Diamond Visionary logo

11/4()

2025

SHARE

    ご挨拶 ~執筆にあたって~

    ご挨拶 ~執筆にあたって~

    文化放送元社長の三木明博様よりご紹介をいただき、この度「原石からダイヤへ」に寄稿させていただくことになりました。三木様とは、漫画家の弘兼憲史氏を介して30年来のお付き合いとなり、公私にわたりお世話になっている、私が心から尊敬するビジネスパーソンの一人です。このようなご縁に感謝し、筆を執らせていただきます。

    私は1948年、3人兄弟の次男として品川区に生まれました。父は町工場を経営していましたが、当時は病気を患い、仕事も順調ではなかったため、家庭は経済的に大変厳しい状況でした。家族5人、小さな借家での暮らしが私の原点です。

    地元の公立中学校に進学したものの、勉強への意欲が湧かず、学業成績は振るいませんでした。その頃は大学進学など考えもせず、都立の商業高校へ進みました。しかし、高校1年の3月、英語の授業で担任の先生から伺った示唆に富むお話が、私の人生を大きく変えることになります。先生は世界情勢を交えながら英語の重要性を熱心に説かれ、その言葉に強く心を動かされた私は、遅まきながら大学受験を志すことを決意しました。

    そこから猛勉強を始め、幸運にも希望の大学に合格することができました。当時、国際化が加速する日本で、グローバルなコミュニケーションに必須の英語を習得したいと考え、ESS(英語部)に入部。英語演劇やスピーチに没頭する日々を過ごしました。この大学時代の経験が、後のビジネス人生において計り知れない価値をもたらしてくれたと確信しています。

    大学卒業後は、グローバル・ビジネスに携わりたいという思いから、Kodakの日本総代理店である長瀬産業に入社しました。当時、写真業界を席巻していた国際企業Kodakのビジネスに触れ、購買やマーケティング業務などを通じて多くを学びました。

    この経験から、さらにグローバルビジネスの最前線で挑戦したいという気持ちが強まっていた35歳の時、米国のスポーツ用品大手Spaldingからオファーを受けました。当時は転職が珍しい時代で多少の不安はありましたが、国際的な環境で自分を試す絶好の機会と捉え、転職を決断しました。

    Spaldingではマーケティング・購買部門の次長として入社後、部長、本部長へと責任範囲を広げ、43歳で代表取締役社長に就任しました。社長としての7年間は、売上と利益の向上、そしてブランド価値の向上に注力し、充実した日々を過ごしました。

    49歳の時、米国の大手ヘルスケア企業Johnson & Johnsonから取締役上級副社長として新たなオファーをいただきました。Spaldingへの愛着もありましたが、これも自身の成長のための大きな挑戦と捉え、悩んだ末に再び転職を決意しました。

    そして53歳の時、さらなる転機が訪れます。米国の化粧品大手Revlonの日本法人、Revlon Japanから代表取締役社長としてのオファーでした。この世界的に著名な企業が、日本では過去30年間赤字という状況にあることを知り、その再生を託されたのです。年齢的にも最後の転職になるだろうと考え、この困難な挑戦に身を投じることにしました。

    社長就任の1週間後、私は全国の社員に向けてシンプルなメッセージを伝えました。

    「我々は30年間赤字の会社です。これを改善する方法は2つ。現在の売上のままなら従業員は『半分』に、現在の従業員数のままなら売上を『倍』にしてください。」

    当時、外資系では珍しく労働組合が存在し、改革を進める上で大きな課題となっていましたが、様々な戦略を駆使し、就任から1年半後に平和的な解体を実現。これにより、会社は本格的に前進できるようになりました。

    結果として、Revlon Japanは就任後1年10ヶ月で黒字化を達成。私が64歳で退任するまでの10年半、高い利益率を誇る安定した企業へと生まれ変わらせることができました。在任中は「継続的な利益ある成長」と「素晴らしい職場環境」の確立に全力を注ぎました。

    Kodak、Spalding、Johnson & Johnson、そしてRevlon。米国のグローバル企業で過ごした42年間のビジネス人生は、刺激的で、本当に楽しいものでした。

    これからの時代は、グローバルとローカルを融合させる「グローカリゼーション」が不可欠です。リーダーシップやマネジメントにおいて、グローバル企業から学ぶべきことは今なお多くあります。日本の若者は内向き志向が強いと言われますが、日本の良さを活かしつつ、グローバルの優れた点を取り入れる視点が、これからのビジネスには欠かせません。

    一人当たりのGDPや世界競争力ランキングで、日本の順位は30位以下にとどまっています。経済的な側面では、日本はすでに世界のトップランナーではありません。この状況を打破し、再び成長軌道に乗せるためには、若い世代が「グローカリゼーション」を力強く推進していくしかないのです。優秀な若者たちが日本という枠にとどまらず、世界を舞台に活躍する時代の到来を、私は心から願っています。

    #浅見隆#コダック#スポルディング#ジョンソン・エンド・ジョンソン#レブロン#グローカリゼーション

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    「ゼクシオ」を育て、松山英樹をサポートした男。ダ...

    記事サムネイル

    「ゼクシオ」を育て、松山英樹をサポートした男。ダ...

    記事サムネイル

    「経営は下りのエスカレーターだ」――赤字牧場を再...

    記事サムネイル

    なぜコーナンは「できません」と言わないのか? 新...

    記事サムネイル

    「全権」を条件に、再建の道へ

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI