なぜ今も「正一位」は授けられるのか 1400年続...
SHARE
「ぬい活」市場が拡大する理由──450億円規模に成長した新消費トレンド
ビジョナリー編集部 2025/12/19
ぬいぐるみを持ち歩き、写真を撮り、旅やホテルにも一緒に出かける──そんな「ぬい活」が、いま静かな広がりを見せています。
一見すると子ども向けの文化に思えるかもしれませんが、その背景には、忙しい日常の中で心を落ち着かせたいという思いや、自分らしさを大切にしたいという気持ちが、そっと重なっています。
SNSをきっかけに若者世代から広まったこの文化は、やがて30代・40代、さらにはシニア層へと浸透し、単なるブームを超えたひとつのライフスタイルとして定着しつつあります。
なぜ今、人はぬいぐるみに惹かれ、共に時間を過ごすようになったのでしょうか。本記事では、「ぬい活」が生まれた背景や広がりの理由、市場やサービスの動きまでを通して、その魅力と現在地を紐解いていきます。
ぬい活とは?──「自己表現」と「癒し」の新しい形
「ぬい活」とは、「ぬいぐるみ活動」の略で、ぬいぐるみやドール、フィギュアなどを日常的に持ち歩き、景色や料理と一緒に写真を撮る。SNSに投稿して共感を集めたり、推しキャラのグッズとして一体感を楽しむ──そんな一連の行動が「ぬい活」と呼ばれています。
もともとアニメファンやアイドルファンの間で楽しまれていた文化ですが、2024年から2025年にかけて一気に認知度が高まりました。日本玩具協会によると、2024年度のぬいぐるみ市場は前年比の115.3%と大幅に拡大。今や「ぬい活」は、Z世代だけでなく、30代・40代、さらにはシニア層にも広がりを見せています。
若者の「推し活」から始まった新たな消費スタイル
「推し活」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。好きなアイドルやキャラクター、アーティストへの思いを表現し、応援する活動です。その延長線上で生まれたのが「ぬい活」です。お気に入りのキャラクターや“推し”を模したぬいぐるみをバッグに下げたり、専用のポーチに入れて持ち歩いたりするのが一般的なスタイルです。
たとえば、香港のアーティスト・カシン・ロン氏が生み出した「ラブブ(LABUBU)」は、Z世代女性を中心に爆発的な人気を誇ります。BLACKPINKのLISAさんが愛用していることや、海外セレブの間でも話題になったことで、ラブブのぬいぐるみは完売が続出。抽選や即完売が当たり前となり、「欲しいけど手に入らない」現象がさらに熱狂を呼んでいます。
「ファッションアイテム」としての進化
「ぬいぐるみ=子どものおもちゃ」というイメージは、今や過去のものです。
ぬいぐるみをバッグに付けることは、若者の間で“最先端のおしゃれ”となっています。特にトレンド感のあるキャラクターや限定品を身に着けることで、個性や自分の趣味をアピールできるのです。
こうした流れに対応し、ファッションブランドや雑貨チェーンも「ぬい活」専用のバッグやポーチ、アクセサリーを次々と展開。「推し活用バッグ」には透明ポケットが付いていて、ぬいぐるみが可愛く見えるようにデザインされています。さらには、ぬいぐるみ専用の洋服や小物も人気です。手芸チェーンでは「ぬい用ステージ」や撮影グッズが売れ筋アイテムになっています。
「癒し」と「分身」──大人にも広がる理由
なぜ、ここまで「ぬい活」が広がったのでしょうか。その大きな理由のひとつが、「癒し」と「自己表現」の両立です。
忙しい毎日やストレス社会の中、ぬいぐるみは“心の支え”としての役割を果たします。外出先でも、観光地でも、カフェでも、ぬいぐるみと一緒にいることで安心感が得られ、自分の気持ちを落ち着かせることができるのです。実際に、ぬいぐるみを通じて「心の中で会話をする」「思い出を共有する」といった声も多く、子どもの頃のぬいぐるみとは少し違う、大人ならではの愛着が生まれています。
