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これからの日本語教師に期待される、新たな役割とは?
ビジョナリー編集部 2025/05/15
少子化による深刻な人手不足を背景に、日本では外国人材の受け入れが急速に進んでいる。2024年10月の時点で、国内の外国人労働者数は230万人を超え、過去最多を記録している。特に、「技術・人文知識・国際業務」などの専門的・技術的な分野だけでなく、「身分に基づく在留資格」「特定技能」など新しい制度に基づく在留者が増加しているのだ。
このような社会的変化に伴い、日本語教育の重要性も一層増している。そのような中、外国人が日本で働き生活するためには、日本語の習得が必要不可欠である。こうした背景のもと、日本語教育を担う日本語教師の専門性が再評価され、2024年にはついに日本語教師が国家資格(登録日本語教員)として制度化された。
日本語教師という職業は、今後どのような役割を果たしていくのか。 ファーストキャリアとして日本語教師の道を選び、現在「TCJ日本語教員養成講座」を提供する、パスメイクグループの株式会社TCJグローバルの徳田淳子氏に伺った。
日本語教師に求められる役割とは?
日本語教師とは、日本語を母語としない人々に日本語と日本文化を教える専門職です。対象は留学生、就労者(技人国、技能実習、特定技能など)、永住・定住者など多岐にわたり、それぞれの置かれている環境や目的に応じた柔軟な教育が求められます。
単なる語学指導にとどまらず、生活支援や異文化理解の促進など、多文化共生社会の実現に貢献する役割も担います。国家資格化により、今後はさらに高度な専門性や実務能力が必要とされ、教育のフィールドは国内外に広がっており、国際的に活躍する機会も増えています。
日本語教師の需要と新たな広がり
日本では、少子化に伴う労働力不足を補うため、外国人労働者の受け入れが進んでおり、外国人労働者が日本社会に適応するための日本語教育の必要性が年々高まっています。日本語学校や自治体などが運営する地域教室だけでなく、企業研修などへも教育の場は広がり、多様化しています。
特に、技能実習や特定技能ビザで来日する外国人労働者にとって基礎的な日本語能力の習得は不可欠であり、日本語教師の役割が広がっています。教師は単なる語学指導者としてだけでなく、現場での支援者としての役割も期待されています。
さらに、新型コロナウイルスの影響で、オンライン日本語教育が急速に普及しました。これにより、物理的な制約を超え、国内の地方部といった日本語教育が行き届いていない地域だけでなく、世界中に存在している日本語学習者に教育を提供できるようになりました。
語学学習プラットフォームやオンラインスクールを通じて働くフリーランスの教師が増えており、オンライン教育ではITリテラシーや教材デジタル化対応能力、非対面でのコミュニケーション能力が求められるなど、教師には柔軟な対応力が求められます。
2024年に創設された「登録日本語教員」制度は、日本語教育の質を確保し、日本語教師の専門性を担保する国家資格制度です。資格取得には、国家試験に合格し教育実習を修了する「試験ルート」と、文科省認定の課程を修了し国家試験の応用試験に合格する「養成機関ルート」があります。これにより、より高い専門性と実務能力を持つ教師の育成の整備が進められています。株式会社TCJグローバルが提供するTCJ日本語教員養成講座も、これらのルートに適した講座を提供しています。
多様な背景を持つ日本語教師たち
日本語教師は、年齢や職歴に関係なく誰もが挑戦できる職業です。ファーストキャリアとして日本語教師を選ぶ人もいれば、他業種からの転身でセカンドキャリアとして取り組む人もいます。常勤講師、非常勤講師でも働けますし、オンラインで自由な働き方を選ぶ人も増えており、そのキャリア形成は非常に多様です。特に近年では、人生100年時代において、長く活躍できる知的労働として、セカンドキャリアとしての注目が集まっています。
また、注目すべきは、日本語を母語としない、いわゆる「セミネイティブ」な日本語話者が教師として活躍していることです。TCJ日本語教員養成講座では、元留学生などの日本語非ネイティブの受講者が増えており、資格取得後に教壇に立つ事例も実際にあります。彼らは日本語学習者にとって、日本社会で活躍するリアルなロールモデルともなるため、その教育的価値と社会的意義は大きいです。将来的に母国に戻ったとしても、日本語教師として日本と母国をつなぐ役割を果たすことも可能です。
日本語教育を通じて、多様な人々の生き方に寄り添い、社会に貢献する―日本語教師は、これからの日本社会において不可欠な「専門職」であり、「生涯の仕事」となる可能性を秘めています。