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2026

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    技術の常識を超えた「無茶」に挑む——ユニクロとの融合がもたらした、ハイテク繊維のブレークスルー

    技術の常識を超えた「無茶」に挑む——ユニクロとの融合がもたらした、ハイテク繊維のブレークスルー

     前回はボーイング社との協業について紹介しましたが、東レが単なる取引関係を超えて社会のライフスタイルそのものを変革したもう一つの象徴が、ファーストリテイリング傘下のユニクロとの戦略的パートナーシップです。服で世界を変えるユニクロと、素材で社会を変える東レ。この両社が結んだ強固な絆は、一過性の共同開発ではなく、互いの技術とビジョンを極限までぶつけ合い、時に従来の繊維技術の常識を打ち破るほどのブレークスルーを生み出し続けてきました。

     両社の本格的な歩みは、1990年代後半に東レがフリース用のポリエステル紡績糸を供給したことに始まります。当時、ユニクロのフリースは日本中で爆発的なヒットを記録していましたが、柳井正社長は事業をさらに大きく拡大していくために、絶対的な信頼をおける素材の開発パートナーを求めておられました。その最中、1985年のプラザ合意以降、日本の多くのメーカーが円高や海外勢の攻勢に押されて繊維事業を次々と縮小・撤退させていたのに対し、当時の東レの前田勝之助会長が日経ビジネスのインタビューで「繊維はグローバルに見れば成長産業である」と力強く発信していたのを目にされたのです。これに深く共感された柳井社長が、直接開発を依頼するために前田会長を訪問されたことが、すべての原点となりました。

     東レはすぐに「GO推進室」というユニクロ専任の特命部署を社内に設立し、共同開発を本格化させました。そして2006年には、5年ごとに計画を見直す第Ⅰ期の「戦略的パートナーシップ」を締結するに至ります。この関係は第Ⅱ期、第Ⅲ期、第Ⅳ期と途切れることなく継続し、今年2026年からはついに第Ⅴ期という新たな節目を迎えています。企業の壁を越え、20年以上にわたる信頼関係の歴史の中で、両社はまるで一つの「ヴァーチャルカンパニー(仮想の統合企業)」とも言える取り組みを推進してきました。

     この取り組みだからこそ誕生した最大の傑作が、今や世界中の人々の冬の必需品となった肌着「ヒートテック」です。ヒートテックが実現している発熱、保温、吸水速乾という多機能性は、実はユニクロからの「無茶な要求」によって実現した、繊維業界の従来の常識を覆すようなものでした。

     ヒートテックは、レーヨン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタンという、全く性質の異なる4つの繊維を組み合わせて作られています。体から蒸発する水蒸気をレーヨンが熱に変換し、超極細のマイクロアクリルが生み出すエアポケットがその熱を閉じ込め、特殊な形状のポリエステルが汗を素早く吸い上げて拡散させることでベタつきを抑える。しかし、これらの異なる繊維を組み合わせることは、染色時の染まり方をはじめとする物性の違いから、当時の技術者からすればまさに「禁じ手」と言っても良い常識外れの領域でした。

     もしこれが、社内の要望から上がってきたテーマであれば、現場の技術陣は「そんなことはできるわけがない、無理だ」と一蹴し、開発の手は途中で止まっていたに違いありません。しかし、「これをどうしても世の中に届けたい」という純粋で強烈な情熱を持つ外部のパートナーから、明確なあるべき姿のゴールを示されたことで、東レの技術者たちのプライドと闘志に火がついたのです。

     トップ同士がガッチリと手を握り、「やるしかない」と退路を断たれた現場は、数え切れないほどの困難に直面しながら、何千回、何万回もの試作と失敗を繰り返しました。現在ではさらに、柔らかさ、消臭機能、静電気防止といった機能が毎年アップデートされ、天然繊維カシミヤとのハイブリッドに至るまで、まさに技術の結晶である「ハイテク繊維」として進化し続けています。

     ヒートテックだけではありません。夏のエアリズムや、ウルトラライトダウン、感動パンツ、パフテックといったユニクロの歴史的なヒット商品の多くに、東レの先端素材技術が深く関わっています。最近は、エアリズムオーバーサイズTやポケッタブルパーカなど、東レが100年の歴史の中で培ってきた、ミクロンを超える「ナノレベル」で物質をコントロールする高度な基盤技術の引き出しを一つずつ開け、執念で、未来を形にしていっています。

     こうした業界の常識を覆す技術のブレークスルーを継続させるためには、経営トップ同士の日常的な意思疎通が極めて重要な意味を持ちます。私も社長に就任して以降、柳井社長とは「グリーンミーティング」をはじめ、頻繁に対話の機会や定期的な交流の場を設け、進むべき未来の戦略について直接擦り合わせを行ってきました。

     トップ同士が常に同じ熱量で信頼関係を維持しているからこそ、現場の担当者たちも余計な社内のしがらみや障壁を気にすることなく、お互いにリスペクトを持って現場での協業に没頭できるのです。パートナーが「世界の人のライフスタイルを変える」という揺るぎないビジョンを持ち、私たちが圧倒的な技術の引き出しからそれを支えるソリューションを提示する。この強固な信頼の連鎖がある限り、私たちのモノづくりが時代に置いていかれることは決してありません。互いの志に共鳴し、不可能な挑戦を可能に変えていくことこそが、戦略的パートナーシップが持つ真の意義なのです。

    #東レ#東レ会長#現場主義#答えはすべて現場にある#企業共創#素材で社会を変える#日覺塾

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