
気づかないうちに選ばされている? ナッジ理論の魅...
8/5(火)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/08/04
「AB型の人は変わり者」「新設チームはミスが多い」――あなたは、こんな話を何気なく信じていませんか?
ビジネスの現場では、限られた情報の中でスピーディーな判断が求められます。しかし、私たちの頭の中では、ときに実際には存在しない関係を結びつけてしまう現象が起きています。この現象こそが「錯誤相関」です。
一見すると根拠があるように思える「集団や個人の特徴」ですが、実は思い込みに過ぎないことも少なくありません。錯誤相関がもたらす認知の歪みは、職場の評価、公平性、ひいては組織全体の成長にまで影響を及ぼします。
では、錯誤相関とは何か? ビジネスパーソンが陥りやすいワナを、具体例とともに紐解き、どう対処すればよいかを考えていきましょう。
錯誤相関とは、2つの事象に本来相関関係がないにもかかわらず、「何かしら関連がある」と認識してしまう認知バイアスです。
これらは、偶然の一致や印象的な出来事が記憶に残ることで、実際には無関係なもの同士が「関連している」と錯覚してしまう現象です。
1976年、心理学者ハミルトン&ギフォードは、錯誤相関を示す有名な実験を行いました。
すると、「少数派の方がネガティブな行動の割合が多かった」と誤認する人が多数だったのです。
この2つの印象に残りやすい要素が組み合わさると、記憶に強烈に刻まれやすくなります。その結果、事実以上に「少数派=問題が多い」といった思い込みが生じるのです。
たとえば、会社で新しく組織された少人数のプロジェクトチームが、たった一度だけ納期遅延を起こしたとします。このとき、「新しいチームは期待外れだ」「やっぱり経験が浅いからダメだ」といった評価が噴出しがちです。 実際には、他の多数派チームでも同程度の失敗が起きているのに、少数派×ネガティブの組み合わせが目立ち、周囲の印象を強く左右してしまうのです。
こうした部署ごとの性格付けも、個々のエピソードが過度に一般化され、錯誤相関が助長されやすい典型例です。
マネージャーが普段からよく接する部下については豊富な情報があり、極端な評価(「非常に優秀」「かなり問題あり」)をしがちです。一方、接点の少ない部下は慎重な評価となり、昇進や抜擢の機会を逃す危険性もあります。
情報量の多寡や接し方によって、評価が歪むのも錯誤相関の一種なのです。
錯誤相関が強まると、「少数派チームが不公平に扱われている」「自分たちだけが損をしている」といった不満が高まりやすくなります。組織全体のエンゲージメントや信頼感を損ね、離職リスクにつながる恐れもあります。
個人の失敗や成功が「その所属グループ全体の特徴」として一般化されると、部署や職種に対する根拠のない偏見が定着します。人事評価や配属の際にも、無意識のバイアスが入り込むリスクが大きくなります。
「新しい部署は失敗が多い」などの根拠のない思い込みが、新しいチャレンジや多様性の受容を阻害します。組織のイノベーションや人材育成の足かせとなりかねません。
まず大切なのは、「自分が抱いている印象」が必ずしも事実と一致しないことを自覚することです。「本当にデータとして差があるのか?」と一歩引いて確認しましょう。
情報量が多い対象ほど、極端な評価を下しやすくなります。一方、情報が少ない場合には慎重な評価になりがちです。「よく知っているからこそ、バイアスが入りやすい」ことを意識しましょう。
「部署や役割ごとに明確な違いがあるはず」といった先入観があると、実際よりも差を大きく感じやすくなります。
一度の大きな成功や失敗が、その後の長期的な評価を左右してしまうことがあります。「一事が万事」ではなく、継続的かつ多角的な評価を心がけましょう。
錯誤相関は、私たちの脳が情報を処理する際のクセですが、ビジネスの現場では、ときに大きな落とし穴となります。少数派や新しいチーム、目立つ出来事にばかり注目してしまうと、本来の実力や可能性を見落としてしまう危険があるのです。
明日から、あなたの職場でも「錯誤相関チェック」を取り入れてみてください。きっと、新しい視点やチャンスが見えてくるはずです。