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2025

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    若きサンマルク社長が語る、経営理念浸透の重要性(前編)

    若きサンマルク社長が語る、経営理念浸透の重要性(前編)

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    敏腕証券マンが一転、会社経営者へ――。飲食チェーンの大手として知られる株式会社サンマルクホールディングスの藤川祐樹代表取締役社長は、30代にして人生の舵を大きく切った異色の経歴の持ち主だ。生まれ育った宮城県仙台市から約1,000キロ離れた岡山市の会社トップに就任。一体、何を契機にその選択をしたのか?経営者となった今、どういったことを社員に伝え、どういった人材を発掘しようとしているのか? 若きリーダーの今とこれからについて伺った。

    取引先だった創業社長が60歳で急逝

    エリート証券マンだった藤川社長が、出生地の仙台から約1,000キロも離れた岡山で会社経営をすることになったのは、どういった経緯があったのでしょうか?

    大学卒業後、証券会社に勤務し、当時、主幹事会社の担当者として私が岡山に赴任した際に、先代で創業社長だった故・片山直之と知り合った縁からになります。

    ところがサンマルクを創業した片山は、60歳という若さで逝去してしまいました。2017年に療養していた時のことでしたが、「社長をやってくれないか」とオファーをもらったのがきっかけとなります。その時はお断りしていたのですが、片山が亡くなってから、残った経営陣の方からも誘われたこともあり、「これも何かの縁か…」と思って引き受けることにいたしました。

    成績優秀、証券マンとして出世の道も…

    30歳という若さでの決断だったということですが、証券会社に未練はなかったのでしょうか?

    もちろん金融機関、証券会社の仕事自体はすごく好きでした。最近の若者にありがちな「転職前提」で入ったわけではなく、普通にやっていて楽しかったです。手前味噌ですが、会社の中でも営業成績はそれなりに良かったかと思いますし、出世していくこともできるのではないかと思っていました。

    しかし大きな証券会社で出世したとしても、よほどのことがない限りは、支店長クラスまで行けば良いほうだと思います。それはそれで幸せなことだとは思いましたが、もう少し経営に近いところに携わった方が人生として面白いのでは? と思い、転職することを決めました。まさかこんなに早く社長になると思ってはいなかったのですが(笑)。

    創業社長の夢を継いで

    転職の決め手になったことはありましたか?

    創業者である片山のことを尊敬していた部分が大きかったです。片山は生前、「経常利益100億円」という目標を、何度も口にしていました。その目標を達成するために「店舗数を増やしていく」「従業員数を増やしていく」「いかに会社の理念や商品をお客さまや社員に理解してもらえるか」ということを常々、考えていました。あと、海外進出についても夢を語っていました。何回かチャレンジしたが、なかなかうまくいかなかったという話も聞いていました。60歳という若さでこの世を去りましたが、このような話を生前に聞いていたこともあり「彼が成し遂げられなかったことを代わりに成し遂げたい」という気持ちが湧いてきたということもあります。

    「悪いニュースほど早く対応する」という危機管理

    新卒時代に培った仕事を進めるうえで大切にされていることはありますか?

    証券会社時代に、私としては良かれと思って金融商品をお客さまに買っていただいたのですが、当然ながら株というものには相場があります。そのため、買っていただいた金融商品で損が出てしまったり…ということがあるわけです。そうなると、お客さまに向かう足がどうしても遠のいてしまいます。これは最悪な状況です。そういった時こそ、勇気を持ってお客様のもとに向かい、真摯に耳を傾ける重要性を培いました。

    このような経験をもとに、社内でも「悪いニュースは、一番に報告する」という「Bad News First」を実践しています。物事は何でもそうかもしれませんが、やっぱり「最初のほころび自体は小さかったのに、それを放置することによってどんどん大きくなる」ことがあると日頃から強く感じています。表面的にはネガティブな事象だったかもしれないことを、素早く報告し、対処していくことでポジティブに変換していくという発想です。そういった意味でも「悪いニュースがあった時には素早く対応する」ということがとても重要だと考えています。

