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2025

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    「2025年問題」とは何か?日本の少子高齢化の真実と、深刻化する“地域格差”の現実

    「2025年問題」とは何か?日本の少子高齢化の真実と、深刻化する“地域格差”の現実

    日本の高齢化率はついに29.3%に達しました。これは、国民の約3人に1人が65歳以上という、世界でも類を見ない超高齢社会を意味しています。
    なぜ日本はここまで急速に高齢化が進み、少子化も深刻化しているのでしょうか?
    “2025年問題”の本質と、地域ごとの現実まで、分かりやすく解説します。

    少子高齢化のはじまり

    戦後日本の人口爆発とその後

    話は1947年、終戦直後の第1次ベビーブームに遡ります。この時期、毎年約270万人もの赤ちゃんが誕生し、「団塊の世代」と呼ばれる人口の山が形成されました。
    やがて彼らが大人になった1971〜74年、第2次ベビーブームが到来。日本の人口は増え続け、2004年には約1億2,800万人でピークを迎えます(※1)。

    少子化の加速──未婚化・晩婚化の波

    1970年代に入り、経済の停滞や価値観の多様化、非婚化・晩婚化が進行。出生率が低下し、ついに1990年には「1.57ショック」と呼ばれる最低出生率を記録します。

    「結婚したいけれど経済的な不安が大きい」「仕事と育児の両立が難しい」

    そんな声が増え、若者の就職氷河期や非正規雇用の増加も追い打ちをかけました。

    なぜ日本の高齢化は“異常なスピード”なのか?

    ■ 世界と比べても「超特急」

    日本の高齢化率は、1970年に7%(高齢化社会の基準)を突破(※2)。
    そこからわずか24年で14%(高齢社会)、さらに21%(超高齢社会)を2010年代に突破しました。これは欧米諸国の2〜5倍のスピードです。
    なぜこれほどまでに急激だったのでしょうか?

    • 医療技術の進歩・平均寿命の延伸(男性81.6歳、女性87.7歳:2020年時点で世界トップクラス)
    • 団塊世代の人口ボリュームが一斉に高齢化
    • 若年層の人口減少(少子化)の加速
       

    こうした複合要因が、“世界一の高齢化社会”を現実のものにしました。

    2025年問題──「団塊世代が75歳を超える」社会の衝撃

    2025年、日本社会に何が起きるのか?

    2025年、団塊の世代(1947〜49年生まれ)が全員75歳以上の「後期高齢者」となります。
    その数、およそ800万人。この年、日本の高齢者は3,500万人(国民の3人に1人)、うち後期高齢者は5人に1人と言われています。
    この大転換が「2025年問題」です。

    【2025年問題のインパクト】

    • 医療・介護費用が急増(社会保障費は約140兆円規模へ)
    • 介護・医療現場の人手不足が深刻化(介護人材は約37.7万人不足予測)
    • 現役世代の負担増大(少ない働き手で多くの高齢者を支える“肩車型社会”に)
    • 事業継承・中小企業の廃業リスク(後継者難で650万人の雇用危機も)

    社会のあらゆる分野に影響が波及

    「年金は大丈夫?」「病院や介護施設は足りるの?」
    「地方の町が消えてしまうのでは?」
    そんな不安が現実味を帯びてきます。

    都道府県別で見る「高齢化」と「少子化」の深刻地帯

    高齢化が最も進む県はどこか?

    【高齢化率ランキング(2024年時点)】
    1位:秋田県 39.5%
    2位:高知県 36.6%
    3位:青森県・徳島県 35.7%
    (全国平均:29.3%)
    秋田県では2.5人に1人が高齢者という状況。しかも、2050年には49.9%(2人に1人)が高齢者になるという衝撃的な予測も出ています。
    特に東北地方(秋田、青森、岩手、山形、福島)は今後、深刻な高齢化と地域衰退に直面する可能性が高いです。

    なぜ地方ほど高齢化が深刻なのか?

