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2025

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    新たな職場から感じた「カフェ理論」

    新たな職場から感じた「カフェ理論」

    リクルートコスモスを退職後、大前研一事務所へ転職しました。そこに集まっていたのは、現衆議院議員の茂木敏充さん、長島昭久さん、長妻昭さんといった後に政治家の第一線としてご活躍される方々でした。また、後にツイッタージャパンの社長となった近藤正晃ジェームスさんや、マイクロソフトのXboxプロジェクトの責任者であった丸山嘉浩さんといった錚々(そうそう)たる方々の政策集団でした。当然、その後に飲食店を始めたのは僕だけです(笑)。

    この面々の中、私が事務局長をやることになりました。忖度しない性格だったため、しばしぶつかることもありましたが「じゃあ事務局長は君がやりなさい」と言われ、引き受けることにしました。大前さんの周りに集まってくる経営者の方々の提案や考え方を垣間見させていただく日々は非常に貴重な経験となり、飛び交う金言集から多くの学びを得ることができました。

    ある日、大前さんから「君、地元の人たちと会員組織を組成しなさい」というお話をいただき、47都道府県すべてに出張に行くことになりました。これが、非常に面白いものでした。私はもとより博多と東京しか知りません。47都道府県を訪れ、各地の地域性や文化、生活を目の当たりにし、その多様性に感動を覚えました。よく日本の国土は狭いと言われますが、調べ直してみると、沖縄から北海道までの距離というのは、ジブラルタル海峡からリトアニアまでになるのです。つまり、ヨーロッパが全て入る大きさです。そう考えると、日本の国土は広大で世界の縮図なのです。

    また47都道府県を回る中で、それぞれの土地柄や県民性に合わせてビジネスをする重要性を学びました。

    少し話は変わりますが、日本と欧米の会議のスタイルは異なるとよく言われます。欧米はディベート形式ですが、日本は合意を形成していく形だと言われます。私個人としては、日本型の方が性に合っています。なぜなら、ディベートはどちらかが勝って、どちらかが負けるというスタイルですが、負けた方の議論は、本当になくしていいのだろうかと思うのです。「どちらかしか取らないなんてもったいない。すべての良い点を取り入れたらいいのではないか?」と、思ってしまうのです。

    また、会議をするのにも、目的に応じて適した空間というものがあると考えています。 例えば、大企業の応接室などによくある長テーブル。お互いの距離があって、顔を見るにも遠く何の仕事をしているかも分からないような場所での会話は企業防衛的な面もあり緊張関係を構築するものです。

    しかし、本来、建設的に会議をしたい場合は、円卓のほうが向いているのです。お互いを正面から見る緊張関係よりもお互い斜め45度の会話の方が話しやすくなることってありませんか?さらに、食事などしながら会話をすれば、理解し合えることもあります。

    90年代当時、シリコンバレーはベンチャーの町で、私も大前さんの同行でこの地を訪れました。そこでは、カフェで投資家とスタンフォード大学の学生が、対等に議論をしているのです。そして、皆が学生たちに「ブラボー!」と称賛を送ったりしています。そうしたオープンな空間と風景がシリコンバレーのカフェにはありました。

    一方で、日本の90年代にもインキュベーション(投資)の概念が出始めますが、当時の日本のムードは起業家の夢や理念ということよりも、「この数字はどうなのか」「差別化要因は」「スケジュールは」……と、重箱の隅をつつくような質問ばかりで、とても緊張をあおる様な場面に多く出くわしていましたので正直言って肌には合わない、と感じました。

    こうした経験を経て、TPOに応じた空間づくりの大切さを実感するようになりました。 そして、のちの私のカフェ理論につながっていくことになります。

    #楠本修二郎#食産業#foodbusiness#コミュニティ#zeroco#一次産業

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