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9/30(火)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/09/16
6月の第3日曜日「父の日」を前に、日本を代表する“素敵なお父さん”を称える「第44回 ベスト・ファーザー イエローリボン賞」の発表授賞式が、2025年6月4日(水)に開催された。主催は一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU)。
本年は、政治、経済、芸能、スポーツの各界から、現代の父親像を体現する5名が受賞。社会が目まぐるしく変化する中で、「父親」の役割や理想像もまた、多様化の一途をたどっている。授賞式での彼らの言葉からは、仕事での活躍の裏にある、家族への深い愛情やユニークな子育て論、そしてパートナーとの絆が見えてきた。本記事では、その模様を詳報する。
授賞式は、主催者を代表し、MFUの八木原 保理事長の挨拶で幕を開けた。八木原理事長は、新型コロナウイルスの影響が落ち着き、インバウンド需要が回復基調にある一方で、物価高や緊迫する国際情勢など、先行き不透明な社会状況に言及された。
▲一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU)理事長の八木原 保氏。
また、このような時代だからこそ、MFUは「社会貢献」「SDGsの実践」「平和の希求」を運営の根幹に据えていると強調。「こういう時だからこそ、一人でも多くの皆さんに夢と勇気、元気と希望、そしてワクワクドキドキするような感情を持ってもらいたい。日本の国を、業界を元気にしていきたい」と力強く述べ、30数年にわたり続ける「あしなが育英会」へのチャリティ活動にも触れ、社会全体で子どもたちを支える重要性を訴えた。
続いて登壇した経済産業大臣政務官の加藤明良氏は、本賞が日本の「父の日」文化の普及定着に果たしてきた大きな役割を称賛。「父親への感謝の気持ちを形にして伝える機運が醸成され、現在では多くの家庭で父の日が親しまれる行事となった」と述べた。
また、日本のファッション産業に触れ、「全国の産地で作るテキスタイルは、高い技術と品質により世界中で高い評価を得ている」とそのポテンシャルを強調。経済産業省として、次代を担うブランドやデザイナーを力強く支援していく方針を示すとともに、開催中の大阪・関西万博への来場を呼びかけた。
授賞式のハイライトである受賞者の発表では、選考基準として「明るく楽しい家庭づくり」「子どもたちの良き理解者」「社会福祉への貢献」などが挙げられた。様々な意味で「素敵なお父さん」と呼べる5名が、トロフィーと、”サンリッチひまわり”の花束を手に、喜びと家族への想いを語った。
▲政治部門で受賞された埼玉県知事の大野元裕氏。
政治部門で受賞したのは、埼玉県知事の大野元裕氏。「日本で最も素晴らしい父親と言われた瞬間、逃げ出したくなりました」と、知事として賞を「渡す」ことはあっても「もらう」ことへの照れをユーモアたっぷりに語った。
中東に13年間駐在した経験を持ち、イラク戦争下で「親の都合で子どもたちを戦争に巻き込んでしまう、ひどい父親だった」と、当時の苦しい胸の内を明かす。一方で、砂漠で寝袋にくるまり、家族で流れ星を見た美しい思い出も語り、公務の裏にある父親としての顔をのぞかせた。
知事としては、「子ども真ん中社会」の実現を掲げ、特に「小1の壁」の解消に注力していると説明。保育園から小学校に上がる際に、働き方を変えざるを得ない親たちを支援するため、県独自の補助金制度を創設し、市町村の取り組みを後押ししていると語り、リーダーとしての強い意志を示した。
▲経済部門で受賞された、牛乳石鹸共進社社長の宮崎悌二氏。
経済部門では、牛乳石鹸共進社株式会社の5代目社長である宮崎悌二氏が受賞。「妻に開口一番『なんであんたが』と言われましたし、私も『なんで俺が』と思いました」と、受賞への驚きを素直に語った。
出張が多く、家を空けがちな生活を省み、「これを機に、もう少し家に帰って子どもと接する時間を作りたい」と決意を新たにした。
