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「察する力」から「伴走する組織」へ——AI時代にギークス・曽根原社長が描く、「焦らずに着実にやり切る」という当たり前と「人生の複利」の哲学
ビジョナリー編集部 2026/06/29
生成AIの台頭により、IT人材市場に大きな地殻変動が起きている。プログラミングの自動化が進む中、人材サービス会社はどのような進化を遂げるべきなのか。まもなく創業20周年を迎えるギークスグループを率いる曽根原稔人社長は、「AI時代だからこそ、人間同士の対面コミュニケーションや『察する力』が重要になる」と語る。ホテル業界で叩き込まれたというホスピタリティの原点から、未経験のゲーム事業(2024年3月に事業譲渡)で学んだ「人に任せる」経営、どんな困難もゲーム感覚で楽しむポジティブな思考法まで。IT人材の供給にとどまらず、事業会社のDX変革に伴走する、 BizDev(事業開発)型の営業組織 へと生まれ変わろうとする同社の未来と、不確実な時代を生き抜く若者へのメッセージを伺った。
ホテル業界で学んだ「察する力」。AI時代にこそ対面コミュニケーションが活きる
IT業界の前はホテル業界にお勤めでしたが、そこで得た学びや原点となる出来事についてお聞かせください。
私が若い頃にホテル業界で叩き込まれたのが、お客様が言葉にしていないニーズを察知し、その先を考えて行動する というホスピタリティでした。かつて帝国ホテルの社長が「100-1=0」と表現したように、ドアマンから客室係まで、誰か一人でもマイナスなサービスをしてしまえば、お客様は二度と来てくれません。
その後、私はIT業界へと移りましたが、20年ほど前には「インターネットが普及すれば営業職はいらなくなる」と言われた時代もありました。しかし一周回って今、社員に伝えているのは、いかに足を運んでお客様と対面し、相手を察して行動するか ということです。AIには人の顔色や表情を見て、「何をしてもらいたいか」を察することはできません。テクノロジーに代替されない領域だからこそ、ビジネスにおいて察する力は本当に重要だと実感しています。
最近の若手層は、昔に比べて上司や先輩に対しても臆せず意見を言ってくれる傾向にあります。毎月社内でサーベイを実施していますが、些細な要望から組織への意見まで、さまざまな声が上がってきます。そうした声を組織の体温計として捉え、フォローが必要な場合は面談を通じて会社の意図を伝えるなど、双方向のコミュニケーションを大切にしています。
自分がわからない事業が教えてくれた「人に任せる」経営
これまで0から1を作ってこられた中で、経営観を形作った出来事はありますか。
スタートアップの立ち上げから数年は、どうしても経営者が自力でどうにかしてしまうフェーズがあります。私自身、なかなか現場から抜け出せず、人に任せられない時期がありました。
しかし、自分一人でできる範囲には限界があります。売上を50億、100億と伸ばしていくためには、自分が打席に立つのではなく、監督として、成果を出す人がやりがいを持って活躍できる組織を作らなければなりません。
大きな転機となったのは、2012年に立ち上げたスマートフォンゲーム事業(2024年3月に事業譲渡)です。私はゲームを全くやらないので、ゲームバランスもプログラミングもわかりません。しかし、これまでのガラケーのトレンドを見ていれば、ビジネスとして絶対に波が来ると確信していました。
この時、自分が全くわからない領域をビジネスにしたことで、必然的に人に任せるしかなくなった のです。最初は不安もありましたが、任された社員たちは期待に応えようと意欲を持って取り組んでくれ、最終的には300人規模の組織へと成長しました。この経験を通して「人に任せることの重要性」を学び、今では自分の得意な事業であっても、しっかりと人に任せられるようになりました。
困難な時ほど楽しむ。継続がもたらす「人生の複利」
リーマンショックなど数々の困難な局面を経験されてきたと思いますが、曽根原社長を支えてきた原動力は何でしょうか。
私は、どんな状況でも楽しもう としか考えていません。大変な時ほど楽しむことが重要です。例えばリーマンショックのような危機が起きても、「この状況が10年も20年も続くわけではない」と考えます。終わると思っていれば、過度に一喜一憂することはありません。
状況が変わるまでの間、いったん立ち止まるか、突き抜けるか、横に避けるか。それをゲーム感覚で判断して動くことを楽しんできました。外的要因は自分の力ではどうにもならないからこそ、楽しむための準備として 「常に肯定的な自分を持っておくこと」 を大切にしています。
こうしたポジティブな考え方は、昔から持っていたわけではありません。ただ、 「10年続ければどんなことでも本物になる」 という持論があり、週2回の筋トレや、年に一度のフルマラソンへの出場などを長く続けてきました。3カ月続けると当たり前になり、365日続けると「やり切った」という圧倒的な自信に繋がります。
私はこれを 「人生を複利で考える」 と表現しています。1日1%の積み重ねはすぐには見えませんが、10年続けた時の複利効果は計り知れません。逆に、やると決めたことをやらなかった日は目減りしていく。だからこそ、継続が大きな自信と原動力になるのです。
プログラマーの代替と新たなニーズ。ギークスが挑む「事業会社の変革への伴走」
IT人材や開発組織の市場において、AIの進化によりどのような変化が起きていると思われますか。
まさに地殻変動が起きています。AIの進歩によって、ただコードを書くプログラマーの需要は減少しつつあります。しかし一方で、AIを理解し活用できるエンジニアや、AIを活用してビジネス要件を定義できるプロジェクトマネージャーのニーズは非常に高まっています 。技術のトレンドが変わっただけで、私たちが提供すべき価値の本質は変わりません。
これまで日本のIT人材は、大手のシステム開発会社に集約されていました。私たちが今後変えていこうとしているのは、クライアントの幅です。ITのノウハウを持たない一般の事業会社は、自社でDXやAI活用を進めたくても、どうすればよいかわからずシステム会社に丸投げしてきました。
これからは、そうした事業会社の中に直接入り込み、伴走していくこと が求められます。特定のプロダクトを持たないニュートラルな立場で、お客様の味方となり、最適なツールを一緒に選定し、社内のデジタル教育まで支援する。IT人材を供給するだけのサービスから一歩踏み出し、企業の変革を共に実現するBizDev(事業開発)型の営業組織へと組織をアップデートしていきたいと考えています。
情報過多の時代に焦る若者たちへ。「目の前のことを着実に行う」ことの大切さ
最後に、これから頑張ろうとしている若手社会人や起業家に向けてメッセージをお願いします。
今の若い世代はデジタルネイティブであり、SNSなどを通じて膨大な情報に触れています。情報量が多いこと自体は悪いことではありません。しかし、他人の成功体験や煌(きら)びやかな情報ばかりを見て、「同級生はこんなに活躍しているのに、自分は何をやっているんだ」と勝手に焦ってしまっている人が多い ように感じます。
情報に振り回されて一喜一憂し、周りと比較して自信を失ってしまうのは非常にもったいないことです。社会に出ても、誰もが最初から大谷翔平選手のように活躍できるわけではありません。1年目で成果を出す人もいれば、5年目、10年目で花開く人もいます。長い人生の中で、焦る必要は全くないのです。
大切なのは、地に足をつけて、焦らずに今、目の前にあるやるべきことを一つずつ着実に行っていくこと です。自分が選んだ道を正解にするために、日々積み上げていく。そうやって少し心に余裕を持ちながら、自分自身の人生の複利を信じて進んでいってほしいと思います。


