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2025

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    世界の富裕層も注目。日本発の子供服ブランドが邁進する高付加価値路線の未来

    世界の富裕層も注目。日本発の子供服ブランドが邁進する高付加価値路線の未来

    子供服市場の二極化と「ミキハウス」の挑戦

    子供服業界において、価格の二極化が鮮明になっている。ファストファッション企業の攻勢や新規参入、輸入品の増加により価格競争が激化する一方、少子化を背景に「一人の子供に最良のものを」という高付加価値商品へのニーズもまた、確実に高まっている。

    こうした市場環境の中、メイド・イン・ジャパンのクオリティを武器に、世界中の富裕層から支持を集めているのが日本発の子供服ブランド「ミキハウス」だ。

    去る10月1日(水)から7日(火)にかけて、伊勢丹新宿店で開催されたイベント「JAPAN SENSES」においても、同社の姿勢を象徴するPOP UP SHOPが展開された。

    日本の技術と価値を再定義した「JAPAN SENSES」

    伊勢丹新宿店の「JAPAN SENSES」は、日本の優れた「モノ・コト」を新しい価値として世界へ発信することをコンセプトとしたキャンペーンだ。期間中はアパレルから工芸品に至るまで、日本のものづくりと伝統文化を体現するブランドが軒を連ねた。

    その中で展開されたミキハウスのショップでは、職人の一つ一つ手作業で作るベビーシューズなど、同社がこだわり続けてきた「安心・安全・高品質」なアイテムが並んだ。手間暇を惜しまない日本のものづくりの姿勢は、展示と商品を通じて多くの来場者に伝わったようだ。 記事内画像

    ▲「JAPAN SENSES」ミキハウスPOP UP SHOPの様子:職人の手作業でつくられる、子どもの足の成長を考えたベビーシューズ

    特に注目を集めたのが、同ブランドの最上級プレミアムシリーズ「ミキハウス ゴールドレーベル(以下、ゴールドレーベル)」のコーナーである。

    ここでは、海島綿(かいとうめん)やシルク、カシミヤといった希少素材に徹底してこだわったアイテムが、原材料そのものの展示とともに展開された。 記事内画像

    ▲「JAPAN SENSES」ミキハウスPOP UP SHOPの様子:希少性の高い素材と卓越した日本の技術でつくられた「ゴールドレーベル」

    来場者からは「これほど肌触りが良く、品質の高い子供服は初めて見た」といった声が聞かれ、世界中から訪れた顧客がその価値に共感を示していたという。日本のブランドならではの高付加価値戦略とも言えるこの「ゴールドレーベル」とは、一体どのようなシリーズなのだろうか。

    究極の品質を追求する「ゴールドレーベル」

    ミキハウスは創業以来55年にわたり、子どものことを第一に考えたものづくりを追求してきた。その到達点として2022年に発表されたのが、ゴールドレーベルだ。「最高の品質で本物の商品をお子さまに届ける」という創業当時からの想いを具現化したものだという。

    特筆すべきはその素材選び。人間の肌に近い成分を持つシルク、生後1年未満の仔山羊の産毛のみを使用したベビーカシミヤ、そして「神の繊維」とも呼ばれる希少なビキューナなど、世界最高峰のマテリアルが採用されている。さらに、製造工程においても「メイド・イン・ジャパン」を徹底し、熟練の職人が国内工場で仕上げている。 記事内画像

    ▲極めて希少性が高く、品質を保つために厳重に管理される「神の繊維」ビキューナでつくり上げられるアイテム<ベビーマント¥1,100,000(税込) 子ども用セーター¥968,000(税込)>

    世界の富裕層が認めた価値

    素材と製法に徹底的にこだわった商品は、「わが子のためにとにかく良いものを」と願う顧客層の心をつかんでいる。出産準備として同シリーズの海島綿やシルクのアイテムをまとめて購入するケースや、子どもの成長に合わせてサイズアップのタイミングにリピートする顧客も多いという。 また、海外からの反響も大きい。「以前購入したベビーカシミヤの肌触りが忘れられない」と、再来日の際にわざわざ店舗を訪れる顧客もいるほどだ。

    大量生産ができないため取り扱い店舗は限られるが、ニューヨークのザ・プラザホテル店、ロンドンのハロッズ店、シンガポールのマリーナベイ・サンズ店など、世界の主要都市にある店舗では、王族を含むVIP顧客からの支持を獲得している。 記事内画像

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    ▲ニューヨークの五番街に位置する名門ホテル、ザ・プラザホテルのミキハウスショップで展開されるゴールドレーベル。その品質の良さが高く評価されている

    好調の要因は商品力だけではない。高付加価値に見合ったサービスと環境づくりも奏功している。

    店舗のリニューアルにおいては、クローズドで特別感のある空間づくりを推進。VIPスペースを活用し、専門知識を持つスタッフによるコンサルティング接客を提供している。こうした取り組みにより、2025年春夏シーズン終了時点での年間売上は、前年比70%増という驚異的な伸びを記録したという。 記事内画像