    「結果は行動量に比例する」という考え方

    もう1つ、証券会社で学んだことがあります。それは、「結果は行動量に比例する」ということです。自分がある商品を見たときに「これくらいの行動量を取ったらこれくらいの成果はあげられるだろう」と確信に近いものが得られるくらい行動量を増やして物事に取り組んだことにより、そうした感覚値が身に付いたことは、大きな収穫だったと思います。経営もそうですが、「結果が出るかどうか分からないこと」は非常に多いと思っています。それでも、行動量を増やして物事に当たっていけば、あるところから結果が出るようになってきます。このような感覚値が身に付いたことで、仕事を進めていくうちに途中で諦めてはいけない状況かどうか、肌感覚で判断することができるようになったことは非常に大きかったと思います。証券業界は気合と根性の世界とよく言われていましたが(苦笑)、それを通じて「結果は行動量に比例する」ということを入社1年目から感じることができたというのは、社会人として成長するために素晴らしい経験だったと思っています。

    就職活動を通じて社会人として「肝が据わった」

    若くしてさまざまな経験をされていますが、就職活動中の経験や学んだことなどがあれば教えていただけますか?

    最近の新卒学生の就職活動は、いわゆる「売り手市場」です。私の時は2009年から2010年だったのですが、2008年にリーマンショックが起こり、金融機関がかなり採用を絞っている頃であり、今とは真逆の状況でしたので、大変だったのを記憶しています。ただ、社会人になってから、この就職活動を通じて「肝が据わった」という感覚を持っています。証券会社時代は、仕事中に電話を置いていたら、とにかく怒られました。そのような環境下において「何かやってみた数に比例する」ということに気づき始めると同時に、就職活動時においても、とにかく行動してみるということを実践していたことに気が付いたのです。言われてやるのではなく、自分で「どうやったら結果(就職)が出るか」ということを必死に考えてやるという経験ができ、それが就職のみならず、就職後のお客様との信頼関係構築という「結果」に繋げられたことで、行動量を増やせば突破口が必ず見つかるという、何があっても動じない「肝の据わり方」が身についてきたのだと思っています。

    今後、会社が向かう方向性は「完全な三角形」

    貴社は外食チェーンの大手として知られていますが、どういった会社を目指し、どういった人材を求めているのでしょうか?

    時代に逆行しているかもしれないのですが、組織としては「完全な三角形」を作りたいと思っています。「フラット」な関係性ではなくて、職制や役割を通じて情報が伝わるようにしたいと考えています。と申しますのも、例えば、新入社員に対して私が直接指示をした場合、指示が伝わるのは早いと思いますが、現場において、どのメンバーに対しても均一に指示した内容が伝わらない可能性があり、最悪の場合、指示命令系統がブレていると捉えられてしまうことにつながりかねません。そういった状況に陥ることは望ましくないと考えているのです。こういった意味から組織は「完全な三角形」であることが、全体最適につながると考えています。

    「最高のひとときを創造する」人材を輩出するために

    令和の時代、外食産業を志望する人が少ない状況は続いています。ただ私は、サンマルクグループを志望して、入社していただいたからには、しっかりと教育したいと思っています。理想的には「自主的に考える社員になって欲しい」ということなのですが、まずは弊社の経営理念である「お客さまにとって、最高のひとときを創造する」ということを「自分ならどう表現するか?」ということを考えて、先輩社員を見よう見真似で表現するところから始めて欲しいと思っています。それができてくると、お客さまから、お褒めの言葉をいただくことがでてくると思います。それを自信にして、さらに「行動量を増やしていく」ことで、理念を自主的に捉え「能動的に動くことができる」社会人としての礎が築かれていくものと確信しています。 もし将来的に、残念ながら弊社から他の競合他社に転職するということであれば、外食業界全体の発展に向けて、快く送り出してあげたいと思っていますが、願わくばワンランク上の役職で転職してもらいたいと思っていますし、そのような人材に育てたいと切に望んでいます。外食業界の人材という点でも「サンマルクグループ出身者には、何を任せても大丈夫」と思ってもらえるような評判を業界の中に打ち立てることができれば本望です。

    https://www.saint-marc-hd.com/

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