    • 若い世代の都市部流出(特に女性)
    • 地元での雇用機会・子育て環境不足
    • 残された地域に高齢者が集中
       

    逆に、東京都(22.7%)など大都市圏は相対的に高齢化率が低くなっていますが、これらも2050年には大きく上昇する見込みです。

    少子化が最も進んでいる県はどこか?

    【2013〜2023年 出生数減少率ランキング(10年間)】
    全国平均:29.4%(10年で3割減)
    ワースト上位:秋田県、岩手県、福島県、青森県、静岡県、山形県、栃木県、新潟県、北海道、高知県、愛媛県(これらの県は10年で35%以上減少という驚異的なスピード)

    東北地方の構造的問題

    東北では「若年女性の東京圏流出」が顕著です。地元の若い女性が進学・就職で都市部に移動→地元での婚姻・出産が減少→ますます出生数が減り、少子化が加速する“負のスパイラル”に陥っています。

    中部・四国も要警戒

    静岡・高知・愛媛など中部・四国地方でも、若年層の都市流出が深刻化。2027年開通予定のリニア中央新幹線で、さらなる東京一極集中が懸念されています。

    少子高齢化が社会にもたらす「7つの現実」

    1. 医療・介護の人手不足
      介護職の有効求人倍率は3.7倍(全職種平均の3倍以上)
      2025年には約38万人分の介護人材が不足すると予測されています。
    2. 社会保障費の急増
      医療・介護・年金の給付負担が増え、現役世代への“重圧”が拡大。
    3. 経済成長の低迷
      労働者減少→生産力低下→消費・投資の鈍化→さらなる景気停滞という悪循環。
    4. 地方経済・自治体の存続危機
      人口減少と高齢化のダブルパンチで、自治体運営やインフラ維持が困難に。
    5. 事業継承と雇用の不安定化
      中小企業の廃業増加、雇用喪失も深刻な課題。
    6. 家族機能の変化と介護離職リスク
      「介護のために仕事を辞める」人が増加必至。企業の人手不足にも直結。
    7. 都市部の高齢化進行
      今後は東京都・大阪府など大都市圏でも高齢化が本格化し、社会のあらゆる場面で“高齢化の波”が押し寄せます。

    解決に向けて、いま国と地域が取り組むこと

    少子化対策:「子どもを産み育てやすい社会」へ

    • 保育サービス・保育園の充実
    • 育児休業・時短勤務など多様な働き方の推進
    • 出産・育児の経済的支援(手当・医療費助成・奨学金など)
    • 不妊治療の保険適用拡大・支援強化
    • 地域ぐるみの子育て支援体制づくり

    高齢化対策:「元気な高齢者が活躍できる社会」へ

    • 高齢者の雇用継続・再就職支援
    • 地域包括ケアシステム(医療・介護・生活支援の一体化)
    • ICTやロボットなど省力化技術の導入
    • 健康寿命の延伸政策(予防医療・フレイル対策・認知症対策)

    働き方改革・担い手増加

    • 非正規雇用から正社員化推進
    • 最低賃金引き上げ
    • 就職氷河期世代の支援
    • 介護離職ゼロを目指す企業と社会の両輪の取り組み

    まとめ──「未来の日本」をどう守るか?

    「このままでは国そのものが立ち行かなくなる」
    それが、少子高齢化と2025年問題の本質です。秋田や青森など“高齢化・少子化ダブルパンチ”の県は、消滅集落の危機にも直面しています。
    一方、都市部も例外ではなく、東京・大阪も今後は急速な高齢化時代に突入します。「自分には関係ない」と思っている方も、

    • 親の介護
    • 企業の人手不足によるサービス低下
    • 年金や医療の将来不安
       

    など、すでにこの問題の“当事者”です。
    いま求められるのは、「一人一人が社会の変化に向き合い、行動を起こすこと」ではないでしょうか。

    • 地域で支え合う仕組みに参加する
    • 多様な働き方・生き方を受け入れる
    • 次世代育成のための投資や環境づくりに協力する
       

    未来の日本を守るのは、私たち一人ひとりの意識と行動にかかっています。

    参考文献

    ※1,※2:https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

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