
「ちいかわ」はなぜここまで社会現象になったのか?
9/3(水)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/09/01
あなたやあなたの大切な人の生活を、もっと安心で、もっと自分らしいものに変える――そんな可能性を秘めた医療サービスが「訪問診療」です。
本記事では、なぜ“訪問診療”が注目されているのか、その仕組みや現場のリアルな課題、そしてこれからの展望まで、分かりやすく解説します。
あなたの家族が高齢で、足腰が弱くなり、または認知症が進み、病院への通院が難しくなったとします。これまでなら「施設入所」や「入院」しか選択肢がなかったかもしれません。
厚生労働省の発表によれば、2025年には日本の高齢者人口が3,500万人、うち75歳以上の後期高齢者が2,200万人に達すると予測されています。つまり、通院自体が「ハードル」となる人が急増しているのです。
そこで登場したのが「訪問診療」。
医師や看護師、薬剤師、リハビリ職、栄養士など多職種が連携し、自宅や施設に訪問して医療サービスを提供する新しい仕組みです。
現在、在宅医療のニーズは2020年から2040年の20年間で50%以上増加すると見込まれており、まさに“需要拡大”のフェーズに突入しています。
「訪問診療」とは、医師が患者さんの自宅や高齢者施設に定期的・計画的に訪れ、診察・治療・薬の処方・生活指導などを行う医療サービスです。
ここで混同しやすいのが「往診」と「訪問看護」。
それぞれの違いを整理します。
これらが連携し、患者さん一人ひとりの状態や希望に応じて、最適な在宅医療体制が組まれます。
実は、訪問診療で受けられる医療行為は非常に多岐にわたります。
さらに、状況に応じて医師が検査や治療の必要性を判断し、入院や専門医への紹介もスムーズに行われます。
なぜ、ここまで訪問診療の需要が高まっているのでしょうか?
高齢化が進み、通院に負担を感じる人が激増しています。車椅子や介護タクシーを使っての通院は、患者本人だけでなく家族にも大きな負担となります。
「自宅で最期まで自分らしく過ごしたい」
こうした願いが尊重される時代になりました。
訪問診療は、住み慣れた家で、ご家族やペットと一緒に、最期まで過ごすことを可能にします。
厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を推進し、医療と介護の垣根を越えた連携を強化しています。
都道府県単位で医療機関や高齢者施設、ケアマネジャー、訪問看護・リハビリなど多職種が連携し、患者の生活を総合的に支える仕組みが整備されつつあります。
「夜間や休日に急変したらどうするの?」という不安も根強くあります。
しかし、在宅療養支援診療所などの制度により、24時間365日体制で医師・看護師が対応する医療機関も増え、より安心して在宅療養を選びやすくなっています。
では、訪問診療にはどんなメリットがあるのでしょうか。
病院という非日常空間での診療は、認知症の方にとっては特にストレス。
訪問診療なら、自宅や施設のなじみのある環境で、家族と一緒に説明を聞けるため、納得しやすく、治療やケアの継続にもつながります。
医師が患者さんの生活環境を直接見て、家族や介護者の声も聞きながら診療できるため、より細かな生活指導や治療方針の調整が可能です。
例えば、服薬管理が難しい場合は薬剤師が訪問してサポートしたり、食事面の課題には栄養士がアドバイスするなど、チーム医療が実現します。
在宅療養支援診療所など一定の条件を満たす医療機関では、夜間や休日も電話相談や緊急訪問の体制が整っています。
「急に具合が悪くなったらどうしよう」という不安も軽減できます。
高齢者や慢性疾患の患者さんにとって、病院の待合室での感染リスクは無視できません。
訪問診療なら自宅で診察が受けられるため、余計な感染リスクを回避できますし、長い待ち時間に悩まされることもありません。
メリットが多い訪問診療ですが、当然デメリットや制約も存在します。
自宅ではMRIやCTなど大型の医療機器は使えません。
在宅でできる検査や治療には限界があり、状態悪化時には病院への搬送が必要になる場合もあります。
訪問診療は「医師が来てくれる」ものの、24時間体制で常に医療スタッフがいるわけではありません。
日常的なケアや急変時の初期対応は、家族や介護者のサポートに頼る部分が多くなります。
介護経験のない家族がケアを担う場合、精神的・身体的な負担が増えることも多いため、事前に十分な相談や支援体制の確認が必要です。
急性の病状悪化や事故などの際、病院のように即時対応できるわけではありません。
緊急時には救急車や病院搬送が前提となるため、「絶対安心」とは言い切れません。
費用は「医療保険」が基本となり、自己負担割合(1割~3割)や診療内容によって変動します。
月2回程度の訪問で、1割負担なら約7,000円~、3割負担なら約20,000円程度が目安です。
「高額療養費制度」も利用できるため、負担が過度に重くなることはありません。また、介護保険の「居宅療養管理指導」を併用するケースも多いです。
「自分らしく生きる」「大切な人と過ごす」「住み慣れた我が家で最期を迎える」
訪問診療は、そんな希望を支える新しい医療の形です。
まずは身近な医療機関やケアマネジャーに相談し、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
あなたと、あなたの大切な人の“これから”を、自宅という「安心の場所」で支える一歩が、今ここから始まります。