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2025

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    リマニでつなぐ未来──持続可能な成長を実現する循環型ビジネスモデル

    リマニでつなぐ未来──持続可能な成長を実現する循環型ビジネスモデル

    近年、「リマニュファクチャリング(通称:リマニ)」が、世界中の製造・流通業界で急速に存在感を増しています。
    一度役目を終えた製品や部品を分解し、洗浄・修理・再組立を経て、新品同様に“再生”する。
    これまでの“作って売ったら終わり”から、“使い続ける社会”への転換。その最前線で、今何が起きているのでしょうか?

    時代が求める循環型社会

    大量生産・大量消費の時代が長く続いた結果、私たちは資源枯渇やCO₂排出増加、環境破壊という大きな課題に直面しています。こうした背景から、世界各国で「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の実現が叫ばれるようになりました。

    リマニとは何か?

    リマニは、使用済み製品や部品を回収し、分解・洗浄・検査・修理・再組立を通じて、新品同様の性能を持つ製品や部品へと“よみがえらせる”プロセスです。
    自動車、家電、産業機械など、さまざまな分野で活用が広がっています。
    例えば、自動車分野ではエンジンやトランスミッション、ブレーキ部品などがリマニの代表格。新品部品が入手困難だったり、コストを抑えたい場合に再生部品が活躍しています。

    修理する権利と法規制

    2013年から“修理する権利”を求める運動が欧米を中心に広まり、消費者が購入後も自身で製品を修理しやすいよう設計することが求められる時代になりました。
    2019年にEUは家電の修理部品の提供を義務化し、フランスでは製品ごとに「修理しやすさ指数」を表示することをメーカーに課しました。ニューヨークでも2022年にデジタル・フェア・リペア・アクト(デジタル修理の権利法)が成立し、修理が必要な部品やツールの情報提供を電子機器メーカーに義務化し、カリフォルニアやミネソタもこの動きに続いています。

    変わる設計思想:iPhoneの例

    アップルはかつて、バッテリー交換を想定しない設計をしていました。しかし、先述した法規制の動きもあり、背面カバーの着脱やバッテリーを取り外しやすくする新素材の採用など、分解しやすくなるように設計を変更しました。
    結果的に、リファービッシュ(整備済み)品市場が活性化し、持続的な収益モデルの構築にもつながりつつあります。

    企業がリマニに取り組むメリット

    1. 資源効率とコスト削減

    新品部品の製造に比べ、リマニ部品は資源の採掘や製造工程を削減できます。エネルギー消費やCO₂排出量を低減し、省コスト・省資源化が実現します。

    2. 部品供給の安定化

    サプライチェーンの混乱や部品の品薄に悩まされた近年、リマニによる“部品の再流通”は大きな安心材料です。特に自動車や建設機械など、長寿命かつ高額な製品分野では、リマニが安定供給の要となっています。

    3. 顧客満足度・ブランド価値の向上

    リマニ製品は新品よりも安価に提供でき、性能も新品同様。消費者側も“持続可能な選択”をする満足感を得られます。
    企業にとっては、製品寿命全体をカバーする新たなビジネスチャンスが拡大します。

    日本企業の現状──先行事例と課題

    コマツの鉱山機械、リマニが「売上高3倍」の成長源に

    建設・鉱山機械大手のコマツは、30年以上前からエンジンやトランスミッションなどのリマニ事業を展開しています。
    新品購入と比べて数十%のコスト差が出る上、顧客は“リマニ前提”で機械を選ぶケースが増えています。
    また、リマニを通じて部品の寿命データを蓄積し、新製品開発や設計改善にも役立てているのです。

    パナソニックの家電、“分解のしやすさ”で新たな価値を創出

    パナソニックは、産業技術総合研究所と連携し、製品分解シミュレーション「分解CPS」の開発に取り組んでいます。
    これにより、「いかに分解しやすいか」を可視化し、保守性やリマニの適性を高めています。
    また、初期不良品として回収した製品を修理して、8割ほどの値段で再販売する取り組みでも好調な実績を上げており、「新品も中古も差別なく提供する時代」への道筋をつけています。

    日東電工・三菱ケミカル・JFEスチール──素材メーカーも新商機

    • 日東電工は電気を流すだけで剥がれるテープを開発、スマートフォンの分解容易化に貢献。
    • 三菱ケミカルは樹脂部品の効率的な分解・再利用技術を推進。
    • JFEスチールは銅線回収が容易なモーター用鉄粉材料を展開。
       

    素材レベルから「リマニ前提」の開発競争が進んでいます。

    小売企業も“メーカー化”──ヤマダHDの挑戦

    家電量販大手のヤマダHDは、自社工場で家電の再生事業に乗り出し、リユース品を新品同様に販売。
    グループ内で回収・修理・リサイクルを一気通貫で完結させる“エコシステム”を構築しています。
    海外展開も視野に、リマニを成長戦略の柱に据えています。

    リマニが未来にもたらすもの

    新たなものづくりの競争軸

    • 分解のしやすさ
    • 部品のモジュール化
    • データ活用による設計改善
    • サプライチェーンの再構築
       

    これまで“弱み”とされてきた要素が、リマニ時代には“強み”に転じるチャンスもあります。リマニを前提に柔軟な発想転換ができるかどうかが重要です。

    社会全体のメリット

    • 環境負荷の低減
    • 持続可能な成長
    • 新たな雇用とビジネスモデルの創出
    • 消費者の選択肢拡大

    まとめ

    「リマニ」は製造業だけでなく流通業、素材産業、さらには消費者を巻き込んだ新しい価値創出の舞台となっています。

    「作って終わり」から「何度も使い続ける」ものづくりへの進化。

    この大きな転換点で、いかに早く、柔軟に、かつ積極的に行動できるか。その先に、企業・社会・地球全体の明るい未来が待っています。

    #サーキュラーエコノミー#循環型社会#サステナビリティ#持続可能な社会#脱炭素#リマニュファクチャリング#リマニ#リユース#リファービッシュ#再生部品#リサイクル

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