祖業であるセルロースを循環型社会を支える領域として再定義されています。どのような未来像を描かれているのでしょうか。

     これは私たちが次の100年に向けて描いている「ビッグドリーム」です。現在、化学産業の多くは石油由来の原料を使用していますが、私たちはセルロースなどの木材資源を「再生可能な炭素資源」として捉え直し、化石資源からの脱却を目指しています。

     私たちが考えているのは、木材を余すことなく有効活用するバイオマスバリューチェーンの構築です。例えば、木材成分を溶かして化学品の原料に代替するだけでなく、林業や農業など他の一次産業とも共創することで、里山の再生や水質の向上といった恩恵を生み出します。

     日本の林業が抱えるコストやインフラの課題を解決するため、森林の近くに設備を置き、木材を丸ごと溶かして処理する新しい生産技術の確立にも挑戦しています。金沢大学などの研究機関とも協業し、2030年以降の社会実装を目指して実証を進めているところです。時間はかかりますが、私たちが起爆剤となり、社会全体を巻き込んだ循環型社会を実現したい と考えています。

    計画より事実を優先する「CAPD」。現場の声と忖度禁止の組織づくり

    PDCAではなく「CAPD」から始めると伺いました。激しい環境変化の中で、組織づくりにおいてどのようなことを意識されていますか。

     一般的には「PDCA」と言われますが、私たちは1990年代から「CAPD」という言葉を使っています。計画(Plan)を先にしてしまうと、どうしても「計画ありき」になり、現場に隠れている重要な事実や課題を見落としがちになります。まずは事実を確認(Check)してから計画を立てる方が、手戻りがなく本質的な課題解決に繋がる のです。

     この考え方は、事業計画や安全管理にも活かされています。私自身、新たな中期経営計画を策定した際は、全国の事業所を回り、自分の言葉で従業員に直接説明を行いました。事業所ごとに抱えている事業が違うため、相手に合わせて説明の重み付けを変えています。

     また、従業員との座談会も定期的に開催し、現場のリアルな声を直接吸い上げています。私が社内で強く発信しているのは「バッドニュース・ファースト・アンド・ファースト(BNFF) 」と「忖度禁止 」です。悪い情報ほど最優先で上げてもらえれば、対応の選択肢は広がります。上司の顔色を窺うのではなく、自分の考えを持ち、失敗を恐れずに挑戦できる風通しの良い環境を作ることが、変化に強い組織の条件だと信じています。

    論理と直感の掛け合わせ。第三者の視点で「ユニークな会社」を目指す

    次の100年を見据え、今後どのような会社にしていきたいとお考えですか。

     非常にシンプルですが、様々なステークホルダーから「付き合って良かった」「一緒に仕事をしたい」と思われる、ユニークな存在であり続けたい と考えています。

     私たちの事業構造は多岐にわたり、投資家の方々から「コングロマリット・ディスカウント(複合企業の企業価値が低く見積もられること)」だと指摘されることもあります。しかし、見方を変えれば、ニッチで素晴らしい技術を持つ複数の事業が存在しているということです。それぞれの強みをうまく結びつければ、まだまだ大きな成長が期待できると確信しています。

     経営判断を下す際、私は「左脳(論理)」と「右脳(直感)」のバランスを重視しています。データや理論はもちろん重要ですが、経験に裏打ちされた直感も同じくらい大切 です。そして最終的な決断を下す時には、あえて一歩引いて「第三者の目」で客観的に事象を見る ようにしています。主観にとらわれず、本質的な価値を見極めることで、これからも安定と成長を社会に示せる会社を創り上げていきたいと思います。

    #ダイセル#経営#ビジネス#事業変革#価値共創#サステナビリティ#リーダーシップ#組織開発#イノベーション#循環型社会#バイオマス#マネジメント#SDGs

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