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「SaaSはもう古い?」Salesforceが示した、AIエージェント時代の論理的な結論
ビジョナリー編集部 2026/09/30
「SaaS is Dead」の正体。終わるのは「ソフトウェアを操作する行為」
世界最大級のAIイベント「Dreamforce 2026」の基調講演において、Salesforceの会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏は、開口一番、直近2か月間でヨーロッパの主要企業200社以上のCEOと対話してきた経験を語った。
多くのビジネスパーソンは、プライベートではChatGPTやClaudeを活用しながらも、職場では全社的な変革を実感できないという「中間状態」に陥っているという。ベニオフ氏によれば、その理由は明快だ。モデルは確率論的に動き「もっともらしい」答えを返すが、企業のCRMやワークフローは決定論的にできている からである。
つまり、現在多くの企業で導入されているCRMやワークフローは、基本的に同じ入力に対して同じ結果を返すシステムである、ということだ。同氏は「この2つを橋渡ししない限り、AIは中核業務を任せられる存在にはなれない」と指摘する。
▲Salesforceの会長兼CEO、マーク・ベニオフ氏
この文脈において、今回の基調講演は業界で飛び交う「SaaS is Dead」という議論に対し、明確な回答を示した。これはSaaSという仕組みそのものが不要になるという意味ではない。「人がログインして画面を操作し、メニューをたどる」というモデルこそが終わるのだ という読み替えである。
共同創業者のパーカー・ハリス氏は半年前のイベントで「そもそもSalesforceにログインする必要があるのか」という問いを投げかけていた。UIそのものを自社製品の強みとする企業にとって、この言葉は重い。ベニオフ氏は、その言葉を数字で裏付けた。
第2四半期決算では通期売上高見通し464億ドル、フリーキャッシュフロー10億ドル、cRPO成長14%を達成。顧客解約率は過去最低、契約期間は過去最長を記録している。つまり、「SaaSが終わる」論の裏で、既存のCRMビジネスは至って健全であることを、あえて数字で示した構成といえる。
27年前の決断から生まれた「AIforce」と、CRM推論モデル「Koa」
こうした現状認識の上で発表されたのが、新プラットフォーム「AIforce」だ。これは、データ、アプリケーション&セマンティクス、エージェント、インターフェースという4つのレイヤーのうち、これまで手薄だったインターフェースを「動的で組み合わせ可能なもの」へと変革する試みである。
興味深いのは、この発想がSalesforceにとって決して突飛なものではないという点だ。27年前にメタデータ駆動でプラットフォームを構築するという決断を下した時、すでにこの瞬間の土台は築かれていた。オブジェクト、ルール、権限、ビジネスロジックがすべてメタデータとして格納されているからこそ、それをブラウザ、モバイル、そして今回のAIインターフェース向けに再構成が可能となる。
具体的な実装は3つある。Claude Cowork上の「Claudeforce」、Slack上の「Slackforce」、Lightning上の「Agentforce Coworker」だ。いずれも、パイプラインを尋ねてダッシュボードのリンクを渡されるのではなく、AIから直接答えが返ってくる世界を体現している。さらに、CRM推論モデル「Koa」の発表も注目を集めた。
NVIDIAのNemotronを基盤とし、合成データのみで追加学習された同モデルは、顧客データを1バイトも使用しないゼロデータリテンションを徹底している。長時間稼働し、複雑な業務目標を追うエージェントを支える設計は、まさに 「確率論的なインテリジェンスと決定論的な基盤を結ぶ」 という基調講演のテーマを体現している。
アモデイとフアンが示した「進歩のペース」と、経営者への問い
基調講演には業界のキーパーソンが2人登壇した。1人はAnthropicのダリオ・アモデイCEOだ。 同氏は「この10年で最も驚いたこと」として、モデルの性能向上そのものよりも、それが企業へ浸透していくスピードを挙げた。「MCP、Cowork、Claudeのスキルは、人々が使い始めたばかりの技術だ。しかし、経済的な価値が高いため、信じられないほどの速さで採用が進んでいる」。技術進化は予測できても、社会への浸透速度は予想以上であったという素直な告白は、会場でも印象的であった。
▲基調講演ではパートナーのAnthropic CEO、ダリオ・アモデイ氏も登壇した。
もう1人はNVIDIAのジェンスン・フアン社長兼CEOである。 フアン氏は「すべての会社、すべての企業、すべての国がAI企業になる」と言い切る。安全性の議論についても、「エンジニアリングで解決すべき課題であり、イノベーションの速さと二者択一で考えること自体が間違っている」と一蹴した。そして「取り残されないでほしい」と訴えかける。「今日試して80%しか満足できなくても、2週間後にはもっと良くなっている。だから見限らずに触り続けてほしい」。いま検証段階にある経営者たちへの力強いエールといえる。
記事本編では、基調講演が示した4つのメッセージや、マーケティング視点から見たストーリーテリングの巧みさまで深く掘り下げている。 「AIは賢いけれど、自分の会社のことは知らない」という違和感を、どのように解消すべきか。AIエージェント時代の経営に向き合うすべてのリーダーにとって、必読の内容だ。
▶続きはこちら: 【Dreamforce 2026 基調講演】最高のAIと最高のCRMが出会う時(Salesforce公式ブログ)


