現役世代でも、会社を退職した後の生活費は誰もが気になる大きなテーマです。中でも年金制度は、将来の安心を支えるカギ。しかし、「年金は複雑で分かりにくい」と感じている方も多いのが現実です。
今回は、年金の基本的な仕組みから、年金を増やすための工夫まで、わかりやすくまとめました。この記事を読めば、将来の生活設計に役立つヒントが見つかるはずです。
年金制度の全体像
日本の年金制度は大きく「公的年金」と「私的年金」に分かれています。
公的年金
国民年金(基礎年金)
- 20歳から60歳までの全ての国民が加入
- 自営業者、学生、フリーランスも含まれる
厚生年金
私的年金
- 企業型年金(企業年金、企業型DC等)
- 個人型年金(iDeCo、国民年金基金、個人年金保険など)
公的年金の上乗せとして、自分の老後をより豊かにするための選択肢が用意されています。
公的年金、3つの柱
公的年金がカバーするのは「老後」だけではありません。
- 老齢年金:65歳以降の生活資金
- 障害年金:病気やケガで障害を負った場合の生活支援
- 遺族年金:一家の働き手が亡くなった場合の遺族支援
公的年金は、万一のときの保険機能も備えているのです。「年金=老後のお金」だけではない、というのは重要なポイントです。
もらえる年金額はどう決まる?
【国民年金(老齢基礎年金)】
- 2025年度の満額は、年83万1,700円
- 40年間(480ヶ月)保険料を納めた場合、月額にすると約6万9,000円(※1956年4月2日以降生まれの場合)
0歳から60歳まで40年間きちんと納めた人が満額受給です。納付期間が短い場合は、その分減額されます。
何年で元が取れる?
- 40年間で納める保険料は約840万円(2025年度基準)
- 年金を受け取り始めて約10年ほどで「元」が取れ、それ以上長生きすればするほど自分が払った以上の年金を受け取れる計算です。
【実例】
65歳から90歳まで25年間受給した場合、総額は約2,079万円。納めた金額の2.5倍超になります。
【厚生年金(老齢厚生年金)】
受給額は「加入期間」と「給料(標準報酬額)」によって異なります
2023年度の平均支給額(国民年金を含む)
- 男性:約16万6,600円/月
- 女性:約10万7,200円/月
この差は、女性の方が結婚や育児で働かない・非正規雇用となる期間が長いことが理由です。同じ加入期間・報酬であれば男女差はありません。
【例】
- 会社員として40年フルタイムで働いた場合、毎月15万~17万円程度が目安です(個人差あり)。
- 定年後も働き続けて厚生年金に加入すれば、その分受給額は増えます。
世代ごとの受給額の違い:なぜ差が生まれるのか
「昔の人の方が得をしている?」と感じたことはありませんか?
実は、年金制度は物価や経済状況、人口構成の変化に合わせて定期的に見直されています。
- 2004年以前に年金受給を開始した世代は、納付額に対して受給額が多く「元が取れる」までの期間が短め
- 現在40代以下の世代は、少子高齢化の影響もあり「払い損」になるのでは?と不安視されがちですが、将来インフレが進んでも年金額も物価変動に連動して調整される仕組みがあるため、過度な心配は不要とされています
年金額を増やすための7つの工夫
「自分の年金は少なそう…」と感じたら、今からできる対策もあります。
1. 国民年金の任意加入
- 60歳以降も加入し、納付期間を40年に近づけることで将来もらえる金額が増えます
2. 付加年金への加入
- 国民年金の第1号被保険者なら、月400円の上乗せで「付加年金」も可能
- 2年以上受給すれば「元が取れる」仕組みです
3. 60歳以降も働く
- 厚生年金は70歳まで加入可能
- 60代以降も働くことで年金の受給額がアップします
4. 年金の繰り下げ受給
- 65歳からではなく、最大75歳まで受給開始を遅らせると、年金額が最大84%増額
- 例えば、年金月額12万円が22万円までアップするケースも
5. iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入する
- 掛金が全額所得控除、運用益も非課税
- 老後資金の上乗せに有効
6. NISA(少額投資非課税制度)を活用する
- 投資による収益を非課税で運用できる
- いつでも引き出しが可能なため、柔軟性あり
7. 国民年金基金に加入する
- 自営業者・フリーランス向けの「2階建て」年金
- iDeCoと併用可能(掛金枠共用に注意)
年金制度の強みと今後の課題
年金制度が持つ5つの強み
- インフレに強い
物価や賃金の変動に合わせて年金額も調整される
- 税金で補填される
財源の一部は国の税金で支えられている
- 老齢年金だけでなく、障害・遺族年金も充実
万一のときの生活保障もカバー
- 経済的に厳しいときは免除や猶予が可能
申請すれば保険料の納付を猶予・免除してもらえる
- 支払った保険料が所得控除になる
税金の軽減効果もある
それでも不安が残る理由
- 少子高齢化による現役世代の減少
- 平均寿命のさらなる延伸
- 非正規雇用の増加やキャリアの多様化
これらの要因から、「将来も今と同じ水準の年金がもらえるとは限らない」と感じる人が増えています。
「年金=老後の生活費のすべて」ではない
ここで覚えておきたいのは、「年金だけでゆとりある老後生活を送る」ことは難しいという現実です。総務省のデータでも、老後の生活費平均は月22万円台とされており、年金だけで十分とは言えません。
だからこそ、私的年金や貯蓄、投資などの自助努力がますます重要になってきています。
年金の受給には「資格期間10年以上」が必要
- 国民年金・厚生年金ともに、10年以上の納付(または免除期間)がないと、原則として年金を受給できません
- 学生時代の納付猶予や未納期間は、将来の受給額に影響します
年金を「知る」ことが将来の安心につながる
「どうせ年金はもらえない」「自分は損をしている気がする」と思い込む前に、まずは正確な仕組みと自分の加入状況を把握することが大切です。
【一度は確認したいポイント】
- 年金定期便やねんきんネットで自分の加入履歴・見込額をチェック
- 不安があれば社会保険労務士や年金事務所で相談
まとめ:今日からできるアクション
- 自分の年金記録を確認する
- 余裕があればiDeCoやNISA、国民年金基金など私的年金も検討
- 老後資金の「見える化」を進めて備える
「将来の安心」は、待つだけでなく自分で作る時代。年金制度を正しく理解し、今からできる工夫を積み重ねていきましょう。あなたの未来の選択肢が、きっと広がるはずです。