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2025

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    幼少期――私を目覚めさせた恩師の言葉

    幼少期――私を目覚めさせた恩師の言葉

    私は1948年、東京都品川区で生まれました。父は小学校しか出ていませんでしたが、工場で、いわば一人で零細企業を切り盛りしていました。私が小さい頃、一家はかなり貧しく、父が病気をしていた時期もあります。最終的には父の会社も良くなるのですが、小学校時代は本当に小さな借家に、家族5人で暮らしていました。私は男3人兄弟の次男です。

    品川の貧しい家庭に生まれたこと。これが私の原体験です。父は学歴こそありませんでしたが頭の良い人だったと思います。最終的には会社を大きくした人ですが、私が子供の頃はまだ成功していませんでした。

    そうした生活をしていたからか、私は幼い頃から「絶対、俺は金を儲けるぞ」という意識が、普通の人より強かったかもしれません。単に会社に入って良い仕事をし、そこそこの給料をもらって人生を楽しむ、というレベルではなく、「とにかく金を儲ける」と。サラリーマンでそれを実現しようと思えば、やはり良い条件で良い仕事をしなければなりません。金儲けそのものが目的ではないにせよ、その意識は強く持っていたと思いますし、この年になった今でも、もう一儲けできないか、などと考えることがあります。生まれ育った環境が、私をそうさせたのかもしれません。

    両親の影響も大きいと思います。先ほど申し上げた通り、父は小学校しか出ておらず、戦争も経験し、苦労をしていました。そして、非常に面倒見の良い人でした。今でも覚えているのは、事件を起こして刑務所に入っていた父の知り合いを、出所後、あの狭い借家に1週間ほど泊めていたことです。そのおじさんはいわば犯罪者ではありましたが、私にとても優しく、野球観戦に連れて行ってくれるような良いおじさんでした。そんな彼を当たり前のように受け入れる父の姿を見て、人に対する差別意識のようなものを持たなかった。それも私の根底にある要因の一つかもしれません。

    ただ、小学校時代は、勉強をするような環境ではありませんでしたし、周りにアカデミックな人もいませんでした。そのため、私自身もあまり勉強をせず、地元の品川区立の小・中学校に通いました。

    いわゆる成功者というと、中学校時代くらいから猛勉強して良い高校、良い大学へ、というストーリーが多いかと思いますが、私の場合はまったく違いました。中学校までは、ほとんど勉強する意思がなかったのです。遊ぶ方が得意で、もちろん塾にも行っていません。仲間もあまり優秀なタイプとは付き合っていませんでしたから、勉強は得意ではありませんでした。

    小学校時代は、自分で言うのも変ですが、勉強しなくても結構成績は良かったのです。しかし中学に上がると、やはり勉強しなければ付いていけません。そうなるとモチベーションも上がらず、中学時代は本当に勉強をしませんでした。

    ついには学校の先生に、「浅見、お前は大学なんか行かなくていい」とまで言われました。当時は大学に行かない人の方が多かった時代です。私自身も「もちろん、興味ありません」と答えました。商業高校か工業高校か、どちらがいいかと聞かれ、工業高校は男ばかりで面白くなさそうだという理由で、「商業学校に行かせてください」と。そうして、都立の商業学校に進学しました。

    そのまま行けば、珠算2級や簿記2級といった資格は取っていましたが、こんなものは大した武器にはならないと感じていました。高校のほとんどの生徒が大学へ行く意思もなく、勉強もしていない。私もそのまま、その流れに乗っていくはずでした。

    ところが、高校1年の3学期に、私は極めて衝撃的な授業を受けることになります。

    その英語の先生が、私も含めた出来の悪い生徒たち全員に向かって、こう語ったのです。「今の世界はこういう世界だ。そして日本はこれから国際化が進んでいかなければならない。したがって皆さんは、英語を勉強しなきゃいけないんだ」と。

    ものすごく熱く、私たちに語りかけてくれました。その時、私は何かガーンと衝撃を受けました。授業が終わると、すぐに職員室へ行き、その先生に尋ねました。「先生、今から勉強すれば、大学に行けますか」と。

    先生は「そういう気があるのか」と驚きつつも受け止めてくれました。私は「はい。今日の話を聞いて、そういう気持ちになりました」と答えました。

    それが、私の勉強の始まりでした。

    #浅見隆#コダック#スポルディング#ジョンソン・エンド・ジョンソン#レブロン#グローカリゼーション

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