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6/21(土)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/06/19
1960年創業のフジッコ株式会社(本社:神戸市中央区)が掲げる企業理念は、「自然の恵みに感謝し 美味しさを革新しつづけ 全ての人々を元気で幸せにする 健康創造企業を目指します」というもの。たゆみない研究開発と時代の先を見据えた商品づくりで、伝統的な日本の食文化を守りつつ、世界の長寿食、さらにその先を目指し、安心・安全かつ新たな発見をもたらす食生活の提案を続けてきた同社は、スローガンとして「おいしさ、けんこう、つぎつぎ、わくわく。」を掲げている。
そんなフジッコが2009年から継続してきたのが、「丹波黒黒豆」をテーマにした独自の食育活動だ。
この食育活動は、フジッコの商品「丹波黒黒豆」を育てて収穫する体験ができるというプログラムである。
「自分たちが大事にしている商品の価値を真摯に伝え、子どもたちを喜ばせたい」
このプログラムの運営を3年前から託されたのが、元海上自衛官という異色の経歴を持つ、コア事業本部の豊田麻衣子氏である。社内複業制度を活用して広報室も兼務し、その企画力と実行力で丹波黒の食育活動を牽引する存在だ。
「この活動は、2009年から承継されてきた食育活動ですが、私が担当者になった次の年に、内容を一から見直し、現在の『丹波黒育成体験プログラム』へと名称も改めました。」と豊田氏。半年の月日をかけ、丹波黒の苗植えから収穫までの農業体験と、日本の文化やおせち料理を学ぶ会とを組み合わせた、全4回の「体験型プログラム」を設計した。今年度は14組28名が参加している。
プログラムの狙いは、ただ豆を育てるだけではない。企業や商品、生産地への「共感・愛着・信頼」を育むこと、そして子どもたちの感性を刺激する工夫を盛り込むことが重要だという。
豊田氏は、「普段の生活では決して見ることができない“ものづくり”の現場を子どもたちに伝えること、大地や水、風に触れながら、五感を使って丹波黒を味わってもらうことを大事にしています」と語る。「臨場感あふれる、息をのむような作業工程を見ることや、どんな人がどんな想いで商品を生産しているのかを知ることは、子どもたちにとって、貴重な体験になることは間違いありません」。
実際、6月初旬の「苗植え体験」、8月の「手入れ体験」(今年度は酷暑のため中止)、10月の「収穫体験」を終える頃には、子どもたちの中で“丹波篠山”が「特別な場所」となっているそうだ。
12月には、穫れたての新豆を使った炊き方を学び、お正月の伝統に触れながら、一足早くおせち料理をいただく場も設けられる。おせちの具材一つひとつの由来について語り合いながら、穏やかな時間が流れる――まさに「フジッコらしさ」が体現されたプログラムだ。
「丹波黒育成体験プログラム」には、株式会社小田垣商店や株式会社神戸ポートピアホテルが協力。今年度からは旭化成ホームプロダクツ株式会社も加わり、それぞれの強みを生かしながらプログラムを進化させている。
「フジッコだけで実施するのではなく、想いや志を同じくする仲間と協力してプログラムを創り上げることで、より味わい深いプログラムになるのではないか、また、丹波篠山という地域や、それぞれの組織の魅力を発信することができるのではないかと考えました」と豊田氏は語る。無理を承知で多様なアイデア実現のために協力を仰いでいるという。
プログラムの現場を支える小田垣商店の山本哲氏は、「僕はこれまで、丹波篠山の気候や土が育む、丹波黒の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと祈りながら、ひたむきに丹波黒に向き合ってきました。参加者の皆さんが土に触れ、トンボやカエルを見てはしゃいだり、嬉しがったりする様子を見たり、このプログラムで提供した「丹波黒おむすび」をきっかけに、豆が食べられるようになったといったお声をいただいたりするたびに、胸が震えています。そして、毎回毎回子どもたちを喜ばせるために、全力でこのプログラムに打ち込むバイタリティあふれる担当の豊田さんに圧倒されつつ、その熱意に賛同し、活動を支援しています」と語る。
また、神戸ポートピアホテルの太田垣奨氏は「このプログラムの面白みは、企業同士が協力し合い、子どもたちを本気で楽しませようとすることにあります。参加している子どもたちのきらきらした眼差しや、僕たちの作ったものをおいしいおいしいと食べてくれる姿に、毎回やる気をもらっています」と話す。
「これからの時代『いい商品を作れば売れる』という古来からの戦法では、生き残っていけないという危機感を持っています。だからこそ、食育活動などを通じて、我われが大事にしている価値や想いを参加者の皆さまにお伝えし、フジッコを心から応援してくれる『仲間』や『ファン』を増やしていく必要性を強く感じています。ファンの口コミと伝播力ほど、心強いものはありません」と豊田氏は言う。
今年もまた、「丹波黒育成体験プログラム」が、新たな参加者を迎えてスタートしている。