挑戦者をリスクから守り抜く。Makuake「プロ...
SHARE
なぜ「子供服」がラグジュアリー免税店に並ぶのか? ミキハウスが仕掛けるファミリートラベルの新たな勝機
ビジョナリー編集部 2026/06/30
世界の免税・トラベルリテール市場において、今、ある異変が起きている。世界的なラグジュアリーファッションが軒を連ねる韓国・済州島のロッテ免税店に、子供服ブランドとして初となる出店を果たした企業がある。日本が世界に誇る「ミキハウス」だ。
同社はすでに中国・海南島や関西国際空港でも免税店を展開しているが、2026年5月には世界最大級の免税・トラベルリテール展示会「TFWA Asia Pacific」にも初出展。子供服ブランドとしては極めて珍しい存在でありながら、世界の空港やホテルから熱い視線を浴びている。
かつて国際空港やリゾート地の大型免税施設といえば、名だたるラグジュアリーブランドやプレミアムブランドの独壇場であった。その中心地に、なぜ今、子供服ブランドが食い込んでいるのか。その背景を探ると、世界的に拡大するファミリートラベル市場の変容と、同社が貫く「子供を第一に考える」のものづくり、そして体験価値を重視する新たなブランド戦略が見えてくる。
韓国・済州島に誕生した“異色の免税店”
ラグジュアリーゾーンへの異例の出店
済州島は、中国をはじめとするアジア各国から多くの観光客が訪れる屈指のリゾート地だ。近年はファミリー層の需要が急速に拡大しているこの地に位置する「ロッテ免税店済州店」は、ロッテホテル済州に直結する市内免税店であり、世界のトップブランドが顔を揃える。
そのなかでも、2階のラグジュアリーファッションゾーンにミキハウスが店舗を構えたことは、業界でも大きな注目を集めている。同ゾーンへの子供服ブランドの出店は、これが初めてのケースだ。

この店舗はミキハウスにとって韓国初の免税店であり、中国・海南島や関西国際空港などに続く、常設免税店として5店舗目の拠点となる。
なぜ今、子供服が免税市場で求められるのか
これまで子供服ブランドが免税店へ出店することは、決して一般的ではなかった。しかし、旅行を取り巻く価値観には確かな変化が起きている。家族旅行の需要が世界的に高まるなか、「子供との時間をより大切にしたい」「旅行中も子供が安心して使えるものを選びたい」と願う親が増えているのだ。
かつて空港や免税店でのショッピングは大人中心の楽しみであったが、ファミリー旅行市場の膨張に伴い、子供や家族に向けた新たな価値提案が不可欠となっている。
そうした潮流のなかで白羽の矢が立ったのが、1971年の創業以来、一貫して「子供を第一に考えたものづくり」を追求してきたミキハウスである。安心・安全への徹底したこだわり、日本のクラフトマンシップが息づく高品質なプロダクトは、今や国内外の親たちから絶大な信頼を寄せられている。
同社の象徴であるベビーシューズは、子供の足の発育を考えた設計を熟練の職人が手仕事で仕上げており、そのクオリティが世界を惹きつけている。現在、国内約90店舗に加え、ロンドンのハロッズ、パリのサントノーレ通り、ニューヨークのザ・プラザホテル、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズなど、世界16の国と地域の主要都市に展開。この世界的なブランド認知こそが、免税・トラベルリテール市場において高く評価される理由といえるだろう。
ショッピングを「旅の思い出」に変える空間
済州島の新店舗は、単に商品を並べるだけの場ではない。店内には、済州島特産のみかんや豊かな海をモチーフにした装飾が施され、家族で撮影を楽しめるフォトスポットも用意されている。

人気のシューズコーナーでは、日本の職人技や子供の足の成長を考えた設計思想を映像で紹介。商品そのものが持つ背景や価値を丁寧に発信している。

品揃えも、旅先での気温変化に対応する羽織りものや帽子、リュック、さらには日本製の玩具やギフト商品まで幅広く展開。世界中から訪れる家族の多様なニーズを細やかに拾い上げている。

