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2025

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    ENEOSがEV充電事業に参入。新ブランドに込めた「つなげる」戦略の裏側

    ENEOSがEV充電事業に参入。新ブランドに込めた「つなげる」戦略の裏側

    なぜENEOSがEV充電を? “今日の当たり前”を支えてきた巨大インフラ企業が描く、“明日の当たり前”

    日本中のどこへ行っても、安心して車を走らせることができる。この「今日の当たり前」を長年支えてきたのがENEOSだ。同社は、その重要な使命は自動車を動かす動力源がガソリンから電気に変わっても揺らぐことはない、という。

    自動車のエネルギー供給を担い続けてきた同社がEV充電事業を開始したのは2022年。奇しくもこの年は、新車のEV販売台数が大きく伸長し、一般的に「EV普及元年」と呼ばれている。まさに「明日の当たり前」をリードするべく、ENEOSは新たな一歩を踏み出したのだ。

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    EV充電ブランド始動、ロゴに込めた想い

    しかし、ガソリン給油とEV充電は事業形態が大きく異なる、と担当者は語る。事業開始にあたっては、サービスのコンセプトからゼロベースで考える必要があったという。

    まず検討したのは、サービスの主な利用者だ。EVが普及する過程では、これまでガソリン車に乗っていたユーザーの乗り換えが中心となる。事業開始前の顧客アンケートでは、EVへの乗り換えを検討する際に「走行可能距離が短い」「充電できる場所が少ない」「どこで充電をしていいか分からない」といった不安の声が多く寄せられたそうだ。この結果から、ガソリンスタンド(ENEOSサービスステーション)と同じように、①充電ネットワークがしっかり整備されていること(認知度の向上)と、②いつでも安心して充電できること(安心感の提供)、が成功の鍵を握ると分析した。

    一方で、両者には明確な違いもある。危険物であるガソリンと異なり、EV充電器は比較的規制が少なく、電源さえあればどこにでも設置できる。しかし、ガソリン給油に比べて充電に時間がかかるという課題は無視できない。また、自宅で充電するユーザーも多いため、外出先での充電サービスには新たな付加価値が求められる。「いかに他のサービスとつながるか」「新しい価値を生み出すことができるか」が重視されたという。

    さらに、再生可能エネルギーを利用することで「カーボンニュートラル社会の実現」に貢献できるという視点も、事業の根幹を成す重要な想いであった。

    これらの考察から生まれたのが、「誰もが安心して充電できるサービスを提供し、電気とモビリティを“つなげ”、さまざまなサービスと“つなげ”、持続可能な未来へと“つなげる”ことで、社会を活性化する」という壮大なコンセプトだ。これまでの燃料供給事業とは全く違うアプローチが必要だと感じたENEOSは、この想いをユーザーに広く、そして早く届けるために、新しい事業ブランドを立ち上げることを決断した。

    プラグと笑顔で示す「つながり」

    ブランド名を検討する上で、何よりも大切にしたのは「認知度・安心感」だったという。同社が長年にわたり築いてきた「ENEOS」ブランドを冠することは、ごく自然な流れだった。そこに、EV充電サービスであることが一目でわかる「Charge」と、人と社会、サービス同士を「つなぐ」という想いを込めた「Plus」を加え、事業ブランド名称は「ENEOS Charge Plus」に決定した。

    続いて制作されたブランドロゴにも、その想いは色濃く反映されている。様々なサービスとの連携を見据え、あえて個性が強すぎないシンプルなデザインを採用。基本カラーには、安心感・つながり・自然をイメージさせる緑を選び、従来のENEOSのブランドイメージから一新させた。さらに遊び心も加えられている。「Plus」の「u」の文字を、電源プラグと利用者の笑顔に見立てたデザインを取り入れたのだ。「EV充電サービスを通じて社会を活性化していきたい」というメッセージが、この小さな工夫に込められている。

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    未来につながっていく“Plus”

    その名に冠した“Plus”は、すでに様々な形で具現化されている。「ENEOSでんき」と組み合わせることで、「家でも外でもENEOSで充電できる」という新たな価値を提供。洗車やタイヤ空気充填といった、既存のサービスステーションのサービスともつながり始めている。

    また、法人向け充電サービスや商用充電ステーションの展開により、法人顧客とのつながりも拡大。「誰もが安心してENEOSで充電できるサービス」の実現に向けて、着実に歩みを進めている。将来的には、自社で発電している再生可能エネルギーを活用した電力供給も進めていく予定だという。

    パートナー企業との連携にも余念がない。提携先の商業施設への大規模展開などを通じて充電ネットワークの拡大を図り、サービスの利便性を高めながら、来たるEV時代に向けた準備を着々と進めているのだ。

    記事内画像 ENEOS Charge Plus 公式WEBサイト

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