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2026

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    ピッチ外にこそ、勝負の神は宿る。鹿島学園 選手寮で育まれる「24時間の人間力」

    ピッチ外にこそ、勝負の神は宿る。鹿島学園 選手寮で育まれる「24時間の人間力」

    「人間力が、プレーの質を凌駕する」

    第104回全国高等学校サッカー選手権大会において、大躍進した鹿島学園サッカー部。その強さの源泉を探ろうとするとき、多くの人はピッチ上の戦術やフィジカルに目を向けるだろう。だが、彼らの「勝利」が設計されている場所は、実は芝生の上だけではない。

    茨城県鹿嶋市にあるサッカー部専用寮。 ここには、鈴木雅人監督が25年かけて築き上げた、勝利のための「24時間のカリキュラム」が存在する。 スローガンではない。彼らの日常そのものが、勝利への伏線なのだ。

    午前6時30分、強制なき「始動」

    鹿島学園の朝は早い。だが、そこには指導者の怒号も、強制的な笛の音もない。午前6時30分。静寂に包まれた寮の廊下やグラウンドに、一つ、また一つとボールを蹴る音が響き始める。 誰に言われるでもなく、選手たちが自らの意志で動き出すのだ。

    「朝の30分、誰も見ていない。だからこそ、ここで差がつく」(7 MF 伊藤蒼空 3年)

    眠い目をこすりながらやらされる練習に意味はない。自らを律し、孤独な時間に「当たり前」を積み重ねられる者だけが、大一番のプレッシャーに打ち勝つことができる。彼らが鍛えているのは技術ではない。「自立心」だ。

    「なぜ?」が飛び交う、思考の格闘技

    午後4時からのチーム練習。そこは単なる運動の場ではなく、高度な「思考の格闘技」の場と化す。 鈴木監督は、安易に答えを教えない。代わりに、鋭い「問い」を投げかける。

    「今、なぜそこにいた?」
    「他に選択肢はなかったか?」

    ミスをしても怒られることはない。だが、そのプレーを選んだ「根拠」がなければ、容赦なく追及される。

    「ミスをしても怒られません。でも、理由は必ず聞かれます」(4 DF 齊藤空人 3年)

    言語化できないプレーは、再現性がない。

    「“止めて蹴る”をどれだけ丁寧にできるか。そこに思考が宿るかで、試合は変わります」(6 MF 木下永愛 3年)。

    ピッチ上で求められるのは、瞬時の判断力と、それを支える論理的思考力だ。鹿島学園の選手たちが土壇場で慌てないのは、日々の練習で脳に汗をかき続けているからに他ならない。

    階級社会を否定する「機能美」

    日本の部活動にありがちな、強制的な上下関係。鹿島学園の寮生活とピッチには、それが存在しない。あるのは「チームを勝たせる」という目的のための、フラットな機能美だ。 ミーティングでは、上級生が下級生の意見に耳を傾け、必要であれば1年生が3年生に指示を出す。

    「ミーティングで1年生が意見を出すことも普通にあります」(11 FW 渡部隼翔 3年)。

    誰が言ったか(権威)ではなく、何を言ったか(内容)。その合理的な実力主義が、チームの風通しを良くし、組織としての修正能力を高めている。

    サッカーという「逃げ道」を作らない

    練習を終えた夜、彼らは再び机に向かう。「サッカーさえしていれば勉強は疎かにしていい」。そんな甘えは、この寮では許されない。週1回の学習確認テスト、補習制度。学業をおろそかにする者は、ピッチに立つ資格を失う。

    「進路のことも、本気で一緒に考えてくれます」(6 MF 木下永愛 3年)

    サッカー選手としての寿命は短い。だが、人生は続く。「サッカー部は社会へ出るための準備室」という鈴木監督の哲学のもと、彼らはペンを握り、自分のキャリアと向き合う。文武両道ではなく、文武「融合」。知性がプレーを助け、競技での集中力が学業を支える。

    勝利の先にある「人生の土台」

    試合終了後、彼らは必ず整列し、観客と審判に深々と頭を下げる。勝っても負けても、その姿勢は揺るがない。 日本代表のエース、上田綺世はかつてこう語った。

    「鹿島学園で過ごした3年間が、僕の人生の土台です」

    鹿島学園で育まれているのは、単なるボール扱いのうまい選手ではない。 自ら起き、自ら食べ、自ら考え、仲間と議論し、机に向かう。 そうした「生活の質」の向上が、やがてピッチ上での「人間力」となり、劇的な勝利を引き寄せる。

    鹿島学園が証明したのは、一つの真実だ。『サッカーを強くするのは、サッカー以外の時間である。』彼らの日常は、今日も静かに、未来の勝利を紡ぎ続けている。

    画像引用元:鹿島学園HP

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