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2025

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    「ご縁」が導く常識破りの一手。創業63年企業の挑戦を支える「人助け」の哲学

    「ご縁」が導く常識破りの一手。創業63年企業の挑戦を支える「人助け」の哲学

    60年以上にわたり、加盟店の販促支援やポイントカード事業を手掛けてきたブルーチップ株式会社。近年では移動スーパー「とくし丸」の代理店事業や、コストコで大ヒット中の乾燥野菜、さらには海外事業まで、その領域を急速に拡大している。一見、多角的に見える事業展開の根底には、一体どのような哲学があるのか。代表取締役社長宮本洋一氏に、その原動力と思想、そして未来へのビジョンを伺った。

    移動スーパー事業の始まりは「世の中のためになる仕事」。「とくし丸」との出会い

    さまざまな形での「顧客創造のお手伝い」として、近年では、移動スーパー「とくし丸」事業も始められました。新規事業を次々と展開される背景には、どんなきっかけや想いがあるのでしょうか。

    私が移動スーパー「とくし丸」と出会ったのは、事業がスタートしてまだ2、3年の頃でした。徳島県の「とくし」と、社会貢献に熱心な人を指す「篤志(とくし)」をかけたその名前に、発案者の想いを感じました。

    きっかけは、ある業界団体の会合で親しくしていた経営者の方とのご縁でした。その方は、「とくし丸」を最初に導入し、「これからの日本には、世の中のためになる仕事が必要だ」と熱心に語ってくださいました。

    その後、「ブルーチップは全国に顧客がいるのだから、一緒にやってみてはどうか」と、とくし丸の創業者である住友達也氏をご紹介いただいたのです。ちょうどその頃、東京で当社の加盟店の社長たち4〜5名が集まる機会がありました。私はその場に、住友氏にもご同行いただき、皆で一緒に食事をしながら意見交換をしようとお誘いしたのです。

    席では、住友氏が語る「とくし丸」の構想や、これからの時代に求められるスーパーの在り方について話が盛り上がりました。加盟店の皆さんも共感し、私自身もこれは必要な取り組みだと強く感じたことで、当社が「とくし丸」事業に参画する道が一気に開けていきました。 その時、私は住友氏にこう申し上げました。 「ビジネスとして考えるよりも、我々の加盟店のサポートをする一つの“お助け隊”として、これをスタートしたい」と。

    人口減少や高齢化の進行により、店舗に足を運べないお客様が確実に増えていく——そんな中で、地方のスーパーを支援する事業として本気で取り組むべきだと感じたのです。

    導入当初は多くの課題があり、決して平坦な道ではありませんでしたが、加盟店の皆さんやお客様に大変喜んでいただき、「本当に始めてよかった」と今では心から思っています。

    儲けが本来の目的ではない。だからこそ生まれる「価値」

    「とくし丸」事業展開の中で困難にぶつかったエピソードなどがあれば教えてください。

    移動スーパー事業を始めてから、軌道に乗せるまでにはさまざまな課題がありました。新しい仕組みであるがゆえに、現場の理解を得ることや、想いを共有してもらうことに時間がかかる場面も多く、決して平坦な道ではなかったのです。

    それでも私たちは一貫して、「原点を忘れないこと」を大切にしてきました。

    私たちは、もともと儲けようとしてこの事業を始めたわけではありません。 人口減少や高齢化の中で買い物が困難になっている方々を支えたい。地方のスーパーの力になりたい。そうした想いが出発点でしたし、今もその姿勢に変わりはありません。

    そもそも当社が60年以上も事業を続けてこられたのは、加盟店の皆さまの困りごとに対し、「痒(かゆ)い所に手が届く」ようなお助けを地道に続けてきたからです。

    一見すると非効率に思われるような取り組みも、「必要としてくれる人がいるならやろう」という気持ちで、真摯に向き合ってきました。そうした積み重ねこそが、我われが大切にしてきた価値であり、これからも守り続けていきたい原点だと考えています。

