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2025

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    父の日の起源、知っていますか? 「ベスト・ファーザー賞」が日本社会に与えた、知られざる影響力

    父の日の起源、知っていますか? 「ベスト・ファーザー賞」が日本社会に与えた、知られざる影響力

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    6月の第3日曜日、「父の日」。多くの人が家族に感謝を伝えるこの記念日だが、その文化が日本に根付くきっかけとなったのが、今年で44回目を迎えた「ベスト・ファーザー賞(イエローリボン賞)」であることを知る人は少ないかもしれない。

    「日頃、日の目を見ないお父さんを盛り上げて、感謝の気持ちを示そう」。そんなシンプルな想いから始まったこの活動は、今や社会、そして経済に、計り知れない影響力を持つ一大文化へと成長した。

    今回、父の日の制定と「ベスト・ファーザー賞」を主催する日本ファーザーズ・デイ委員会の八木原 保氏にインタビューを行い、その起源から社会貢献活動、そして受賞をめぐる微笑ましい裏話まで、40年以上にわたる活動の軌跡を伺った。 記事内画像     ▲一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU)理事長 八木原 保氏にお話を伺った。

    「母の日があるのに、なぜ父の日がないのか」――すべては一人の男の想いから始まった

    今から40年以上前の日本には、現在のように「父の日」を祝う習慣はなかった。その状況に一石を投じたのが、当時、日本メンズファッション協会(MFU)の理事長であり、東レ株式会社の社長でもあった伊藤恭一氏だ。

    八木原氏「1980年、伊藤理事長がニューヨークの国際会議に出席した際、アメリカで『ファザーズ・デー』が国民的な行事として定着していることを知りました。聞けば、アメリカでは牧師教会が制定した母の日が先にあり、『父の日がないのはおかしい』という声から生まれたものだといいます。その話に感銘を受けた伊藤理事長は帰国後、すぐに理事会を招集し、『日本にも父の日を』と提唱しました。こうしてMFUが母体となり、『日本ファーザーズ・デイ』が結成されたのです」 記事内画像      ▲「父の日を!」と訴えたジョン・ブルース・ドット夫人(中央)と、そのお父さんのウイリアム・J・スマート氏(左)。時のアメリカ大統領、第28代ウィルソン大統領(右)。

    この活動が起点となり、「6月の第3日曜日」は父の日として日本中に浸透。今では誰もが知る記念日へと成長を遂げた。

    プレゼントはネクタイから多様化へ、社会に与えた莫大な経済効果

    父の日が文化として定着したことは、社会に大きな経済効果をもたらした。

    八木原氏「百貨店や量販店はもちろん、花業界など、あらゆる業界が父の日に合わせた催しを行っています。これは莫大な経済効果を生んでいるはずです。もともと『ファーザーズ・デイ』の商標権はマークを中心に当協会が持っておりますが、この活動が経済の活性化にも繋がっていることは、非常に意義深いと考えています」

    活動が始まった当初、父の日のプレゼントの象徴といえば「ネクタイ」だったという。 記事内画像     ▲父の日と言えばネクタイだった。ここにも、MFUの販促ツールが生かされている。

    八木原氏「昔は父の日のプレゼントといえば、ほとんどがネクタイでした。しかし、クールビズが浸透するなど時代の変化と共にネクタイの需要自体が減り、今ではプレゼントも多様化しています。食べ物でも飲み物でも、形は何であれ、年に一度、お父さんへ感謝の気持ちを示すきっかけになることが何より大切なのです」

    ただの表彰ではない、「社会貢献」という大きな柱

    日本ファーザーズ・デイ委員会の活動は、単なるお祝い事にとどまらない。その根底には「社会貢献」という揺るぎない理念がある。

    八木原氏「我われの活動は、有名なタレントを集めて華やかなイベントを行うだけ、と見られることもありますが、そうではありません。社会貢献を大きな柱に据え、経済産業省とも連携しながら、SDGsや持続可能な社会の実現といったテーマにも取り組んでいます」

    その象徴的な活動が、「一般財団法人あしなが育英会」への長年にわたる支援だ。 記事内画像 ▲八木原氏(左)と一般財団法人あしなが育英会理事・事務局長の関 亨江さん(右)。

    八木原氏「数ある団体の中でも、あしなが育英会さんの活動は特に社会的意義が深いと考え、私の方からお声がけし、支援を始めさせていただきました。もう30年以上になります。企業の周年記念などで単発の寄付はあっても、これだけ長期間、毎年定期的に支援を続けている例は他にはないと聞いています。コロナ禍でも途切れることなく続けたことで、非常に強い信頼関係が築けていると感じます」

    作文や絵のコンクールなども含め、その活動は広範囲にわたる。八木原氏は「年間で行う5つの行事の中でも、ベスト・ファーザー賞が最も奥行きが深く、社会的な影響力が大きい」と胸を張る。

    「うちのお父さんが?」受賞をめぐる、微笑ましい舞台裏

    毎年、各界で活躍する著名人が選ばれるベスト・ファーザー賞。しかし、その選出の裏には、家族ならではの微笑ましいエピソードもあるようだ。

    八木原氏「以前、渋谷区長の長谷部健さんを選んだ時のことですが、彼は『嬉しいけれど、まずは家族の許可を取らせてほしい』と言っていました(笑)。やはり、外での格好良い姿とは裏腹に、家ではだらしない姿も見せているわけですから、『うちのお父さんがベスト・ファーザーなんてとんでもない』と思うご家族も中にはいらっしゃるのかもしれませんね」

    一方で、この受賞が家族の絆を再確認するきっかけになることも多い。

    八木原氏「ある経営者の方は、この受賞を機に娘さんから『うちのお父さんはすごいんだ』と改めて尊敬の言葉をかけられたそうです。それが自信となり、『これを機に自分をもっと前面に出して会社のPRを強化し、上場を目指す』と力強く語っていました。そういったお話を聞くと、この賞を選んで本当に良かったと心から思います」

    普段、何気なく過ごしている「父の日」。その一日が、父親への感謝を伝える大切なきっかけであると同時に、日本経済の活性化や社会貢献にも繋がっている。来年の父の日は、そんな賞の歴史に少しだけ思いを馳せてみるのもいいかもしれない。

     
    ベスト・ファーザー イエローリボン賞を主催するMFU理事長 八木原 保氏の半生を綴った連載記事「原石からダイヤへ」はこちら

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