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    なぜBOSSは30年以上“働く人の相棒”であり続けられるのか? サントリーが追求する、働く人の心に刺さるユーモアと距離感

    なぜBOSSは30年以上“働く人の相棒”であり続けられるのか? サントリーが追求する、働く人の心に刺さるユーモアと距離感

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    「働く人の相棒」サントリーBOSSがヒットし続ける納得の理由。データを超えた“遊び心”が生む情緒的価値とは

     サントリーのラインアップにおいて、「サントリー天然水」に次ぐナンバー2の出荷数量を誇る巨大ブランドが「BOSS」だ。1992年の発売以来、缶コーヒー市場を牽引してきたこのブランドは、激変する現代のワークスタイルの中でいかにしてその地位を築き、更新し続けてきたのだろうか。

     「働く人の相棒」という不変のコンセプトを掲げながらも、コミュニケーションでは「宇宙人」の視点を借り、時にはあえてデータに逆らうような遊び心を忘れない。サントリー食品インターナショナル株式会社でBOSSブランドを担当する野々村氏への取材から、ブランドの核心にある「情緒的価値」と「現場主義」のマーケティング戦略が見えてきた。

    「数字」と「精神」の両面で、会社を支える中核ブランド

     サントリーには数多くの飲料ブランドがあるが、「BOSS」は出荷数量において「サントリー天然水」に次ぐ国内第2位 という、極めて重要なポジションにある。しかし、ブランドを語る上で数字以上に重要なのが、発売当時から一貫して掲げている 「働く人の相棒」 というコンセプトだという。

     「会社にとって数字の面で大事なのはもちろん、精神的な支柱としても非常に大きな存在である」と野々村氏は語る。時代とともに働き方が変わり、リモートワークなどの多様化が進む中で、BOSSはその時々の「働く人」の姿に寄り添い続けてきた。

     近年では、コーヒーにとどまらない商品を展開しているが、これも戦略的な転換点であったようだ。「働く人すべてが、常にコーヒーだけで頑張りたいわけではない。紅茶や果汁、炭酸といった選択肢も含め、働く人の気持ちの発散や元気の付け方は多様であるべきだ と考え、手段を柔軟に広げてきた」という背景があるという。

    「宇宙人ジョーンズ」がもたらす、客観的な「気づき」の視点

     BOSSを象徴するのが、長年続くトミー・リー・ジョーンズ氏出演の「宇宙人ジョーンズ」のCMシリーズだ。この広告戦略には、BOSS特有のこだわりが凝縮されている。

     驚くべきことに、野々村氏によれば、CMの中で中身の味やスペックについてはほとんど言及していない という。「BOSSは『味』や『デザイン』も大事にしているが、コミュニケーションにおいては 『情緒』に寄ったブランド である。世の中がどう見えているか、何を気にしているかをハッと気づかせる提案の媒体として、CMを捉えている」からだ。

     生身の人間が正論を語ると、どうしても「わかっていない」という反発を招きかねない。そこで「宇宙人」というフィルターを通すことで、「人間ってこうだよね」という客観的な視点を提示し、働く人々へユーモアを交えた気づきを提供しているのだ。社内でも「これ、宇宙人の目線で見たらどう思うだろうね」という議論が日常的に行われているという。

    組織の壁を超えた「BOSSチーム」の現場感

     この一貫した情緒的なメッセージを支えているのが、サントリー特有の横断的なチーム体制だ。

     ブランド担当、広報、宣伝、中味開発、デザインといった各部署のスペシャリストが、横断的にBOSSのことを考える 。これがブランドの強みになっている。「ブランド担当はどうしても商品のことばかり考えがちだが、広報の目線が入ることで『世の中の人はそう思わないかもしれない』とブレーキをかけられる。独りよがりにならない、本当に働く人に寄り添える目 を確かめ合っている」と担当者は明かす。

     マーケティングの意思決定においても、データ至上主義には陥らない。「データがこう言っているから」という理由だけで決めるのではなく、「こっちの方が面白そう、楽しそう」という直感やワクワク感を最後に大切にするのがBOSSチームの流儀なのだという。

    「甘くないカフェラテ」ではなく、あえて「イタリアーノ」と呼ぶ理由

     その象徴的な事例が「甘くないイタリアーノ」のネーミングだ。

     通常のマーケティングデータに基づけば、シンプルに「甘くないカフェラテ」とするのが最も親切で伝わりやすいはずである。しかし、チームはあえて「イタリアーノ」という言葉を選んだ。 『イタリアーノって何だよ』 と思われることも含めて、チャーミングさとしてやっていこうという判断だ。お客様に真摯なのは『カフェラテ』だが、その隙のあるユーモアこそがBOSSらしさであると考えているのだ。

     この「斜めからの視点」こそが、多くのファンを引きつける魅力となっているのだろう。

    「前を走るのではなく、後ろから背中を押す」存在でありたい

     これからのBOSSが目指す姿について、担当者はこう結んでいる。

     「寝る間を惜しんでがむしゃらに働くことだけが唯一の正解ではなくなった現代でも、『働く』という行為自体はきっとなくならない。私たちの役割は、前を走って先導することではなく、後ろから少し支えること 。どの商品、どの容器であっても、その姿勢は変わらない」

     正面から真面目なことを言うのではなく、ユーモアを持って、少し後ろから寄り添う。言葉の微細なニュアンスにまでこだわり抜くその姿勢が、今日もどこかで働く誰かの「相棒」として、私たちの生活に溶け込んでいる。

    #サントリー#BOSS#コーヒー#マーケティング#ブランディング#広告戦略#商品開発#働く人の相棒#クラフトボス#ヒットの裏側

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