    ▲商品の価値に見合った高級感のあるサロンのような空間で、お客様にゆっくりと安心して買い物していただける売り場(写真は新宿髙島屋店)

    「本物」を伝えるラインアップ

    世界的な評価を得ているゴールドレーベルの具体的な商品群を見てみよう。

    「繊維の宝石」海島綿シリーズ

    シリーズの中核をなすのが、海島綿(シーアイランドコットン)を使用したアイテムだ。 記事内画像

    ▲ゴールドレーベル 海島綿シリーズ

    海島綿は「繊維の宝石」とも称される超長綿で、生産できる地域が限られ、僅少な量しか収穫されない極めて希少な素材だ。油脂分を多く含むため、ふくよかで滑らかな肌触りが特徴だ。 ゴールドレーベルでは、新生児用肌着やトレーナーやTシャツ、タオルなどにこの海島綿を使用。特に新生児向けの肌着やミトンなどのベビーアイテムは、国内外の顧客から厚い信頼を得ている。子育ての文化が異なる海外の顧客であっても、「生まれたばかりの赤ちゃんには一番良いものを着せたい」という親の愛情は共通であり、出産準備としてのまとめ買いも目立つという。 記事内画像

    ▲生まれたばかりの赤ちゃんを優しく包み込む海島綿のしなやかな肌触りが世界中のお客さまから支持されている

    今シーズンの新商品でも海島綿のベビーアイテムは拡充されており、担当者は「一番良いものを赤ちゃんに、というニーズに応えるものづくりを続けていく」と意気込みを語る。

    伝統工芸と融合した「本物」の追求

    ゴールドレーベルのもう一つの特徴は、日本の伝統技術との融合だ。能登地方の職人が手がける輪島塗のお食い初め膳や食器は、その代表例である。

    124もの工程を経て作られる輪島塗は、保温性が高く、口触りも良い。使い込むほどに強度が増すため、子供の成長と共に長く愛用できるという。 記事内画像

    ▲時間の変化につれ綺麗な白×金の色に変わる輪島塗(白×金)のお食い初め膳 価格は¥2,200,000(税込)

    さらに新たな試みとして、子供の健やかな成長を願う「兜(かぶと)」と「雛人形」も発表された。これらは螺鈿(らでん)細工に白蝶貝(しろちょうがい)を使用するなど、細部にまでこだわり抜いた逸品だ。2025年9月の新作発表会で公開された後、百貨店からのオファーを受け、同年12月から期間限定での展示・受注が開始される予定となっている。 記事内画像

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    ▲輪島塗の「兜」と「雛人形」。複数種類の金粉を使い分け、職人技で作り出される立体的な蒔絵の模様を持つ。価格はそれぞれ¥7,700,000(税込)

    また、奄美大島の伝統技法である泥染めを用いた作務衣も展開。天然の抗菌・防虫効果を持つとされる泥染めは、夏場でも快適に着用できる機能性と、唯一無二の色合いを兼ね備えている。 記事内画像

    ▲職人が素手で大切に1着ずつ丁寧に染め上げた、唯一無二の泥染め作務衣<子ども用¥79,200(税込) 大人用¥154,000(税込)>

    まとめ:ホテル業界へも広がる可能性

    こうしたミキハウスの高付加価値戦略は、異業種からも注目を集めている。特に熱い視線を送っているのが、ラグジュアリーホテル業界だ。

    高級ホテルにおいて、大人向けのサービスは充実しているものの、子どものことを考えたサービスは少ない。一方で、宿泊客である親や祖父母は、「家族と過ごす大切な時間である、旅行という特別な体験だからこそ、子どもにも安心・安全で心地よく楽しい体験をさせてあげたい」と望んでいることあろう。

    ホテル側としても、家族で利用する宿泊客の満足度をあげることが課題であるため、ミキハウスとの協業、つまりミキハウスが提供するサービスへの期待が高まっているというわけだ。ミキハウスとのコラボルームの設置やアメニティの提供、ホテル内ショップの展開などが進んでおり、ゴールドレーベルの商品に関心を示すホテルも多いという。

    海島綿のバスローブやシルクのパジャマ、あるいは伝統工芸品の数々は、その高級感あるデザインとストーリー性で、「富裕層のゲストに喜ばれるコンテンツ」として期待されている。 記事内画像

    ▲高付加価値なサービスを求めるお客さまが多く泊まるホテルからの注目が高まり、今後もホテル向けの提案を強化する(画像は展開イメージ)

    子どもと家族のためのコトや体験、そして空間づくりにも、ミキハウスブランドの価値が一役買っていると言える。

    価格競争が激化する現代において、「本物」を追求することで新たな市場を切り拓いたミキハウス。その高付加価値路線は、子供服という枠を超え、さらなる広がりを見せそうだ。

    #子供服#アパレル#高付加価値#日本#メイドインジャパン#ものづくり#ホテル#グローバル#輪島塗#伝統技術

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