
地球を未来に残すための挑戦(後編)
ビジョナリー編集部 2025/04/24
4/28(月)
2025年
大西 洋 2025/04/20
2015年、三越伊勢丹は”this is japan.”という企業メッセージを掲げた。
三越伊勢丹グループでは、2011年から「JAPAN SENSES」と題して、日本の伝統・技・美意識が作り出す価値を再認識し、日本独自の文化を世界に発信するという活動をしてきたのだが、これをさらに深化させたのが”this is japan.”である。我われの意思と行動基盤、「心構え」を表す言葉として、品揃え、環境、おもてなし等あらゆる要素の中心に”this is japan.”をおき、日本文化の多様性と奥深さを発信していく、というものだ。
参考:三越伊勢丹グループ当時の企業メッセージ "this is japan."
このプロジェクトを始めたきっかけは、日本の情勢に危機感を覚えていたからである。日本社会は少子高齢化の進行に加え、経済規模や国際的な立ち位置にも変化が見え始めていました。人口減少が続くなかで、日本の持つ魅力や可能性を今こそ見つめ直し、再び輝かせていく必要がある。そうした思いが、“this is japan.”の始動に繋がったのだ。
「もはや日本は先進国も中進国でもなく、後進国である。未来のために、何とかしなくてはいけない。」という想いがあった。
経済後退の原因は、やはり東京への一極集中なのではないかと考えた。仕事で地方を訪れると、街が廃れていく光景を目の当たりにした。地方の百貨店はどこも厳しい経営状況であることは言うまでもない。
しかし一方で、地方にはまだ埋もれたままの特産品や優れた技術、地域資源が数多く存在していた。これこそ、日本が世界に誇れるものである。「地方を活性化させることが、日本の未来へ繋がる」と確信した。
日本は島国でありながら、その地理的な特性を十分に活かしきれていないと感じてきた。たとえば、海を活用した都市開発や流通インフラの整備は限られており、積極的な海洋開発を進めるアメリカとは対照的である。その背景には、日本特有の国民性や制度設計、地域間連携の在り方が影響しているのかもしれない。
政府は企業の地方移転を促進するため、助成金や税制優遇といった施策を打ち出しているが、実際にその動きが広がっているとは言い難い。文化庁の京都移転も、今のところ十分な成果が見えているとは言えないのが現状である。
だからこそ、百貨店としてできることは何かを真剣に考えた。その答えのひとつが、47都道府県それぞれと丁寧に向き合い、地域が抱える課題を汲み取り、その価値や魅力を的確に発信していくことである。百貨店だからこそ担える役割があると信じている。
当初は、営業本部の方針として”this is japan.”という標語が掲げられる予定であった。しかし私は、1部署に留めるのではなく、会社として大々的に発信していくべきだと考え、経営理念に掲げるべきだと主張した。
日本を再び豊かな国にするという壮大なプロジェクトである。先進国として日本が再び名を連ねるには、どれほどの時間がかかるだろうか。しかし、一つひとつ取り組んでいかなければ、未来はないのだ。
そして現在に至るまで、私は「地方創生」を推進している。