「介護の現場から、地域の未来を紡ぎ直す」――多摩...
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日本の綿花自給率0%への挑戦。タビオが挑む「究極の靴下づくり」と産学連携の舞台裏
ビジョナリー編集部 2026/06/19
タビオのSDGsは創業理念の先に

「靴下屋」などのブランドを展開するタビオが何よりも大切にしてきたのは、「自分たちが本当に良いと信じられる靴下を、真っ当にお届けする」という姿勢だ。もともと同社は、創業者が存命の頃から、お世辞にも「アピール上手」とは言えない会社だったという。広告に多額の資金を投じるくらいなら、一円でも多く商品の開発や品質の向上に充てたい。そんな職人気質な考えを貫いてきた結果、品質第一のブランドとして認められる礎を築いた一方で、その背景にある日々の取り組みや熱意を伝えるのが少し不器用――そんな社風が醸成されたようだ。
しかし、そんな同社がいま、多くの大学や若い学生たちを巻き込み、熱い「産学連携」の輪を広げている。ただ、これも決して対外的なアピールのために始めたものではないという。「凡そ商品は造って喜び、売って喜び、買って喜ぶようにすべし(後略)」という同社の創業理念に基づき、関係者全員が心の底から喜べる靴下作りを模索する中で、必然として生まれた挑戦なのだ。
靴下屋が挑む、日本の自給率「0%」の綿花栽培

タビオの産学連携の原点は、創業者の「最高の綿花を自ら育て、最高の靴下を作りたい」という一つの強い夢であった。しかし、現在の日本の綿花自給率はほぼ0%だ。綿花栽培で生計を立てている農家は、統計上、日本には存在しないに等しい状態だという。「誰もやっていないなら、自分たちでやるしかない」と2009年、奈良県広陵町の休耕田で綿花の自家栽培という、無謀とも言える挑戦が始まった。
同社は綿花栽培におけるこだわりも徹底した。目指したのは、一般的な農法よりもはるかに手間のかかる「無農薬・無化学肥料」の有機栽培である。そんな難易度の高い方法で、繊維長が長く、丈夫で光沢もある世界でも最高級の綿花を作ろうというのだ。農業の素人であった同社は、当初、収穫量も少なく品質も安定しない中で、先の見えない試行錯誤を繰り返すことになった。
学生たちとの出会いが切り拓いた未来の靴下づくり

タビオの挑戦に転機が訪れたのは、2015年のことだ。縁あって近畿大学の教員から栽培に関する専門的な知見を得られることになり、それまで暗中模索だった栽培が一気に軌道に乗り始めた。そしてこのつながりから、環境問題や社会貢献を考える学生サークルのメンバーたちが、毎年綿花畑へ足を運び、栽培の手伝いをしてくれるようになったという。これがタビオにおける産学連携の本格的な幕開けとなった。
この取り組みの後、奈良先端科学技術大学院大学、京都光華女子大学(現・京都光華大学)、大阪成蹊大学と、多くの大学の若い力がこの綿花畑をフィールドワークの題材にしている。学生たちは土に触れ、種から綿花を育てる大変さを肌で知るだけでなく、広陵町で1世紀近く続く靴下産業をいかに永続させていくかを、地元の工場見学などを通じて真剣に考えている。現在ではこの活動が評価され、大学によっては参加が正式な授業の「単位」として認められるPBL(課題解決型学習)となっているケースもある。
次世代とつながる、タビオの“狙い”

タビオは無償でこうした産学連携に協力しているが、そこには、未来を見据えた明確な“狙い”もあるようだ。20年ほど前、右肩上がりで絶好調だった同社の売上を支えていたのは、当時の10〜20代の顧客だった。その層が年齢を重ね、現在は30〜50代の熱心なファンとして同社を支えている。それは非常に幸福なことだが、一方で同社は、今日の10代・20代とも、もう一度深くつながりたいと考えている。世代を超えて発展していくには、顧客の世代を超えられる、普遍的な価値のある靴下を作る必要があるからだ。
しかし、宣伝や広告を得意としない同社が、今の若い世代に想いを届けるにはどうすればいいか。その答えのヒントが、この産学連携にあると同社は考えている。学生たちに綿花畑や現場を見てもらい、モノづくりへの情熱を直接伝える。それと同時に、学生たちの瑞々しい感性やアイデア、等身大のヒントを受け取り、これからの商品企画や若年層へのアプローチに活かしているのである。
ついに形になった「TABIO’S COTTON(タビオズコットン)」の未来

2022年に創業者は他界したが、その想いは学生たちとの絆と共にしっかりと受け継がれている。翌2023年には、自社栽培の綿を使い、学生たちの力も借りながら育て上げたブランド「TABIO’S COTTON」が百貨店でデビューを飾った。かつて夢物語だとさえ言われた日本産の綿花を使った最高の一足が、ついに形になったのだ。
正直に言えば、海外とは比べ物にならないほどのコストがかかるこのプロジェクトは、まだ赤字だという。けれど、編み方や糸に使う綿花の混率、企画を工夫することで、ビジネスとして成立させるための進化を毎年重ねている。かなり近い将来、黒字化が達成できると同社は見込んでいるようだ。
最高の靴下を作りたい――。このシンプルな想いを追いかけ、大学や次世代の若者たちと手を携えた結果、それは地域を元気にすること、そして次世代の学びの場を創出することへと繋がった。タビオはこれからも若い力と共に一足の靴下に誠実に向き合い、心地よい未来を足元から作っていく。


