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2025

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    自宅で受ける医療の新常識――訪問診療が選ばれる理由と利用の流れ

    自宅で受ける医療の新常識――訪問診療が選ばれる理由と利用の流れ

    あなたやあなたの大切な人の生活を、もっと安心で、もっと自分らしいものに変える――そんな可能性を秘めた医療サービスが「訪問診療」です。
    本記事では、なぜ“訪問診療”が注目されているのか、その仕組みや現場のリアルな課題、そしてこれからの展望まで、分かりやすく解説します。

    「通院困難」の現実と、在宅医療の台頭

    あなたの家族が高齢で、足腰が弱くなり、または認知症が進み、病院への通院が難しくなったとします。これまでなら「施設入所」や「入院」しか選択肢がなかったかもしれません。
    厚生労働省の発表によれば、2025年には日本の高齢者人口が3,500万人、うち75歳以上の後期高齢者が2,200万人に達すると予測されています。つまり、通院自体が「ハードル」となる人が急増しているのです。
    そこで登場したのが「訪問診療」。
    医師や看護師、薬剤師、リハビリ職、栄養士など多職種が連携し、自宅や施設に訪問して医療サービスを提供する新しい仕組みです。
    現在、在宅医療のニーズは2020年から2040年の20年間で50%以上増加すると見込まれており、まさに“需要拡大”のフェーズに突入しています。

    訪問診療とは?――往診・訪問看護との違い

    「訪問診療」とは、医師が患者さんの自宅や高齢者施設に定期的・計画的に訪れ、診察・治療・薬の処方・生活指導などを行う医療サービスです。
    ここで混同しやすいのが「往診」と「訪問看護」。
    それぞれの違いを整理します。

    • 訪問診療
      事前に同意を得て、計画的・定期的に医師が訪問。診察や治療、生活指導など、いわば“かかりつけ医”が自宅に来てくれるイメージです。
    • 往診
      突発的な体調変化など、患者や家族の要請で臨時に医師が訪問。定期性はなく、緊急時の応急対応が中心です。
    • 訪問看護
      医師の指示のもと、看護師やリハビリ職が訪問し、医療処置・生活支援・リハビリテーション・服薬管理などを提供します。
       

    これらが連携し、患者さん一人ひとりの状態や希望に応じて、最適な在宅医療体制が組まれます。

    訪問診療で受けられるサービス

    実は、訪問診療で受けられる医療行為は非常に多岐にわたります。

    • 血液・尿・便などの検査
    • 血圧・体温測定、心電図、超音波検査
    • 点滴・投薬・痛み止めの管理
    • 人工呼吸器やカテーテル、ストーマの管理
    • 床ずれや創傷のケア
    • 経管栄養や医療機器の管理
    • 認知症や末期がん患者の緩和ケア
    • リハビリ指導や栄養指導
       

    さらに、状況に応じて医師が検査や治療の必要性を判断し、入院や専門医への紹介もスムーズに行われます。

    需要拡大の背景――「自宅で最期まで」を支える仕組み

    なぜ、ここまで訪問診療の需要が高まっているのでしょうか?

    高齢化と「通院困難」人口の増加

    高齢化が進み、通院に負担を感じる人が激増しています。車椅子や介護タクシーを使っての通院は、患者本人だけでなく家族にも大きな負担となります。

    「住み慣れた場所で過ごしたい」という希望の高まり

    「自宅で最期まで自分らしく過ごしたい」
    こうした願いが尊重される時代になりました。
    訪問診療は、住み慣れた家で、ご家族やペットと一緒に、最期まで過ごすことを可能にします。

    医療・介護の地域連携の強化

    厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を推進し、医療と介護の垣根を越えた連携を強化しています。
    都道府県単位で医療機関や高齢者施設、ケアマネジャー、訪問看護・リハビリなど多職種が連携し、患者の生活を総合的に支える仕組みが整備されつつあります。

    在宅医療対応施設の増加と24時間体制

    「夜間や休日に急変したらどうするの?」という不安も根強くあります。
    しかし、在宅療養支援診療所などの制度により、24時間365日体制で医師・看護師が対応する医療機関も増え、より安心して在宅療養を選びやすくなっています。