3年前に他界した4代目社長である父親については、「父を助けたい一心で」家業に入ったと回顧。共に働く中で「これまで見たことのない父親の姿を見ることができ、大変参考になった」と語り、父への敬意をにじませた。5歳の息子については、イベントで撮影したという銭湯の番台でのツーショット写真などを披露し、「パパの職場が見れて嬉しかったんだと思います」と優しい父親の表情を見せた。
▲芸能部門で受賞された、歌手・タレントのDAIGOさん。
芸能部門の受賞者は、歌手でタレントのDAIGOさん。受賞の喜びを「分かりやすく言わせていただきますと、MAKです。身に余る光栄」とお馴染みの“DAI語”で表現し、会場を沸かせた。
現在、5歳と1歳の二児の父親として子育てに邁進中。女優である妻が多忙な時には、料理番組での経験を活かし、手作り弁当や夕食で家庭を支えているという。その様子を写真で紹介し、「子どもが食べやすいものを日々考えながら作っている」と語った。
家庭での役割分担については、「どちらかがやるというより、阿吽(あうん)の呼吸で」と説明。朝寝坊してしまった際には、自身が弁当を作り、妻が子どもたちの朝食を担当するなど、夫婦で支え合う“チーム”としての子育てを実践している。昨夜も、子どもの夜泣きに気づき、ミルクを作って寝かしつけたといい、「抱っこしながら片手でミルクを作れるようになりました」と、すっかり「ベテランパパ」の風格を漂わせた。
▲スポーツ部門で受賞された、青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督の原晋氏。
スポーツ部門は、箱根駅伝で同大学を8度の総合優勝に導いた、青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督の原晋氏が受賞。受賞の喜びを、駅伝さながらの作戦名で「“ひまわり大作戦”です。子どもたちをスクスクと天高く成長させ、皆を明るく照らす、そんな子育てができるお父さんになりたい」と表現した。
自身と妻の美穂さんとの間に子どもはいないが、「今現在、53名の部員、そして町田寮では41名の“子どもたち”と同じ屋根の下で暮らしています。賑やかな大家族です」と語る。学生たちとは恋愛相談から就職相談まで、親代わりにフランクに接し、その関係性を「損得勘定のない無償の愛」と表現した。
指導の根幹にあるのは、選手自身が考え、目標を設定し、向き合う姿勢をサポートする「原メソッド」だ。また、家庭では「監督の監督は原美穂」と、寮母としてチームを支える妻・美穂さんへの絶大な信頼と感謝を口にする。今年の箱根駅伝優勝後、初めて妻をゴールエリアに招き入れ、選手たちが胴上げした感動的なシーンを振り返り、「こうして受賞できたのは、妻・原美穂と学生あってのこと」と、改めて深い絆を語った。
▲特別賞を受賞された、株式会社アルプロンの代表取締役、坂本正俊氏。
特別賞に輝いたのは、プロテインメーカー・株式会社アルプロンの代表取締役、坂本正俊氏。「私こそ“世界一の子煩悩”という自負がありますので、よくぞ私を発掘していただいた」と、自信に満ちたスピーチで会場の笑いを誘った。
子どもの「体験格差」という社会問題の解決に向け、経済的な理由でスポーツ活動に困難を抱える子どもたちへ、プロテインや活動資金を援助するプロジェクトを立ち上げたことを報告。
経営者としての信念の根幹には「家族関係」があると断言。「中国の古典『大学』にも、組織の最小単位である家庭を治められない者が、どうして国家を束ねて国民を幸せにできるだろうか、と書かれている」と引用し、「社員や社会を幸せにするためにも、まず家族を笑顔にすることが一番大事な仕事」と熱弁。妻への深い感謝と共に、経営者としての力強い父親像を示した。
今年のベスト・ファーザー賞は、子育てへの向き合い方や家族の形が、より自由で多彩になっていることを改めて感じさせるものとなった。受賞者たちの言葉に共通していたのは、それぞれに合ったスタイルで家族と向き合い、深い愛情を注ぐ姿だった。父の日を前に、改めて家族の絆について考える、良いきっかけとなった授賞式であった。
ベスト・ファーザー イエローリボン賞を主催するMFU理事長 八木原 保氏の半生を綴った連載記事「原石からダイヤへ」はこちら