もはや仕事の「第2言語」か。3,200句の絵文字...
SHARE
インキが変われば、世界が変わる。日本発「ボタニカルインキ」が欧米・アジアのパッケージを塗り替える日
ビジョナリー編集部 2026/04/21
「環境のサカタ」が仕掛ける印刷の常識破壊、植物由来の「ボタニカルインキ」が変える未来
溶媒から“固形成分”へ、30年越しのパラダイムシフト
SDGsの達成が社会共通のゴールとなった今、ビジネスにおいて“環境配慮”はもはや付加価値ではなく、外すことのできない「スタンダード」となりつつある。こうした潮流の中で、印刷業界から高い注目を集めているのがサカタインクスグループの「ボタニカルインキ」だ。
同グループの歩みは驚くほど早い。まだ環境意識が現在ほど高くなかった1973年に「環境部」を設置。大豆油を使用した植物油インキなど、長年にわたり業界の環境対応をリードしてきた。かつての環境配慮型インキといえば、成分を分散させるための“溶媒”を植物油やトルエンフリーなどの環境対応成分に置き換える手法が主流だったという。同社も30年以上にわたり、パッケージ用や情報メディア用など、さまざまな分野でこの手法による製品展開を続けてきた。
転換期となったのは2016年。同社はこれまでの常識を覆す新たなコンセプトを打ち出す。それが、印刷物に塗工された後に残るインキの“固形成分”そのものに着目し、その一部を植物由来材料に置き換えるという挑戦だった。まずはフィルムパッケージ用のグラビアインキから着手し、独自ブランド「ボタニカルインキ」としての展開がスタートしたのである。
「環境のサカタ」として培ってきた技術力は、水性インキやノントルエン・ノンMEKインキなどの開発を通じ、すでに世界規模で高く評価されている。その知見が、この新たなインキの誕生を支えているといえるだろう。
「植物」の力をインキに宿す、独自の定義
海洋プラスチック問題やマイクロプラスチックへの懸念から、プラスチック製品のバイオマス化は世界的なトレンドだ。その一翼を担う「ボタニカルインキ」の最大の特徴は、原料をバイオマス由来、それも「植物由来材料」に限定している点にある。
同社はこの独自ブランドの技術的な定義を、「インキ固形分中に10%以上の植物由来成分を含有すること」と定めている。樹木や種子などから得られる材料を使用していることから、「植物の」を意味する「ボタニカル(Botanical)」という名称を採用したという。
なぜ植物由来なのか。そこには、CO2(二酸化炭素)排出量削減への明確なロジックがある。植物は成長過程で大気中のCO2を吸収する。そのため、インキに含まれる固形分の一部を従来の石油由来から植物由来に変えることで、印刷物を焼却した際に発生するCO2と植物が吸収したCO2を相殺できるという「カーボンオフセット」の考え方が適用されるのだ。
また、ビジネスの現場でこの名称が選ばれた背景には、消費者への浸透度も関係している。「ボタニカル」という言葉は、今やファッションやシャンプー、飲料など、あらゆるライフスタイル領域で馴染みのあるものとなった。
なお、「ボタニカルインキ」の名称とロゴマークは商標登録されており、このインキを使用した印刷物にはロゴマークを付与できる。環境配慮が求められる現代において、パッケージに「ボタニカルインキマーク」が掲示されていることは、消費者に対する強力なアピール材料となっているようだ。
コンビニからファストフードまで、広がる「ボタニカル」の輪
サカタインクスでは、多様な用途に対応できるインキラインアップを揃えており、すでに食料品を中心とした多くの包装材や容器で採用が進んでいる。
2015年のSDGs採択以降、消費者の環境意識が劇的に変化する中で、同社の「ボタニカルインキ」は、その環境性能と「ボタニカル」という言葉が持つクリーンな訴求力が相まって、まずはコンビニエンスストアのプライベートブランド商品で採用された。
これを皮切りに、採用の波は一気に加速する。
- 大手メーカーの食品パッケージ
- 衛生用品
- ファストフードチェーンの紙コップや包み紙
- お持ち帰り用の紙袋
現在では、私たちの日常生活のいたるところで同社の技術が活用されている。さらに、その領域はフィルム包装にとどまらず、段ボール用のフレキソインキ、さらには産業用UVインクジェットインキへと、着実に裾野を広げている。
国内7割のシェアから、世界基準のサステナブルへ
現在、国内のフィルムパッケージ向けにおけるボタニカルインキシリーズの販売率は、およそ7割にまで達しているという。印刷会社だけでなく、ブランドオーナーや一般消費者にもその存在は定着しつつある。
サカタインクスは環境規制の厳しい欧州を含む海外市場においても、ボタニカルインキシリーズをはじめとした環境配慮型製品は高く評価されており、グローバルブランドオーナーの多様なニーズに応えるべく、グループ全体で連携し、期待を超える高付加価値の製品・サービスを提供することで、 サカタインクスブランドの確立をさらに図っていく構えだ。
同時に、研究開発の手を緩めることもない。すでに「環境のサカタ」としてのブランドを日本国内で確立しているなかで、2030年には、国内向けパッケージ用インキをすべてボタニカルインキに切り替える取り組みに挑んでいる。サステナブルな社会の実現に向け、同社の主軸製品としてのブラッシュアップは、これからも続いていく。