    「ご縁」が道を拓く。コストコでの大ヒット、そして海外への挑戦

    60年以上の実績の中で、貴社ならではの成功事例を教えてください。

    私のビジネスの根幹には、常に「ご縁」があります。今、コストコで大変ご好評をいただいている乾燥野菜も、大学の交流会で生まれたご縁から始まったものです。 「これから気候変動で食料が足りなくなる。冷凍食品と乾燥食品が必ず注目される」と、大手食品メーカーで副社長を務められた大学の先輩が、私に事業を持ちかけてくれました。「いいと思えばその場で返事をする」 のが私の信条です。「是非やらせてください」と即答し、商品化まで約1年。最初はなかなか売れずに苦労しましたが、ある展示会でコストコのバイヤーさんの目に留まりました。 「これは絶対に売れるから、コストコ用の商品を作ってほしい」。そう言われて開発した商品が、今では月に5万個も売れる大ヒット商品になりました。メーカーでも問屋でもない当社が採用されたことに、業界の方々からは「どうやったんですか? 何か寄付でもしたのですか?」などと訊かれ驚かれますが、これも全てはご縁です。 ベトナムでの事業も同様です。ドラえもんのライセンス事業も、現地で偶然出会った日本人社長とのご縁ですし、ハマグリの輸入販売も、タイでの展示会を見て回っていた際に偶然立ち寄ったブースで、オランダ企業の方と意気投合したことがきっかけでした。「日本で売ったことがない」と言うので、「じゃあ、うちに権利をください」と。そんな冗談のような会話から、ビジネスは始まっていくのです。

    常識を疑い、視点を変える。ゼロからではなく「今あるもの」で価値を創る

    私は「ゼロから何か全く新しいものを生み出すこと」にはあまりこだわりません。 それよりも、「今すでにあるものを、価値ある商品やサービスとして再構築する」ことに重きを置いています。 たとえば── デザインを変える、売場を変える、提供の仕方を変える。 たったそれだけで、見慣れたものがまったく新しい価値を持ち始めるのです。 こうした発想の転換こそが、新しい商品やサービスを生み出す現実的な方法だと考えています。

    例えば、当社が展開する水の自動販売機事業もその一例です。スーパーでよく見かける無料の給水機は、実は店舗側の費用負担が大きく、やめたいと思っている経営者が多いことを知りました。そこで私たちは、あえて「5リットル100円」という有料の機械を提案したのです。 当然、現場からは「無料から有料なんてお客様がなんというか」と、抵抗がありました。そこで私は「だったら、今の無料の機械の隣にうちの機械を置かせてほしい」と頼み込みました。並べて、お客様に選んでもらおうと。結果は、8割のお客様が私たちの有料の水を選んでくださいました。もちろん水の品質にも配慮しましたが、何より大きかったのは、提供の仕方を変えたこと、金額を変えたのではなく、価値の伝わり方を変えたのです。お客様は100円という価格に「安心できる水」という価値を見出し、納得して選んでくださいました。店舗側も、維持費がかかるどころか売上の一部が入るようになる。視点を少し変えるだけで、誰もが喜ぶ新しいビジネスモデルが生まれたのです。

    「いつでも戻ってこい」。人が育ち、会社が生き残るための人間力経営

    社員の皆さんにはどんな想いを持って働いてほしいと考えていますか。

    私が社長になってから、会社を縮小均衡させるのではなく、新しいことに挑戦し続ける道を選びました。それは、社員の生活を守るためでもあります。 私は社員に「仕事をするなら楽しくやろう」とよく言います。もちろん楽しいことばかりではありませんが、その楽しい部分を広げる努力をしたい。この会社にいて、少しでも幸せを感じられる会社にしたい のです。 だから、当社は一度辞めた社員が戻ってくることも、拒みません。 「出戻り社員がこれほど多い企業はない」 と自負しています。他の経営者さんからは「よく辞めた社員を迎え入れますね」と言われることもありますが、私は裏切られたとかそういうことではなく、他の会社を見て、やっぱりうちが良いと分かってくれたのなら、それは素晴らしい「勉強」だと考えています。役員にも、出戻りが2人います。人を信じ、繋がりを大切にする。それが当社の強さの源泉だと信じています。

    今後のビジョンについて

    今後も「顧客創造力ナンバーワンの会社」を目指す中で、未来のブルーチップをどのような企業に育てていきたいと思い描いていますか。

    私たちは、これまで63年間にわたってお客様に認めていただいた「価値」を、今後さらにどう高めていくかを真剣に追求しています。 その一つの手段が、AIの活用や、私たちが持たない技術を持つ企業との積極的な連携です。

    私たちは、単に企業規模を拡大することを目的にはしていません。 たとえ小さな組織でも、お客様にご納得いただける価格で、誠実なサービスを提供し、その結果として、私たちも持続可能な利益を得る。

    この「小さくても強く、信頼される企業」こそが、これからの時代にふさわしい企業のあり方だと考えています。

    #ブルーチップ#移動スーパー#とくし丸#海外挑戦

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