また、SNS時代ならではの新しい使われ方もあります。「自撮り」を避けたい人や、プライバシーを守りたい人の間では、ぬいぐるみが“分身”の役割を担っています。自分の代わりに旅先やグルメの写真にぬいぐるみを登場させることで、よりパーソナルで温かみのある投稿ができる──そんな新しいコミュニケーションの形が定着しつつあるのです。
サービス業界・観光業界も「ぬい活」市場に参入
「ぬい活」は、単なる趣味や個人の楽しみに留まりません。その経済効果や話題性に着目し、企業やサービス業界も新たな市場として参入を始めています。
例えば、ホテルチェーンの東横インは「ぬいと一緒にお泊り会プラン」を展開しています。宿泊客のぬいぐるみ用にベッドやガウンを用意し、一緒に旅の思い出を写真に収めることができるサービスです。開始後わずか3週間で予約300件を超える人気ぶり。利用者層も20代から40代まで幅広く、イベントや旅行時の“相棒”としてぬいぐるみを連れてくる人が増えている現象を裏付けています。
さらに驚くべきは「ぬいぐるみ保育園」の存在です。ぬいぐるみを預かり、先生役がストーリー仕立てで“園生活”を楽しませ、後日写真や連絡帳でその様子を報告するというサービス。中には60歳以上の男性が「子育ての代わり」として利用するケースもあり、世代を超えた深い愛着と癒しの価値が見て取れます。
社会現象の裏側──マナーやルールの課題も
一方で、「ぬい活」が広まるにつれて社会的な課題も浮かび上がっています。
飲食店や観光地で無断でぬいぐるみを並べて撮影したり、長時間場所を占拠してしまうケースが目立つようになりました。特にInstagramやX(旧Twitter)などSNSへの“映え”を重視するあまり、マナー違反が問題視されることもあります。店の衛生面や他の客への配慮が求められるシーンも増え、施設によってはぬいぐるみやドールの持ち込みや撮影を禁止する動きも出てきています。
このようなトラブルを防ぐためには、「マナーとルールを守る」という基本を忘れないことが大切です。一部のマナー違反が目立つことで、せっかく広がった“ぬい活”文化が肩身の狭いものにならないよう、社会全体で適切なガイドライン作りが求められています。
ぬい活は周囲と対立するものではなく、理解と配慮によって共存できる文化です。楽しむ側・迎える側の双方が心地よい形を模索していくことが、成熟したブームへの第一歩と言えるでしょう。
ぬいぐるみ市場は「450億円規模」──なぜ今、拡大が続くのか
ぬいぐるみ市場は現在約450億円規模と推計され、今後もIP(知的財産)産業やキャラクタービジネスの成長に連動して拡大が期待されています。
ぬいぐるみは、推し活で人気のアクリルスタンドに比べて大量生産が可能で、原価の割に単価が高く、例えばラブブなどはコラボ版は単価1万円程度のものもあり、企業にとっても収益性の高い商品です。さらに、日本の高品質なぬいぐるみは海外でも高い評価を受けており、グローバル市場への展開も視野に入っています。
「一過性の流行」で終わらせないためには、ぬいぐるみやぬい活が持つ“癒し”や“自己表現”といった価値を、より多様な形で発信し続ける必要があるでしょう。
まとめ
「ぬい活」は、単なるキャラクターグッズの消費を超え、人と人、人とモノをつなぐ新しいコミュニケーション、そして“自分らしさ”や“安心”を求める現代人の心の拠り所になりつつあります。
小さなぬいぐるみをバッグに忍ばせて街を歩いてみると、そこには新しい発見や、同じ趣味の仲間との出会いが待っているかもしれません。
ルールやマナーを守りつつ、自分らしい「ぬい活」を、ぜひ日常の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか。


