新サービスを生み出す源泉は“社員発”──変化に強...
SHARE
「挑戦者の事業成長パートナーへ」――マクアケ社長が描く、PDGサイクルと流通市場の「新しい勝ちパターン」
ビジョナリー編集部 2026/01/07
大学時代、父の言葉と社会現象化した「IT起業家ブーム」に影響を受け、経営者を志した株式会社マクアケ代表取締役社長・中山亮太郎氏。創業から時を経て、同社は今、「クラウドファンディング」という言葉の枠を超え、挑戦者の事業成長を根底から支えるパートナーへと進化しようとしている。その進化の裏には、若き日の挫折から得た教訓、そして独自の「フェアウェイ理論」に基づく経営哲学がある。ユニクロ・無印良品の成功モデルを参考に、流通市場の 「新しいゲームチェンジ」 を仕掛ける同氏のビジョンと、次世代リーダーへ託す熱いメッセージを聞いた。
「生まれたからには何か残しなさい」――「IT起業家ブーム」が後押しした起業家への志
新卒の頃から社長になりたかったという記事を拝見しました。いつ頃から起業を志されたのでしょうか。
大学の時に父から「生まれたからには何か残しなさい」と言われたのがきっかけです。たまたま父も祖父も会社を作った人間で、みんな会社を作っている家系でした。自分も会社を作って何かを残したいという想いが理由の一つです。
ちょうど、当時は 「IT起業家ブーム」 という時期でした。それまでの「青年実業家」が「起業家」と呼ばれ始めて、メディアを賑わせていた。就職活動の時期にそうした人たちをモチーフにしたドラマがゴールデンタイムでやっていたことなどもあり、理屈なく起業家にかっこよさを感じていたのだと思います。父の影響と社会からの影響がちょうど合致したタイミングでした。
そこから逆算して就職活動を開始して、自分で起業できないかということも模索しましたが、当時の私はまだ実力不足なのは明らかだと感じていたので、会社に入って修業したいと考えました。そこで一番実践を通じて修業ができそうなところを選ぼうとして、サイバーエージェントへの入社を決めたんです。当時のサイバーエージェントの社長の藤田晋さんと最初の面談で「何やりたいの?」と聞かれて「社長になりたいです」と答えたら、「じゃあ社長室」と言われ、最初は社長の運転手をさせてもらいました。車中で様々な話ができたのは非常に貴重な時間だったと思います 。
「私が一番ワクワクしている」― 全員を突き動かすマクアケのビジョンとフェアウェイ理論
今、どのような想いで会社を率いていらっしゃいますか? また、理想的な経営やチームのあり方はありますか。
とにかく無邪気に、すごい世界になってほしい と思い続けてきました。私自身がイーロン・マスク氏やスティーブ・ジョブズ氏のようなタイプではないですし、当社だけの力で世の中を良くしていけるとも思っていません。すごい世界になっていくためには、それを実現していく挑戦者が必要 だと思っています。そして我われの役目はそうした挑戦者が羽ばたきやすい環境を整えることです。
そうして挑戦の質と量をもっと上げていけば、世の中はもっとすごくなるという未来を思い描きながら、私が一番ワクワクしています 。この想いは、誰にも負けていないと思っています。
理想とする経営には三つの軸があります。一つ目はフェアウェイの合意 です。ゴルフに例えて、「これはOBではなくフェアウェイになっているか」を経営で合意できているかがまずは重要だと思います。そしてフェアウェイをメンバーにどうやって伝え、フェアウェイの中で自由さ をどこまで作れるか、についても意識して、経営層も気付かないような、お客様に喜ばれるものにつながるよう、現場が走りやすい環境を作るようにしています。
とはいえ自由に走りすぎるとバラバラになってしまうので、自由に走る中で生まれたキラッと光るものをどうオーケストレーション していくか。オーケストラのマエストロ(名指揮者)のように、バラバラになりそうな楽器をどうまとめて一つの曲にしていくかということも意識しています。
また、メンバーのそれぞれのウィル(意思) は把握するようにしています。フェアウェイの中で、皆がどういうことをやりたいのかを一人ひとり知っておくと、一番馬力の出る配置 がしやすくなると思っています。そこに一定の裁量権を渡すことで、自由と責任の下、経営層の想像を超えるミラクルショットが出てくることがある。これを引き出せるように人的資本をどう生かしていくかという点にも頭を使っています。
ボーナスでは満たされないメンバーの心。「仕事のビジョン」を突き詰めた挫折の経験
これまでのキャリアの中で、壁や挫折にぶつかったな、という経験はありますか。
