
地球を未来に残すための挑戦(後編)
ビジョナリー編集部 2025/04/24
4/25(金)
2025年
ビジョナリー編集部 2025/04/11
デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社(DIT)――。1982年(昭和57年)に創業、得意分野に応じたグループ会社を複数設立、上場を目指すために2006年(平成18年)にグループ会社を統合し、DITを設立。現・代表取締役の市川聡(いちかわ・さとし)社長はもともと異業種(鍼灸師)で活躍していたが、創業者で父親である憲和(のりかず)氏(1940年-2021年)から請われて2004年に入社し、2018年に会社を受け継いだ2代目だ。成長著しいIT業界で「7つのカンパニー」制度により、同グループを牽引している。幅広く世界を横断するデジタル業界の中で、いかに変化に対応しているのか。
1982年に今の組織母体となる会社を父が創業しました。立ち上げ当時は、20人ぐらいの規模だったそうです。IT業界も他の業界の例に漏れず、下請け、孫請けはもちろん、“3次請け”“4次請け”などが罷り通っていた時代で、我々もそうした中で細々と仕事を続けていました。
DITという社名については、他にもシンプルな候補があがっており、他の社名を皆で推していました。ところが私の父が、「時代を先取りするためにも、デジタル・インフォメーション・テクノロジーがいいんじゃないか」と言い始めたのです。当然、私たちは「そんな長い社名、電話に出るときにどうするんですか? 先方様が固まりますよ」と提言したりもしましたが、結局、父が推した現在の社名に決定しました。
父は「変化対応力」を大切にしていました。競争が激しいIT業界で、「変化にしっかりと対応しながら生き残っていく。それこそが、まさに社名そのものなんだ」――という考えだったのだと思います。
IT業界と一口にいっても、さまざまな業種や業態があります。我々はいろいろな分野に手を広げながら、最終的にはエンドユーザーのお客さまから直接、仕事をいただける、そういった会社になりたいと考えました。その結果、分野ごとの会社を立ち上げることになったのが、1990年代でした。そこが「7つのカンパニー」の源流です。小さな組織で経営を考えることにより、「自分たちの会社で、自分たちがやるんだ」という気持ちが芽生えてきた。この気持ちは、今も我々の会社にとって大切なものだと考えています。
今、分野ごとや地方拠点を含めて、7つのカンパニーが存在しています。社員たちに求めていることは「しっかりと仕事を確保する」、「収益を上げていく」、「人を育てる」という意識です。7つのカンパニーにカンパニー社長、そして業務・営業・事業部門長がいます。言ってみれば、普通の会社の7倍ぐらいの動力で仕事を遂行するということになっています。その方が小回りがきく、すなわち意思決定が早いのです。
7つの中でも「愛媛カンパニー」が象徴的です。ちょうど、愛媛県および県庁所在地である松山市から「企業誘致を行う」という話が出ました。その中で、創業者の父が愛媛出身であることから当社がリストアップされ、父が、「分かりました」と二つ返事で承諾したのです。 今後、地方創生が大切な時代がくると分かっていたのかもしれません。
現在も、年間10人前後、愛媛県出身の方々を採用しております。東京や大阪といった大都市だと、企業採用というのは人の取り合いになってしまいますが、愛媛県には企業がさほど多くないので、それほどの競争にはなりません。その中でも、愛媛県に残って仕事をしたいという方々が結構いらっしゃいます。我々のグループ全体で、年間100人ぐらいを採用していますが、その10%強は、地方拠点があるからこそ確保できている人材です。地方の方たちは定着率も高く、皆さん長く働いていただいています。 直近ですと、函館市(北海道)にも拠点を構え、同様に人材採用の拠点にするといったことを進めています。
父は、社員から「こんなことをやりたいんですけど」と言われると、「よし、明日からすぐやるぞ!」という感じの人でした。私は当時、ナンバー2でしたので、どちらかというと「抑える役」、「ブレーキ役」でした。私が社長に就任した際、改めて「この会社の強みとは何だろう?」と振り返ってみると、「皆がやりたい」ということに対して、即座に反応して「背中を押してきた」父のスタイルこそが、我が社の持ち味なのではないかと思い当たりました。つまり「失敗したとしても、再びチャンスを与えられる=うちの会社の強み」であることを再認識できたのです。
もう一つ、弊社の強みといえるのが、景気動向に左右されない自社商品を持っているという点です。1990年代、売り上げの上がらない頃から、数え切れないくらい、自分たちの製品やサービスを、投資開発として行ってきました。もちろん、失敗作も数多くあります。ただしこの頃の経験によって、「やり続ける」、「成功するまでやる」、「失敗を糧にしてやり続ける」といったことが、我々の文化として根付いたように思います。通常、製品開発を途中で諦めてしまう会社様が多いと思うのですが、我々は、やり続けた。その結果が、現在に繋がっていると感じています。
サイバーセキュリティに関しては、侵入する側が常に手口を変えて攻撃をしてきます。しかし、弊社は、それに対応する技術や製品を用意しています。「ウェブサイトの改ざん」、「ランサムウェア」などへの対応はもちろん、ドローンや自動運転の自動車のハッキングなども理論上可能ですが、そういったことにも、弊社が培って開発してきたセキュリティ技術を展開できると考えています。
AIについては、まず検証事業で活用できると考えています。かつては、人海戦術でテストをしてきたのですが、現在はAIがテスト作業の一翼を担ってくれるようになりました。近い将来開発のフェーズでも、これまでの優秀な技術者がAIを活用することにより、「短期で、低コスト」で開発可能な時代が来るのではないか、と考えています。
「トリプルA」が備わった人は魅力的に感じます。「Autonomous(A)=自ら考えて行動できる人」、「Aggressive(A)=積極的に前へ出る人」、「Agility(A)=変化に機敏に対応できる人」という「トリプルA」です。 弊社の特徴は、「ITのほとんどの分野を網羅している」というところです。例えばITの特定分野で技術を身につけると、すぐに別のことをやりたくなる人がいます。普通の会社ならば、そのために転職しなければならないですが、弊社には幅広い分野がありますので、違う技術を求めたとしても、その技術は弊社にあります。7つのカンパニーが存在する弊社の中では、カンパニーごとに「いろいろなチャレンジができる」わけです。弊社は7つのカンパニー制で、社長が7人、社員のキャリアプランを考える人数も7倍ということになります。そうした意味で、ご自身のキャリアアップに対して意識の高い方にとって、弊社はすごく魅力的だと考えています。
環境を変えてみると、ご自身の可能性にチャレンジできる場が数々あるはずです。新しいことにチャレンジできる機会も豊富で、たとえそこで失敗しても、いろいろな機会が与えられます。「『トリプルA』でチャレンジできる会社」――興味を持っていただいた方には、そういった部分をアピールしたいです。