    訪問診療を利用するメリット

    では、訪問診療にはどんなメリットがあるのでしょうか。

    住み慣れた環境での安心感

    病院という非日常空間での診療は、認知症の方にとっては特にストレス。
    訪問診療なら、自宅や施設のなじみのある環境で、家族と一緒に説明を聞けるため、納得しやすく、治療やケアの継続にもつながります。

    個別化されたきめ細かなケア

    医師が患者さんの生活環境を直接見て、家族や介護者の声も聞きながら診療できるため、より細かな生活指導や治療方針の調整が可能です。
    例えば、服薬管理が難しい場合は薬剤師が訪問してサポートしたり、食事面の課題には栄養士がアドバイスするなど、チーム医療が実現します。

    24時間・365日対応の安心

    在宅療養支援診療所など一定の条件を満たす医療機関では、夜間や休日も電話相談や緊急訪問の体制が整っています。
    「急に具合が悪くなったらどうしよう」という不安も軽減できます。

    感染リスクの低減と待ち時間ゼロ

    高齢者や慢性疾患の患者さんにとって、病院の待合室での感染リスクは無視できません。
    訪問診療なら自宅で診察が受けられるため、余計な感染リスクを回避できますし、長い待ち時間に悩まされることもありません。

    訪問診療のデメリット――知っておきたい現実

    メリットが多い訪問診療ですが、当然デメリットや制約も存在します。

    高度な医療や検査には限界がある

    自宅ではMRIやCTなど大型の医療機器は使えません。
    在宅でできる検査や治療には限界があり、状態悪化時には病院への搬送が必要になる場合もあります。

    家族・介護者への負担増

    訪問診療は「医師が来てくれる」ものの、24時間体制で常に医療スタッフがいるわけではありません。
    日常的なケアや急変時の初期対応は、家族や介護者のサポートに頼る部分が多くなります。
    介護経験のない家族がケアを担う場合、精神的・身体的な負担が増えることも多いため、事前に十分な相談や支援体制の確認が必要です。

    緊急時の即応性は病院に劣る

    急性の病状悪化や事故などの際、病院のように即時対応できるわけではありません。
    緊急時には救急車や病院搬送が前提となるため、「絶対安心」とは言い切れません。

    訪問診療を受けるには――利用条件と流れ

    【主な利用対象者】

    • 通院が困難な高齢者や障害者
    • 寝たきりや認知症などで自力通院が難しい方
    • 末期がんや重度の慢性疾患で在宅緩和ケアを希望する方
    • 最期まで自宅で過ごしたい方

    【利用の流れ】

    1. かかりつけ医・病院・ケアマネジャーへ相談
      まずは、主治医や担当ケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談しましょう。
    2. 医療機関による説明・事前訪問
      訪問診療を提供する医療機関スタッフが自宅を訪問し、診療内容や費用、体調の確認などを行います。
    3. 同意書の取り交わしと計画作成
      内容を理解・同意した上で手続きを進めます。
    4. 定期的な訪問診療の開始
      訪問計画に基づき、定期的に医師や看護師が訪問します。急変時は追加で往診対応も。

    訪問診療の費用――医療保険が基本、料金も安心

    費用は「医療保険」が基本となり、自己負担割合(1割~3割)や診療内容によって変動します。
    月2回程度の訪問で、1割負担なら約7,000円~、3割負担なら約20,000円程度が目安です。
    「高額療養費制度」も利用できるため、負担が過度に重くなることはありません。また、介護保険の「居宅療養管理指導」を併用するケースも多いです。

    まとめ

    「自分らしく生きる」「大切な人と過ごす」「住み慣れた我が家で最期を迎える」
    訪問診療は、そんな希望を支える新しい医療の形です。
    まずは身近な医療機関やケアマネジャーに相談し、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
    あなたと、あなたの大切な人の“これから”を、自宅という「安心の場所」で支える一歩が、今ここから始まります。

    #訪問診療#在宅医療#在宅診療#訪問看護#往診#高齢者医療#介護#終末期医療#自宅療養

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