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2025

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    ご挨拶 ~執筆にあたって~

    ご挨拶 ~執筆にあたって~

    私が放送業界に身を投じる事になったのは高校時代に当時少し心を寄せていた女性から文化祭でやる芝居に出てほしいということがキッカケでした。

    大学受験の進路について父親と話した時に「大学に行かずに役者になりたい」と言ったら、烈火の如く怒られました。母親が仲裁に入って「大学だけは行きなさい。それでも役者さんになりたいなら、その時考えれば良い」と言ってくれました。それならば、演劇界で人材を輩出している早稲田に入って、劇団に入ろうと思い、「劇団こだま」という演劇サークルに入りました。同時期に入ったのが、現在も俳優として活躍している「佐藤B作」くんでした。福島県出身の彼は、当時西武新宿線の「新井薬師駅」に住んでおり、稽古終わりに毎日のようにその下宿先に行き、夢を語り合いました。

    当時の私は演劇を続けていけばすぐにでもどこかから声のかかるものと甘い考えを持っていましたが、何事も起こらず卒業を迎えることになり、友人は金融や商社などに就職が決まる中、私は演じる側が駄目なら作る側に行こうと思い、就職先を放送メディアに絞りました。

    しかし在京TV局は、縁故関係がなければ試験すら受けられず、それならばラジオにということで、当時唯一学校推薦で受けられた文化放送の入社試験を受けました。ただ、文化放送が四ツ谷にある事以外に何も知らず、四ツ谷駅から大木戸まで探して歩いたんですが見当たらず、やっと着いた社屋は私の想像していた放送局のイメージとはかけ離れていて、驚いたものです。その上、入社した後の配属が「報道部」という事で、私の希望していた「制作部」と違って、入社して暫くは悶々としていました。

    ところが、入社した年1970年11月25日に作家の三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊に乱入し、最後は「割腹自決」をするという衝撃的な事件がありました。偶然にもその場に居合わせ、最後の三島の演説を完全録音することになり、以来、社内の私に対する見方が大きく変わりました。

    その後営業部に異動辞令が出た時、私の希望する道と違うということで、当時の部長に「退職願い」を出したところ、「人生に無駄な経験はない」「必ず君の夢の実現に役に立つときが来る。ダマされたと思って行きなさい」と諭され、営業部に行き、その後入社10年にして漸く希望の制作部へ配属になりました。

    最初担当していたのが「高島忠夫さんのワイド」でした。

    高島さんからは最初から何でもできる人はいない。「継続は力だよ」と教えて頂きました。年の離れた若造が「高島さん、一回でいいから電車に乗ってスタジオに来ていただけませんか。そこで見えてくるものがありますから」と生意気な口を聞いたこともありました。その後、月~金のワイド番組を担当することになった時、誰もやっていないようなワイドをやろうと思い、毎日2時間でワンテーマ展開し、パーソナリティに当時無名だった小倉智昭さんを起用したところ、当時の上司から「こんな番組やMCじゃダメだ」と叱責されました。

    土曜日の4時間の生ワイドに伊東四朗さんを起用するといった時にも「ラジオ向きじゃない」と猛反対され、伊東さん本人からも「ラジオは恐い。本名の伊藤輝男が出てしまう」と言われ、当初は口も満足に聞いてもらえませんでした。ただ私は誰も納得するモノはカドの取れた丸いものしかできない。人のやったことがない企画をやりたいと常日頃思っていました。後になって、前日にネタを仕込まない2時間生番組を企画した時もスタッフも含めて全員から「こんな番組出来ない」と総スカンでした。勿論リスクはありますが、成功した時に得るものは大きい。この信念は今も変わりません。

    経営者になってからも自分がやるべき事だと思ったら覚悟と責任をもってやってきたつもりです。

    「AMラジオのFM化」、インターネットを使って再送信する「ラジコ」も、ラジオの将来にとって絶対必要だという信念から多くの困難もありましたが、完結できました。

    その上で私自身「権力は腐敗する」という信念を持っており、社長10年で自分自身の退任を決めました。

    インターネットの普及でメディアの役割や重要性が大きく変化していく中で「次世代のラジオ」がどこに行くのか、新しい世代に未来を託して見守っていきたいと思います。

    #三木明博#文化放送#radiko#ラジコ#ワイドFM

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