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2026

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    なぜ企業のAI導入の95%が挫折するのか。その壁を打破する「エージェント型企業」への転換とは

    なぜ企業のAI導入の95%が挫折するのか。その壁を打破する「エージェント型企業」への転換とは

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    AIパイロットが「本番」に至らない正体は、「知能」ではなく「土台」

     2026年6月9日から10日にかけて、セールスフォース・ジャパンの年内最大級イベント「Agentforce World Tour Tokyo 2026」が開催された。その初日、基調講演の壇上で突きつけられたのは、AI導入を進める経営層が抱く「手応えのなさ」というシビアな現実であった。

     象徴的だったのは、MIT NANDAの調査「The GenAI Divide, State of AI in Business 2025」が示した「AIパイロットの95%は、本番稼働に至らない」という1つの数字だ。セールスフォース・ジャパン代表取締役会長兼社長の小出伸一氏は、顧客のCIOやCxOとの対話を通じ、「『まだ一歩、本番に踏み出すにはハードルが高い』という声が必ず返ってくる」と、現場の閉塞感を明かしている。

     講演では、この「95%の壁」の正体を、「人との協働」「自律的アクション」「データ分断」「ワークフロー連携」「権限とセキュリティ」という5つの断層に分解して見せた。つまり、AI活用において足りないのは「知能」そのものではなく、その知能が十全に機能するための「土台」であるという指摘だ。

     その解決策として提示されたのが、次世代の企業像 「Agentic Enterprise」 である。人とAIエージェント、そしてそれらが駆動するプラットフォームが有機的に連携する組織のあり方を指すという。

     この概念を具体化した設計図が「Agentic Enterprise Architecture」だ。コンテキストを供給する「Data 360」、顧客記録の「Customer 360」、AIエージェント「Agentforce」、エンゲージメントを担う「Slack」、インサイトを導く「Tableau」を各層に配置し、それらを信頼の基盤「Trust layer」で下支えする構造となっている。

     「データが分断され、ワークフローとも繋がらず、必要な権限もない。それは、新入社員に机もPCも与えないまま成果だけを求めるようなものだ」——。同講演では、このArchitectureこそがAIエージェントにとっての「職場」であるという、極めて本質的なメッセージが投げかけられた。

    記事内画像

    矢継ぎ早の新製品と、すでに「成果」を出す先行事例

     本イベントでは、AIを実務に組み込むための新製品も相次いで発表されている。

    • Salesforce Headless 360
      Salesforceの全機能をAPI・MCP・CLI経由で開放。Salesforceの画面を通さずとも、任意のアプリやインターフェイスから機能を呼び出せる、いわばArchitecture全体の「窓」となる。
    • Agentforce Coworker
      専門特化したAIエージェントを、必要に応じて呼び出せる「AIのチームメイト」として定義。
    • Agentforce Operations
      バックオフィスのボトルネックを解消。既存の業務プロセスをエージェンティックなワークフローへと自動変換する役割を担う。

     
     また、講演で特に注目を集めたのが、かんぽ生命保険によるデモだ。谷垣邦夫・取締役兼代表執行役社長が登壇し、AIと人間の新たな関係性を示した。

     デモでは、地方の父のために深夜、東京の息子がコールセンターへ電話をかけるシーンを再現。「Agentforce Voice」が応対し、複数のAIエージェントが連携してデータの確認から支払い査定までを安全に実行することで、通話だけで給付金手続きが完結する様子が公開された。

     谷垣社長は、「AIとは、その温度を消すものではなく、もっと深める力だと思っています」と語る。創業110周年、2万の郵便局と1,700万人の顧客が築いた信頼を、AIによって「消す」のではなく「深める」。世代を超えた「信頼のバトン」をAIが繋ぐというビジョンに、会場は静かな熱気に包まれた。

     他にも、世界各国の「Agentic」な実装事例が紹介されている。

    • Canada Goose(agentic retailer)
      「Agentforce Service」が電話応対し、本人確認の繰り返しなしに返品処理を実行。複雑な相談はスムーズに人間のスタイリストへ引き継ぎ、現在は定型業務の89%を処理しているという。
    • Engine(agentic travel company)
      AI SDR「Eva」を活用。英語サイト上で日本語での対話を実現し、顧客の問いから「商談の本気度」を見抜いて自動で商談化。商談準備時間を40%削減した。
    • Dell(agentic technology company)
      Agentforce Operationsが業務フローを自動生成。サプライヤーのオンボーディング業務の85%を担うまでに至っている。 記事内画像

    日本市場への「3つの約束」と、勝敗を分ける「つなぎ方」

     日本市場に向けた具体的な支援策も3つ提示された。

    1. 日本自ら本番環境へ
      AI SDR「Piper」の公式サイト運用開始など、自ら実践。Help Agentの日本語自律解決率は68%に達した。
    2. FDE Partner Networkの発足
      成果到達まで伴走する「Forward Deployed Engineers(FDE)」と認定パートナー9社によるネットワークを構築。
    3. Slack上への集約
      6,000以上のMCP対応アプリやエージェントをSlackからワンクリックで呼び出せる環境を整備。

     
     検証フェーズから本番運用へ。経営者と現場が直面する壁を、技術と体制の両面から突破しようとする構えだ。

     基調講演の結びに残されたのは、「あなたのAIエージェントは、顧客を理解しているか」という問いだ。今やAIモデルの性能そのものは、もはや差別化要因ではなくなりつつある。問われているのは、賢さそのものではなく、データや業務をどう「つなぐか」という設計力に他ならない。

     AIを単なる「試験導入」で終わらせるか、ビジネスの「成果」へと昇華させるか。その分岐点に立つ今、企業の真価が問われている。

    ▶記事全文はこちら:
    【Agentforce World Tour Tokyo 2026 基調講演】95%が本番に辿り着けない。AIを「試す」から「成果」に変える分岐点(Salesforce公式ブログ)

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