近年のトラベル市場では「モノ消費」から「コト消費」への移行が叫ばれているが、済州店での取り組みは、まさにショッピング体験そのものを「旅の記憶」へと昇華させる試みといえる。
TFWAで見えた“ファミリー市場”の巨大な可能性
ミキハウスが秘めるポテンシャルは、2026年5月にシンガポールで開催された「TFWA (Tax Free World Association) Asia Pacific Exhibition & Conference 2026」でも証明された。
アジア太平洋地域最大級の免税・トラベルリテール業界イベントである同展示会には、世界中の空港、免税店、航空会社などの関係者が集結する。数多くのブランドがブースを構えるなか、子供服ブランドとして唯一出展したのがミキハウスだった。

▲TFWA Asia Pacific Exhibition & Conference 2026ミキハウスブース
ブースには欧州、韓国、中国、オーストラリアのみならず、中東やインドなど未出店地域のバイヤーも続々と訪問。関係者からは「空港免税エリアにおける子供服の展開はまだ空白地帯であり、ファミリー層の新たな需要を掘り起こせるはずだ」と期待の声が上がった。日本のものづくりへの関心は非常に高く、商談や情報交換が活発に行われた事実は、トラベルリテール市場における「子供向け高付加価値提案」の必要性を雄弁に物語っている。
高級ホテルとの協業が示す「滞在体験」のアップデート
ファミリー向けの価値提案は、免税店にとどまらず「宿泊体験」の領域にも波及している。
その象徴的な事例が、ザ・リッツ・カールトン大阪とのコラボレーション宿泊プランだ。客室内にはオリジナル装飾やプレイスペースが設けられ、同社のキャラクターをモチーフにしたウェルカムスイーツやアメニティも用意。子供が主役になれる空間を演出している。

▲コラボルームには、家族で安心して楽しめるよう子どものプレイスペースも設けた。
さらに館内でのポップアップストア展開も行われ、ホテル全体でファミリー向けの体験価値を提供する取り組みへと発展している。
こうした動きは海外でも加速している。ヒルトングループの最高級ブランド、ウォルドーフ・アストリア成都(中国)では、ファミリー向けコラボルームを展開。初回の反響があまりに大きく、ホテル側からのオファーによって第二弾が実現した。


現地の文化を取り入れた演出や、趣向を凝らしたプレイスペース、デザートなど、ホテル滞在そのものを家族の思い出に変える工夫が随所に施された。ホテル側は、ミキハウスが持つ「品質へのこだわり」と「温かな世界観」が、ラグジュアリーホテルの哲学と共鳴したことを協業の理由に挙げている。
「高付加価値」と「体験」の両輪が未来を拓く
一連の取り組みから浮き彫りになるのは、ファミリー旅行における「高付加価値な商品」と「体験価値」への極めて高いニーズだ。
安全性や機能性に妥協しない「本物」を求める親たちの視線は、価格以上にそのブランドの信頼性や哲学に向けられている。ミキハウスが免税・トラベル業界で支持されているのは、長年培ってきたプロダクトの信頼という強固な土台があるからに他ならない。
そして今、その価値は「モノ」を売ることだけでなく、旅の「コト」へと広がっている。ファミリー層にとって旅行は、子供との限られた時間を慈しみ、家族の絆を深める特別な機会だ。ショッピングや宿泊施設に求められるのは、単なる利便性や豪華さではなく、「子供が心から楽しめ、家族が快適に過ごせるか」という視点にシフトしている。
済州店での空間づくりや、各国の高級ホテルでの客室演出に共通しているのは、 「子供と家族が心地よく過ごせる時間」 を提供するという発想だ。異業種の事業者がミキハウスに寄せる期待は、単なる商品力だけではなく、ファミリー層との深い接点を創出し、顧客体験を劇的に向上させるパートナーとしての価値にあるのだろう。
子供服ブランドの可能性はどこまで広がるのか
少子化という逆風の一方で、子供一人ひとりに注がれる愛情や投資、そして多様化するニーズは、かつてないほど高まっている。
子供服ブランドは今、「服を売る存在」から「家族の体験価値を創出する存在」へと、その定義をアップデートしつつある。済州島での免税店展開、TFWAでの手応え、そして世界的なホテルとの共創。これらはすべて、子供服ブランドの新たな地平を切り拓く挑戦だ。
世界のファミリートラベル市場が成長を続けるなか、子供と家族に寄り添うブランドの可能性は、私たちの想像を超えて広がっていくに違いない。ミキハウスが仕掛ける「子供服」という枠を超えた次なる一手から、今後も目が離せそうにない。