若手の時に、とあるプロジェクトリーダーを任せてもらったことがありました。皆にボーナスが出るようにがむしゃらに頑張ったんです。すると、ボーナスは出たのですが、人の心がむしろ離れてしまった ことがありました。
結局皆が求めていたのは、お金を稼ぐことだけではなく、仕事のやりがいだったり、その仕事のビジョンがどこに向かっているのか ということでした。当時の私は若くて猪突猛進なタイプだったため、やりがいやビジョンを示さず走ってしまい、チームに沢山迷惑をかけてしまった。「ボーナスが出ることになりました!」と発表したとき、皆シーンとしていたんです。
お金も重要だが、それだけのために働いているわけじゃない ということに気づけた瞬間でした。そうした経験が今、会社としてビジョンを大切にする姿勢につながっていると思います。
「クラウドファンディング」からの卒業。挑戦者の事業成長パートナーへのギアチェンジ
今後貴社が目指す「挑戦者の事業成長パートナー」という明確な言葉に込めた想いを教えてください。
おそらくクラウドファンディングと言われ続けているうちは、社会の本当のインフラにはなっていない と思っています。誰かが作った「クラウドファンディング」という言葉で認知される限り、本当の意味で当社の提供したい価値が伝わっているとは言えません。
我々は、「Makuake」を通して新商品やサービスのデビューの最大化 という市場は築くことができましたが、逆に言えば、デビューの最大化以外の事業者の悩みに、なかなかお力添えしきれていませんでした。しかし、多くの事業者にヒアリングを重ねるうち、事業者にとっては、デビュー後も売上と利益に繋げていかなければならない 、さらに言うとその売上と収益が持続的に作られていく構造こそ本当のニーズだと分かりました。
そこで、当社はデビューを華々しく最大化させていくだけではなく、挑戦者の事業成長を継続的に伴走できるパートナーになるべきだ という覚悟を決め、ギアをチェンジしたのです。これがちょうど1年くらい前のことです。
ユニクロ・無印に学ぶ。「プラン・デビュー・グロース」のPDGサイクル構想
マクアケが今後のサプライチェーン、消費行動にどんな変革をもたらすとお考えでしょうか。
目指しているのは、流通市場における新しいゲームチェンジャー になることです。
当社は現在、新商品のプラン(企画)からデビュー、グロース(成長)まで継続して支援できるような事業を展開しています。当社はそれを 「PDG(Plan・Debut・Growth)サイクル」 と呼んでいます。Makuakeという新商品デビューの場だけを点で提供するのではなく、面で事業者を支援するために、Makuakeのデータを活用し商品企画の段階からサポートするリサーチサービス 「Makuakeインサイト」 や、デビューした後の商品を継続的に販売する場所として楽天市場やYahoo!ショッピング、TikTok Shop内に 「Makuake STORE」 を展開しています。
これは何を参考にしたかというと、ユニクロさんや無印良品さんなんです。彼らは、顧客のデータや声を直接獲得しながら事業展開する という勝ちパターンを持っています。しかし、多くの中小企業や製販分離した大企業にとってそれは無理難題です。
我われは、どんな会社でも、この「顧客の本音」を吸い上げながら、プランからデビュー、グロースまで一貫してできる 「SPA(製造小売)かつ顧客起点」 へのトランスフォーメーションを実現できるようなサービス提供を目指しています。これを成功させれば、画一的ではない、より世の中の人が求める商品が次々と増えてくるのではないかと思っています。
次世代リーダーへのメッセージ。「勝つための手段」より「本懐」を忘れるな
これから本当に新しいことに挑戦をしようとしている、次世代のリーダーに向けて、今伝えたいメッセージはありますか。
ついつい、今でいうとAIのトレンドに乗っかろうだとか、この市場が伸びているからここにしようみたいな、「手段」に流されがちです。
しかし、会社や事業の 「本懐は何か?」 というのを忘れないようにしてほしいです。もちろん、途中で本懐がアップデートされたり表現が変わることもあって良いと思います。
一方で、『論語と算盤』(渋沢栄一の著書のタイトル)とあるように、本懐だけでもだめだと思うんです。それでは、絵に描いた餅になってしまう。 手段は勝つために絶対大事 です。手段を間違えてうまくいかないことも当然あります。しかし、その手段を取ることに集中するあまり、どういう価値を世の中に提供していきたいのかという本懐 を見失わないよう、常に志として持っておきたいと思っています。


